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地方製造業の稼働率を最大化するための生産分担とデジタル連携

目次
はじめに:地方製造業の課題と変革の必要性
日本の製造業は、長らく世界トップレベルの品質と現場力で国際競争を勝ち抜いてきました。
しかし、人口減少や高齢化、地域間格差、グローバル競争の激化など、環境は劇的に変化しています。
特に地方の製造現場では、人手不足や古い仕組みのまま経営を続けている工場も多く、稼働率の低下や非効率な業務に悩む企業が目立ちます。
このままでは「昭和体質」のまま取り残され、企業存続すら危ぶまれる事態に陥りかねません。
そこで重要なのが「生産分担」と「デジタル連携」による新たな現場力の構築です。
今回は、20年以上にわたり工場の現場や経営、調達・購買業務に携わった筆者の経験をもとに、地方製造業が稼働率を最大化するための実践的なアプローチを解説します。
生産分担とは何か:地元企業が力を合わせる時代
「自前主義」から脱却できない現場の葛藤
地方の多くの製造業では、「何でも自分たちだけで作る」という自前主義が根強く残っています。
品質へのこだわりや過去の成功体験が背景にありますが、少数精鋭、人手不足の中、すべてを自社で賄おうとするには限界があります。
特に、24時間稼働の必要なラインや変動が激しい受注生産では、設備やスタッフの稼働に大きなムラが生まれやすいです。
繁忙期の「残業&休日稼働」と、閑散期の「ライン停止」の繰り返しでせっかくの人材と資産が有効活用できません。
外部パートナーとの分担によるコア領域の集中
そこで取り入れたいのが「生産分担」という考え方です。
得意な分野は自社で担い、不得意やリソースを割きづらい工程は、地域内外のパートナーと連携する方法です。
具体的には、下記のパターンがあります。
- 標準品・汎用品は地元の協力工場に外注
- 多工程ラインの一部を専門企業が担う
- 短納期品のみ外部パートナーに優先発注
これにより、コア技術や顧客価値の高い製品に人材と設備を集中でき、結果的に企業としての競争力と利益率を高めることが可能となります。
生産分担の心理的障壁と突破法
現場からは「品質が心配」「外部に情報漏洩しそう」「仕事を取られるのでは」という声が上がります。
しかし、現代は「共創」の時代です。
取引先を単なる「外注先」ではなく、同じ町のパートナー、同じ産業を支える仲間と捉えなおすマインドチェンジが求められます。
生産分担を始める際は、工程ごとに分担する範囲と責任分界点を明確化すること、そしてデジタル化で情報共有を「見える化」することが不可欠です。
デジタル連携とは:アナログ現場にどう浸透させるか
なぜ現場はデジタル化に抵抗するのか
製造現場、とくに地方企業では、紙やExcelによる帳票管理が色濃く残っています。
これは、「操作が難しそう」「現場のやり方が変わってしまう」「データ入力が面倒」といった現場の”思い込み”も原因です。
かつて私も工場長時代、数十人の現場リーダーたちに新しい生産管理システムやIoT端末を導入した際には、強い抵抗を受けた経験があります。
ツールと業務を「分かりやすく」する工夫
デジタル連携を定着させる最大のポイントは「簡単で便利」と肌で感じてもらうことです。
たとえば、作業日報や進捗管理をスマホやタブレットで写真撮影するだけで自動入力できる仕組みを使えば、デジタル初心者のベテラン作業者も抵抗感なく使えます。
また、「今、この仕事がどれくらい進んでいるか」「他社への発注状況がリアルタイムでどうなっているか」といった全体像をチームで”見える化”することで、コミュニケーションが活性化し、二重作業や工程の無駄も大幅削減できます。
データ活用で稼働率を最大化
外部パートナーとの協業も、クラウド型の簡易生産管理ツールや共有フォルダ等を用いれば、Excelメールのやり取りから一気に効率化できます。
共通の生産計画、在庫状況、進捗速報などリアルタイムでデータを共有できる環境を作ることで、余剰在庫や急な工程ロスを減らし、ライン稼働率の平準化も実現します。
最初は小さな一歩でも良いので「現場で使うシーン」をイメージしスタッフ全員を巻き込んで導入することが重要です。
調達購買の視点:最適なパートナー選びと交渉術
外注先は「コスト」だけで選ばない
バイヤーの皆さんにとって、サプライヤー選定は価格競争だけに目が行きがちですが、これからは信頼性・柔軟性・技術力も比較検討する必要があります。
たとえば、以前の私の工場でも、単純なアッセンブリ工程を県内の小規模事業者数社に分担したところ、繁忙期の急な増産対応や、人手不足での休業リスクを分散できるようになりました。
一時的なコスト増があっても、結果的には安定納品・顧客信頼アップにつながり、全体コストも抑制できました。
サプライヤーの立場から見た「選ばれる」ポイント
サプライヤー側にとっては「どうしたらバイヤーに信頼され、パートナーに選んでもらえるか」が課題となります。
コツは、単なる下請けに甘んじないことです。
たとえば、納期遵守だけでなく、品質改善案の提案や工程効率化のアイディア、デジタル連携の積極参加など、現場起点の価値提供を積み重ねていきましょう。
バイヤーに「一緒に課題解決できる頼れるパートナー」と認識してもらえれば、価格や条件だけではない長期的な信頼関係が生まれます。
昭和から令和への転換:現場目線のイノベーション
「自分たちのやり方」へのこだわりをアップデートする
古き良き昭和的現場力は、日本の強みの一つです。
しかし、急速に変化する現代で、昔ながらの非効率なやり方を続けるのは危険です。
たとえば、工程順序や作業方法に「なぜ?」を繰り返し問い、他社の成功事例から積極的に学ぶ姿勢が大切です。
工場間の壁を超えた定例会や勉強会、現場見学もとても有効です。
中小企業こそ「見える化」を武器にする
大企業のような大掛かりなシステムやIoTでなくても、安価なクラウドツールや自作の管理ボード、LINEなどのチャットグループだけでも充分に「現場の見える化」は進められます。
小さな一歩を着実に積み重ねて、古い慣習から少しずつアップデートしていくことが令和時代の現場イノベーションの第一歩です。
まとめ:地方製造業の未来へ向けて
地方製造業の稼働率最大化は、単に設備や人材の問題だけでなく、時代の変化に応じた「生産分担」と「デジタル連携」がカギを握ります。
お互いをパートナーとしてリスペクトし、ノウハウやデータを柔軟に共有することで、限られた資源を最大限に活用できます。
今こそ、慣れ親しんだ「自前主義」や「アナログ思考」から一歩踏み出しましょう。
現場起点でイノベーションを起こし、地域のものづくりの底力を日本全体の未来に繋げていきましょう。
製造業に携わるすべての方が、競争ではなく共創のマインドで、新しい時代の現場力を築いていかれることを心から願います。
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