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地方製造業の現場知見をDX化して柔軟な調達連携を実現する

目次
はじめに ― DXで変革する地方製造業の調達現場
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)が製造業でも急速に浸透しています。
特に地方の製造業では、少子高齢化による人手不足、サプライチェーンの多様化、コロナ禍を契機とした事業の見直しなど、業界全体が大きな転換点に直面しています。
その中で、調達分野のDX化はまさに喫緊の課題です。
現場の知見をデジタル化し、バイヤーとサプライヤーの間に新しい連携の在り方を築くことで、地方製造業は従来の枠組みを超えた柔軟な競争力を手に入れることができます。
今回は、長年現場で培った経験をもとに、DXがもたらす調達連携の進化と、アナログに根ざした土壌をどう変革していくのか、現場目線で解説します。
現場の知見とは何か ― 暗黙知を形式知へ
地方の工場には、何十年も受け継がれてきた「現場の知見」が蓄積されています。
例えば、
・図面に落ちていない加工ノウハウ
・材料調達時の地場ネットワーク
・季節や気候による需給バランスの読み
・ミスやトラブルの未然予防
こうした知識の多くは、ベテラン作業者や調達担当者の頭の中にしかありません。
DXの第一歩は、この「暗黙知」をデジタル化し、誰でもアクセスできる「形式知」として再構築することです。
たとえば、作業手順の動画保存、トラブルの履歴データベース化、地元パートナーの評価記録など、小さな積み重ねが調達力を高める基盤となります。
ここで大切なのは、単なるIT化(例:紙伝票の電子化)で終わらせず、現場で役立つ「活きた知見」の共有を目指すことです。
地方製造業が直面するアナログの壁 ― なぜDX化が遅れるのか
日本の製造業、特に地方の中小企業では、長らく伝票や発注書、さらには口頭やFAXなどアナログなやりとりが主流です。
その背景には、
・独自フォーマットに依存した業務プロセス
・年功序列の人間関係による情報流通
・IT人材の不足
・変化に対する「擦り合わせ文化」
など、多くの壁があります。
調達現場では、緊急の欠品時に電話一本で倉庫と連絡をとったり、「いつものあの人に」発注の便宜を図ったり…という、属人的な判断・調整が未だ根強く残っています。
昭和~平成初期に生まれた「職人気質の業務文化」が、失敗を恐れて変化を拒むことも少なくありません。
ラテラルシンキングで現状を突破する
このままでは、グローバルな調達競争に取り残されるリスクがあります。
ここで重要なのが「ラテラルシンキング」(水平思考)です。
従来とは違った切り口や組み合わせでアナログ文化の根をほぐし、DXの価値を現場に実感してもらう。
たとえば、若手とベテランが一緒になって「伝票の電子化=楽をする手段」ではなく、「現場の困りごとを減らす知恵」としてITを活用する。
こうした小さな意識変革が、アナログの壁を乗り越える推進力となります。
調達連携の進化 ― バイヤーとサプライヤーの新しい関係性
調達業務のDXは、単なるコスト削減や業務効率化だけがゴールではありません。
むしろ、バイヤー(買い手)とサプライヤー(売り手)が「共に価値を創出するパートナー」へと進化できるかどうかが問われています。
バイヤーが求める柔軟な連携
急な設計変更、災害による物流混乱、サプライチェーンの脱炭素化要請など、求められる調達像は年々高度化しています。
バイヤーが期待するのは、
・短納期や小ロット対応などフットワークの良さ
・データによるトレーサビリティ(追跡性)の担保
・環境情報や人権への配慮などSDGs対応
このような「変化対応力」です。
サプライヤー目線で考える“選ばれる”ためのポイント
サプライヤー側から見ると、
・自社の得意分野・ノウハウをどう「見える化」し提案できるか
・取引履歴や品質実績をデータで証明できるか
・質問や仕様変更に即応できるコミュニケーション力
これらが重要視されます。
コストや納期だけの勝負から脱却し、「知見の発信力」「変化の柔軟性」で選ばれる存在になることが、これからの調達連携には欠かせません。
DX化はそのためのパスポートともいえるでしょう。
具体的なDX化ステップ ― 小さく始めて現場の納得感を生む
いきなり全工程のDX化を進めようとすると、現場との摩擦が必ず生まれます。
効果的なのは「スモールスタート」と「現場巻き込み」の2点です。
1.現場の困りごとを発掘する
まずは、調達や生産、品質管理で日々時間を取られているアナログ業務を洗い出しましょう。
例えば、
・注文電話やFAXの再確認作業
・現品票紛失による納期遅れ
・図面・仕様の曖昧な伝達ミス
こうした課題に、現場のリーダーやベテランの体験談を交えてヒアリングするのが有効です。
これが現場参加につながり、「IT=役に立つ」という納得感の第一歩となります。
2.簡単なデジタルツールから導入する
次に、小規模な改善ツールを用いて効果測定を行います。
・タブレットやスマートフォンで写真つき納品管理
・表計算ソフトの自動化テンプレート
・チャットツールによる進捗確認
シンプルなツールから始め、便利さを体感してもらうことが肝心です。
既存の紙伝票と並行運用してもよいので、「段階的な慣れ」を意識しましょう。
3.アウトプットの見える化と情報共有
導入効果はなるべく全員が「見える」形で提示します。
たとえば、
・発注/納品ミスが月X件からゼロに減った
・作業工数が平均Y分短縮できた
こうしたデータを共有し、社内外へのPR材料にすることで、DX化の意義が広がります。
デジタル人材が育つ現場とは ― “誰かのため”が組織DNAになる
地方製造業でDXを実現する真の鍵は、「人財」です。
高度なエンジニアだけでなく、現場で働くすべての人が「誰かの業務を少しでも楽にしたい」という気持ちで行動し続けることが最重要です。
失敗を恐れず小さな改善にチャレンジし、その経験をデータで蓄積・活用して、次のステップにつなげる。
「人間+デジタル」の両輪で考える文化が根付けば、人による“属人化”とデジタルの“汎用性”が共存し、これまでにない相乗効果が生まれます。
経営層は未来志向のビジョンを持ち、現場は実践的な知恵を出し合い、若手からベテランまで巻き込んで成長する。
これが、地方製造業の現場知見を活かした真のDX―調達連携強化の姿です。
まとめ ― 未来志向の調達連携で地方製造業を再発明する
製造業の調達現場は、ちょっとした慣習や思い込みに強く縛られています。
しかし、現場で培われた知見こそが、これからの時代の大きな資産です。
DX化を恐れるのではなく、「現場の知見×デジタル」の融合こそが、柔軟で変化に強い調達連携の実現への近道です。
アナログの長所(細部への気配りや人間的つながり)を活かしつつ、新しいテクノロジーを「現場の味方」として導入していく。
ラテラルシンキングで型にとらわれず、地方の枠を超えた発想と行動で、バイヤーもサプライヤーも“選ばれ続ける”パートナーへと進化していきましょう。
地道な一歩一歩の積み重ねが、地方製造業の底力となり、ひいては日本全体の産業発展にもつながるはずです。
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