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地方製造業が抱える受注変動リスクを分散する多元供給体制の作り方

目次
地方製造業が直面する受注変動リスクとは
地方製造業は、首都圏や大都市圏のメーカーに比べて、事業環境や取引条件にさまざまな特徴があります。
最も大きなリスクの一つが「受注変動」です。
繁忙期には生産リソースが足りなくなり、閑散期には設備や人員が余ってしまうという現象は、多くの地方工場で日常的に起こっています。
また、特定の数社に顧客が偏っている場合、一社の意向や景気変動により受注が大きく増減する危険性もはらんでいます。
このような受注変動リスクは、中小規模の工場ほど経営基盤を揺るがす深刻な課題です。
では、このリスクにどのように立ち向かうべきなのでしょうか。
受注変動リスクを分散する「多元供給体制」とは
受注変動リスクに対する有効な対策として、近年、多元供給体制の導入が注目されています。
「多元供給体制」とは、複数の異なる顧客、さらには複数の生産拠点や協力会社をバランスよく組み合わせて、単一の受注先や特定の品目に依存しない供給ネットワークを構築することです。
この体制を作ることで、単発的な発注減や特定顧客との取引停止によるダメージを和らげ、事業の持続性・柔軟性を高めることが可能となります。
なぜ今、多元供給体制が求められるのか
ITや物流の進化によりグローバルサプライチェーンは複雑化しましたが、同時に自然災害や感染症、地政学リスクなど、予期せぬショックが供給網全体に広がるリスクも高まっています。
また、持続可能性の観点からも、多元供給はSDGsやBCP(事業継続計画)対策の要素として国内外で重視されています。
このため、競争激化・大手顧客集中依存から脱却するためにも、中堅・中小の地方メーカーが「一社依存型」ではなく「多元供給型」へと変革することは急務なのです。
地方製造業における多元供給体制の具体的な作り方
では、具体的にどのように多元供給体制を構築していくべきなのでしょうか。
私自身、昭和から続くアナログ的な人脈・信用重視の製造業現場で、調達・購買、生産管理、品質管理、そして工場長も経験してきました。
その経験から得た実践知をもとに、現場目線でノウハウを解説します。
1. 依存状況の現状分析から始める
まずは自社の「依存状況」を可視化しましょう。
売上の80%以上が2~3社に集中していないか、特定の材料・部品の仕入れ先が1社だけに偏っていないかなどを洗い出します。
この際、Excelなどの管理表やBIツールを使って取引実績を一覧化し、可視化・定量化するのが肝要です。
どの工場現場でも陥りがちなのは、長年同じ顧客や仕入先との関係を慣習的に続けてしまい、深刻な依存状況が見えていないケースです。
この「見える化」こそ、多元供給戦略の出発点になります。
2. 新規顧客・仕入先の開拓に本腰を入れる
多元供給体制を形だけでなく実効性あるものにするには、「新規取引先の開拓」が避けて通れません。
特に地方製造業では、人脈重視・紹介重視の風土が根付き、インターネットや展示会などを活用した積極的な営業が不足しがちです。
戦略的に営業や購買部門主導で「新たな顧客ターゲットリスト」を作成し、電話・メール・Web会議・SNSなどデジタル活用も交えてアプローチしましょう。
既存サプライヤーには「代替可能な他社がある」ことを意識してもらうことで、価格・品質交渉の場でも主導権を持ちやすくなります。
3. 協力会社や同業者とのネットワーク化を進める
近年、地方の中小製造業を中心に、「協業」「連携」「ものづくりネットワーク」などの動きが活発になっています。
例えば、自社設備や加工技術だけでは対応できないイレギュラー案件も、地元の同業他社や協力会社と連携することで受注逃しを防げます。
また、相互バックアップ体制やBCP(バックアップ生産)の提携計画を整えておけば、有事の際にお互いの顧客や設備生産能力の融通が可能になります。
これはアナログ文化が根深い業界こそ、直接的な信頼関係を武器にスムーズに進めやすい特徴でもあるのです。
4. 多様な製品ラインナップと生産体制の内製度向上
特定の品目や分野だけに依存せず、複数分野・複数品目を展開する「複線化」も多元供給体制の重要な要素です。
一例として、板金加工会社が自動車部品だけでなく、医療機器部品や農機具部品にも事業領域を広げることで、各業界の景気変動が全体売上に与える影響を平準化できます。
同時に、部材調達や生産工程の一部を内製化することで、外部サプライヤー依存度を下げ、リードタイム短縮・コストダウンにもつなげましょう。
このように現場レベルで「多機能化」「横展開」を推し進めることが、長期的なリスク分散に直結します。
製造業の現場から見た多元供給の実践ポイント
現場の管理職や工場長、バイヤー経験を通じて感じるのは、多元供給体制の構築には「企業文化」や「人の気持ち」が大きく影響するということです。
単に顧客や協力先を増やすだけでなく、現場スタッフや経営層の「多元供給だからこそ守れる雇用」や「多様な顧客こそ新たな収益源」への理解が欠かせません。
現場目線での現実的アドバイス
1. 社内への説明と意識醸成に時間をかける
突然の仕組み変更や協力会社の拡大は、既存スタッフに不安を持たれることもあります。
メリット・デメリット、段階的な導入計画を丁寧に説明しましょう。
2. 一気に全てを変えず、まずは一部から導入
全部門で一斉に体制変更するのは現場も大混乱します。
まずは一部の主要部品や一つの顧客セグメントから多元化を始め、「成功事例」として横展開していくのが現実的です。
3. デジタルツールの導入も、使い手目線で
アナログ文化が色濃い製造現場では、難解なシステムよりも、現場スタッフが使いやすいITツール(在庫管理・受注管理など)を選んで徐々に浸透させましょう。
多元供給体制が創る「強い現場」とは
多元供給体制の最大の強みは、「しなやかで強い現場」を実現できることです。
単一顧客の要望で右往左往せず、好不況や災害時にも落ち着いた経営判断ができる。
自社商品・技術を武器に新たな業界にも進出できる。
そして現場スタッフも「次に向かうチャンス」を得られる。
地域に根付いた経営、人のつながり、現場の粘り強さ――これらこそが「地方のものづくり」がもつ本当の強みです。
その強みを最大限に発揮しつつ、新たな時代の荒波にも耐えうる体制へと進化する。
それが、受注変動リスクに備える地方製造業の生きる道だと、私は現場経験を通じて強く実感しています。
まとめ:アナログ業界の知恵とデジタル活用、両輪で多元供給体制を
地方製造業にとって受注変動リスクは今後も避けられません。
しかし、アナログ的な人間関係や現場の結束力を活かしつつ、選択肢を増やす多元供給体制と、必要に応じたデジタル活用の知恵を両輪で回していくことで、大きな変化の時代も乗り越えられるはずです。
「顧客も仕入先も、複数持っておくのがニューノーマル」
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この実践的知見が、製造業に携わる皆さんの現場改革や、バイヤー・サプライヤー間のより良いパートナーシップ構築の一助となれば幸いです。
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