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OEMパーカーで失敗する“曖昧な仕様指示”の危険性

目次
はじめに―OEMパーカー製作の「落とし穴」とは
OEMパーカーの製作は、アパレル業界やプロモーション業界だけでなく、多くの製造業でも需要が高まっています。
自社ブランドのイメージアップや、従業員のモチベーション向上、ノベルティ活用などOEMパーカーの活用方法は多岐にわたります。
しかし、いざパーカーを製作しようとした際に直面するのが「仕様指示の曖昧さ」です。
曖昧な仕様指示がもたらす危険性や、実際に現場で様々な失敗を目の当たりにしてきた私だからこそお伝えできるポイントを、現場目線で詳しく解説します。
曖昧な仕様指示が引き起こす失敗例
「なんとなく」で始まるミスの連鎖
製造現場でよくあるのが、お客様からの「このぐらいでいいです」「前回と同じ仕様で」「イメージはこんな感じ」といった曖昧な指示です。
この“なんとなく”発注が、現場でどれほど厄介な問題を引き起こすか、多くのバイヤーやサプライヤーは実感しているはずです。
例えば、裏起毛の生地厚を「標準で」と指定された場合、どこの標準か、目的によって「標準」が全く異なるものになります。
カラーやプリントの曖昧さ
OEMパーカーで多い失敗の一つが「色」です。
「紺色」と指定されても、ネイビー、ダークネイビー、ミッドナイトブルーなど同系色で複数のバリエーションがあります。
さらにスクリーンプリントなどのプリント指示も、「ロゴを大きく」「目立たせて」といった感覚的な言葉だけでは、寸法や位置ズレなどのトラブルが発生しやすいのです。
サイズや付属品のトラブル
「いつも通りLLサイズで」という指示も危険です。
ボディのメーカーや型番が違うだけで寸法規格が異なります。
ジッパーや紐の種類指定を明示しなかったせいでコスト増や納期遅延につながった事例も、工場現場で数えきれないほど見てきました。
曖昧な仕様指示がもたらすリスク
追加コストの発生
指示の曖昧さにより試作品やサンプルのやり直し、材料の再発注など、余計なコストが発生します。
「最終的に現場が何とかする」ことを期待して進行すると、想定外の追加費用が発生する可能性が高まります。
納期遅延の深刻化
仕様の再確認や手戻りが発生すれば、わずかなズレが致命的な工程遅延に繋がります。
特にアパレルOEMは繁忙期の生産キャパシティが限られるため、納期遅延は次の案件や販促計画の頓挫に直結しかねません。
信頼の低下と“下請け軽視”
コミュニケーションロスによるミスの積み重ねは「この会社は仕事がやりにくい」とサプライヤーから評価を下げます。
下請No.1時代から脱却できないアナログな調達購買現場では、特に「お客様の言うことは絶対」「サプライヤーが悪い」という発想が抜け出せていません。
ですが、本来は“曖昧な発注”こそが品質・コスト・納期すべてのボトルネックとなります。
昭和体質のアナログ現場で根付く曖昧さの背景
「空気」で進める日本的商習慣
なぜここまで曖昧な指示が繰り返されるのでしょうか。
その根底には“説明しなくても分かってくれるだろう”という昭和的な現場感覚があります。
「今までと同じ」「その場で伝えれば良い」という口頭主義、慣れ合い文化が未だに色濃く残っています。
ドキュメント・仕様書軽視の弊害
調達購買において仕様書づくりは面倒で時間のかかる仕事です。
IT化やDX推進が叫ばれても、“パーカーごときに難しい図面やマニュアルは要らない”と軽視されがちです。
ですが、その積み重ねが製品品質や納期、最終的な損失に直結します。
失敗しないOEMパーカー製作―5つの実践ポイント
1. ゴールイメージと活用シーンを明確に
「なぜ・誰に・どこで・どのように使わせたいのか」を明文化してください。
ノベルティ向けならコスト重視、スタッフユニフォームなら耐久性や動きやすさも必須です。
発注担当者がこの“なぜ”を言語化できないまま進行すると、その後のトラブル対応で必ず後悔することになります。
2. 仕様項目ごとに「数値」で伝える
生地:厚み(オンス)、素材の混率(綿50%、ポリエステル50%など)、裏地の有無。
色指定:PANTONEやDICなど色番号、現物チップの提出。
サイズ:身丈・身幅など寸法指定、既存製品との比較サンプル提示。
プリント位置:左右〇cm、肩から〇cmと図示。
数値化できないものは、必ず現物や写真サンプルを添付すると誤解を防げます。
3. サンプル確認の手順を明文化
必ず初回サンプルを現物でチェックし、承認フローを設けましょう。
「写真でOK」「急ぐので一任」など省略癖が根付いている現場ほど、自主チェックリストを設けることが事故防止の肝となります。
4. 重要工程は工程表とともに管理する
“試作~量産~納品”の流れにマイルストーンを設け、各段階で仕様確認ポイントを文書化してください。
この時に「言った・聞いてない」の水掛け論を防ぐため、メールなど記録に残る手段でやり取りを心掛けましょう。
5. サプライヤー視点での確認・提案を促す
「気になる点は何でも質問してください」と発注者側から伝えることが大切です。
現場担当者が仕様モレや不明点を遠慮なく言える関係を作ることで、ダブルチェックによる品質向上やコスト低減につながります。
サプライヤーの方は、バイヤーに「こういう指示だと現場は困る」「こう明確化すれば作りやすい」など積極的にフィードバックしましょう。
新時代の製造業バイヤー・サプライヤーに必要な資質とは
現場が変わるヒントは「見える化」と「言語化」
今の製造業界は、単なるコスト削減や納期短縮だけで勝負できる時代ではありません。
仕様の“見える化(ドキュメント化)”と“言語化(曖昧な表現を数値や画像で示す)”こそが、未来の競争力の源泉です。
日本的な「阿吽の呼吸」だけに頼るのではなく、主観ではなく客観データで意思疎通できるオペレーションを現場に根付かせましょう。
DX化・業務標準化は“人”で決まる
どんなシステムを入れても最後は人の意識改革がなければ根付きません。
発注書・仕様書・サンプル管理などの標準化を推進する担当者、現場担当間での情報共有体制の強化が、昭和から令和の現場へと脱皮する鍵となります。
まとめ―“伝わる仕様指示”が製造業の未来を守る
OEMパーカーの発注で失敗する理由の多くは「曖昧な仕様指示」にあります。
これはパーカー製作に限らず、あらゆる製造プロセス全体に共通する現場課題です。
本記事では、長年ものづくり現場に身を置いてきた筆者の視点から、曖昧な指示を廃し、確実なモノづくりに繋げる実践的なヒントを紹介してきました。
「たかがパーカー、されどパーカー」です。
1枚のパーカーを“確実に・効率よく・クオリティ高く”作り上げる力は、間違いなく企業全体の競争力に跳ね返ります。
埋もれた現場知恵と新しい視点で「製造業の未来」を作っていきましょう。