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OEMで必要な“量産前の工程FMEA”の基本

目次
はじめに~なぜOEMで工程FMEAが重要なのか
OEMにおいて、「量産前の工程FMEA」(プロセスFMEA)は製品開発・生産体制上きわめて本質的な役割を果たします。
FMEA(Failure Mode and Effect Analysis:故障モード影響解析)は、もともと品質管理やリスクマネジメントの分野で発展した手法ですが、OEMの現場においては、設計だけでなく生産プロセスそのものの信頼性を担保するための重要な工程です。
多品種少量化、短納期対応、グローバル調達…。日進月歩で進化する市場の中で、顧客(バイヤー)から真に信頼されるOEMサプライヤーになるために、工程FMEAをどこまで深く・現実的に活用できているかが競争力を分けます。
本記事では、昭和的な「やってるフリ」や形式主義を脱する視点から、現場目線に立脚した工程FMEAの基本を解説します。未来の製造業を拓くバイヤー・サプライヤーの皆様にとって、新たな実践知となることを目指します。
工程FMEAとは何か?~設計FMEAとの違い
基本概念~失敗を事前に予防・制御するための手法
工程FMEAとは、「製造工程(プロセス)」で想定されるあらゆる失敗モードを洗い出し、その影響・発生頻度・制御可能性を評価して、リスクの高い失敗要因に対策を講じていく体系的手法です。
設計FMEAが「設計の抜け・設計段階での潜在不良」にフォーカスしているのに対し、工程FMEAは「製造現場で実際に生じうるトラブル(ヒューマンエラー・設備異常・原材料ばらつき等)」に重きを置きます。
OEMにおける量産前では、「設計上の想定は良かったのに、実際の現場で不良多発」「サプライヤーの工程異常で想定外の手直しが必要になった」といった事案が後を絶ちません。
それを未然に防ぐために工程FMEAを徹底することが、最終的にはOEMバイヤーから選ばれるサプライヤーになるための必須条件です。
日本の現場ではなぜか形骸化するFMEA
FMEAはもともと自動車、航空宇宙など欧米系のトップレベル企業で普及しました。しかし、なぜか日本の多くの製造現場では「形式的なリスト作成」や「A4用紙の埋め合わせ作業」に陥りやすいのが現実です。
「工程FMEAをどこまで活用できたか」がOEMバイヤーとの信頼関係構築、生産現場への実効性・標準化の深度を決める大きなポイントであり、ここに昭和的な“見せかけ主義”から脱却する思考と実践が不可欠です。
OEM調達での工程FMEAのベストプラクティス
1. 部門横断チームの結成(営業・設計・生産管理・品質管理の連携)
工程FMEAは、生産技術・品質保証部門のみの業務だと考えられがちですが、OEMバイヤーの本音をくみ取るには、営業・設計といった他部門も巻き込んだ「現場横断型チーム」が欠かせません。
例えば、営業部門は顧客側の品質要求・商流トラブル事案に常に触れていますし、設計側も「どこまで量産を意識した設計検討ができているか」を知っています。
また、工程・設備担当者は実際現場で起きている課題や人・設備の限界値を知り尽くしています。川下から川上までの現場知と現実解を組み合わせることで、OEM特有の“現場勘”に基づくリスク抽出と、実行力ある再発防止策が立てられるのです。
2. 失敗モードの徹底的な洗い出し~なぜなぜ分析とヒヤリ・ハット活用
OEMの量産現場では、「こんなことがなぜ起きたのか?」「その兆候は現場の誰が一番早く感じていたのか?」を突き詰めて考えることが重要です。
経験豊かな現場作業者へのヒアリング、「ヒヤリ・ハット」事例の収集、およびなぜなぜ分析(Why-Why Analysis)を地道に積み重ねることで、机上では見落としがちな工程リスクを可視化できます。
過去の不良や異常の“傾向”だけに頼らず、似た他製品・類似ラインでの失敗事例、ヒューマンファクター、外注先の工程変動など多角的にリスクを捉える姿勢がOEMバイヤーからの信頼を高めます。
3. RPN(リスク優先数)の感性評価と、現場主義の導入
