投稿日:2025年11月26日

OEMトレーナーで注意すべき“縫製方向と生地伸縮”の関係

OEMトレーナーでの“縫製方向と生地伸縮”が重要な理由

OEMトレーナー(スウェットシャツ)の生産において、「縫製方向」と「生地伸縮」は、完成品の品質を左右する非常に重要な要素です。

多くのバイヤーや設計担当者が最終製品のデザインやコストに注目しがちですが、現場サイドから見ると、縫製方向と生地伸縮の理解が足りないことで現場トラブルが多発します。

現場で20年以上の経験を持つ立場から、なぜこの2点がOEM生産工程で特に重視されるのかを詳しく解説します。

生地の伸縮性と配置がトレーナーに与える影響

トレーナーに使われる素材は、おもに「天竺」「裏毛」などの編み物が中心です。

こうした生地は「横方向(よこに伸びる)」の伸縮性が高く、縦方向は比較的伸びにくいという特徴を持っています。

生地の裁断や縫製ではこの伸縮性を正しく理解し、製図(パターン)やパーツ配置に反映させる必要があります。

もし、意図せず縦横を誤って裁断しパーツを縫製してしまうと、以下のようなトラブルに発展します。

– 型崩れしやすくなる
– 着心地が悪くなる(つっぱりやダルダルな仕上がり)
– 洗濯後の変形(縮み方、伸び方が異常になる)
– 品質クレームや大量返品リスク

こうしたトラブルは現場泣かせですが、バイヤーや設計担当者の理解不足(仕様書の不備)で発生しているケースも少なくありません。

現場目線:生地の縦横裁断ミス事例

例えば、オーダー書類や仕様書で「前身頃パーツはこの向き、袖パーツはこの向きで裁断」と細かく指定されていない場合、現場オペレーターの慣習や勘に依存し、量産段階で一部が誤って縦横逆に裁断されるという失敗が実際に起きています。

昭和のアナログ時代から続く「経験に頼った現場」の典型的弱点ですが、現在でも中小ロット・海外生産現場では起こり得ます。

なぜ縫製方向(パーツ配置)がそれほど重要なのか

生地の「目(grain)」に対して正しい向きで裁断・縫製しないと、仕立て上がったトレーナーは本来の設計通りにフィットせず、外観や耐久性にも影響が出ます。

たとえば、
– ボディや袖がねじれて着用時に違和感
– リブ部分がうまく縮まらない、ゆるくなる
– 端部が波打ちやすく商品価値が下がる

という現場レベルでの不良が多発します。

とくにOEM生産では、「安価な中国や東南アジアの縫製工場」「多品種小ロット化」「納期短縮化」という背景があり、現場スタッフのスキル(および指示書の精度)の重要性が昭和時代以上に問われています。

バイヤーの視点から現場を理解する

バイヤーやサプライヤー間で「仕様不備」や「期待認識のズレ」が起こると、工場リスクが増大します。

「裁断方向=素材の表情や機能性」に直結する点を、現場視点であらかじめ把握したバイヤーは、工場との認識齟齬(そご)も予防でき、コスト削減・納期短縮・品質維持の三拍子を実現しやすくなります。

生地伸縮と縫製方向の具体的な取り組み

1. 仕様書での明確な指示

OEMトレーナー商品の設計段階で「各パーツごとの裁断方向(縦取り・横取り)」を明確に定義しておきます。

裁断マーカー(型紙配置図)も作成し、海外工場など言語コミュニケーションに不安がある場合は、「生地目」「方向シール」などの指示ツールも活用します。

2. ストレッチ試験の実施

量産前サンプルの段階で、各パーツが設計通りに伸縮するか(横胴、縦胴、リブなど)を確認します。

簡易的なハンドストレッチでも良いので、不良品発生を未然に防ぎます。

3. 工場内教育とQC(品質管理)ルール作り

縫製担当者や裁断担当者が「なぜ裁断方向に注意を払うべきか」という理解を共有し、QC検査項目に「裁断方向・縫製方向」のチェックを必ず加えます。

現場でありがちな「感覚のズレ」に対応するには、チェックリスト化や第三者検査を組み合わせることが有効です。

実際のOEM現場で起きた「縫製方向ミス」実例

私の経験でも、量産工程の最終検査で「一部袖パーツの裁断方向ミス」により、ボディと袖の伸縮感が著しく異なるという事例が数回ありました。

この場合、全数再縫製までは至らなくとも、相当数の手直しや廃棄が発生し、コスト高につながりました。

また、縫製ラインを流している最中、一部ロットだけが「なぜか袖がきつくて入らない」とクレームになり、原因を調査したところ「袖部パーツの一部が縦方向に裁断されていた」ことが判明したのです。

こうした根本的なミスは「裁断時の指示不備」や「現場教育の不足」が原因である場合が多く、OEMという分業系モデルの限界でもあります。

解決策は「設計段階からの現場連携」

設計・バイヤー陣と現場オペレーターが密に意思疎通し、パターン図・仕様書・現場教育まで一貫性を持たせることがトータル品質のカギです。

アナログ業界で根強い「現場任せ」を打破するには?

業界全体を見渡すと、いまだ正確な仕様書作成や現場教育が追いついていない中小OEM工場は多いです。

昭和の時代は「熟練職人の経験と目利き」が現場を支えました。

ですが、人材流動化や技能伝承の断絶が進む今こそ、現場のミスを未然に防ぐ「標準化」「情報共有」の重要性がより高まっています。

今後、生産がより多国籍・多拠点に広がるなかで、縫製方向や生地伸縮などの基本項目こそ、「当たり前品質」としてグローバルでも通用するノウハウ化が必須です。

サプライヤー・バイヤーの双方が知っておきたい観点

サプライヤー(OEM工場側)の担当者は、「なぜバイヤーが縫製方向や伸縮性を気にするのか」「どこでミスが起きやすいのか」を現場目線で理解し、社内教育やチェックリストをアップデートする必要があります。

バイヤーも単なるコストや納期だけでなく、縫製方向・裁断方法といった製品の根本的な品質要素へ積極的に関与し、リスクを事前に排除する視点を持つべきです。

まとめ:現場・設計・バイヤー三位一体での品質向上へ

OEMトレーナーの生産現場における「縫製方向と生地伸縮」の理解は、単なる現場業務の効率化にとどまらず、「ミスゼロ品質」「クレームゼロ」「コスト最適化」を実現する根幹です。

昭和時代からの職人的アナログ感覚も、標準化・データ化を通じて生かしつつ、現場と設計・バイヤーが互いに知見を共有し合う組織風土の醸成が、これからの競争力向上に不可欠です。

製造業に勤める全ての方、バイヤーの立場を目指す方、サプライヤーの技術者・管理者の方には、この「縫製方向と生地伸縮」について、ぜひ“現場目線で”再確認し、より良いモノづくりへの一助にしていただければと思います。

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