FMEAでは、「発生度(Occurrence)」「重大度(Severity)」「検出度(Detection)」の3指標を1~10点で評価し、それをかけ合わせてリスク優先数(Risk Priority Number:RPN)を算出します。
しかし、現実のOEM現場ではこの数値化が形式だけで終わりやすく、「なぜこの数値なのか?他人も納得できる基準か?」と現場全体で突きあわせる作業が必要です。
また「この工程で不良が出たとき、OEMバイヤーからどんなクレームが来るか?納期や取引停止にどこまで波及するか?」という“現場主義”の危機感も織り込んでこそ、真に意味のある工程FMEAとなります。
工程FMEAを形式主義で終わらせないポイント
1. “ヒト”に落とし込む:現場作業者への徹底展開
工程FMEAは「机上の空論」や「管理職だけの自己満足」で終わらせてはなりません。
現場改善の要となるのは最終的に“ヒト”です。工程FMEAで明らかになったリスクポイントごとに、現場作業者への具体的な作業指示書改訂、チェックリストへの反映、朝礼での共有、教育訓練シナリオへの盛り込みなど、徹底した現場浸透を図ることが不可欠です。
現場のベテラン作業者の知見(暗黙知)を丁寧に拾い上げながら形式知化し、全員が同じリスク感度で動ける現場をつくることが、OEMサプライヤーの強みになります。
2. “設備・治具管理”との連携:IoTや自動化の導入
昭和的な「職人依存」で全てを解決しようとする時代は終わりつつあります。
工程FMEAで抽出した失敗モードの中には、ヒューマンミスだけでなく「設備・治具の老朽化」「センサ類の信頼性低下」「IoTデータの活用不足」などデジタル化で抑えられるリスクが多数存在します。
各工程の自動化・可視化、更なる治具の標準化・固定化などデジタルも積極的に取り入れることが、OEMの大量・高品質生産では不可欠です。
3. “バイヤーとの透明性”を確保する:工程FMEAレポートの正しい運用
OEMサプライヤーとしては、工程FMEAの内容や改善過程をバイヤー側としっかり共有し、品質保証のための透明性を担保することが長期的信頼関係につながります。
「すべてのリスクをゼロにできません。しかし、こうしたリスクにこう向き合い、工程に落としこんでいます」という説明責任を果たせるFMEA運用体制づくりも大変重要です。
トラブル発生時には、FMEAをもとに“迅速かつ論理的な対応”が可能となり「ただ謝るメーカー」「言い訳だけのサプライヤー」から脱却できます。
これからの工程FMEA~ラテラルシンキングで新地平を切り開く
工程FMEAは従来「不良流出防止のための守りの技術」として語られがちでした。
しかし、変化の激しい現代製造業では「既定の失敗モード」だけでなく、新しい視点やテクノロジーからもリスクを発見し・チャンスにつなげる“攻めのFMEA”が求められています。
例えば、
・サプライチェーン全体を俯瞰し、原材料サプライヤーや外注先の工程異常も含めて管理する。
・AIやデータ分析で「これまで気づけなかった予兆」をFMEAの中に織り込む。
・グローバル調達・多拠点生産という新しいビジネス環境下での工程FMEAのローカライズや多言語展開。
これらの動きは単なる品質管理手法を超えて、OEMサプライヤー同士の共創・進化の鍵となります。
現場目線で「本当に生きたFMEA」を作り、形式だけで終わらせず、組織全体の成長エネルギーに変えていく。それこそがこれからのOEM調達の新境地です。
まとめ~バイヤー・サプライヤーの双方に求められる姿勢とは
量産前の工程FMEAは、OEM取引における品質・リスクマネジメントの要です。
サプライヤー側は“自社だけの都合”を離れ、OEMバイヤーが本当に求めるもの=「安定品質」「納期遵守」「トラブル時の異常対応力」をFMEAに反映させるべきです。
バイヤー側も単に「FMEAやってますか?」という書面評価ではなく、サプライヤーの現場本位のFMEA実践体制、トラブル時の初動力、担当者レベルの品質管理感度まで眼を凝らす必要があります。
この記事を通じて、OEM現場における工程FMEAの真価がより多くの現場実務者・管理者に伝わり、昭和的旧習から脱却した新しい製造業の礎になることを願っています。
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