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OEMアウターのリピート発注時に品質差を防ぐ仕様書統一ルール

目次
はじめに:リピート発注で起こる品質課題とその背景
製造業に携わる方々であれば、OEMアウターのリピート発注で思わぬ品質差が発生し、ヒヤリとした経験があるのではないでしょうか。
一度サンプルで品質を満足させ、量産も問題なく納品されたにも関わらず、2回目、3回目のリピート発注の際に、以前とは微妙に異なる仕上がりやトラブルが起こってしまう。
これは OEM 取引において非常に多く見られる現象です。
この要因の多くは、アナログな現場の「属人的な運用」や「情報の分散管理」、そして「仕様書運用の甘さ」に起因しています。
今回の記事では、現場目線でリピート時の品質差を徹底防止するための、仕様書統一ルールの策定と運用のポイントを具体的に解説します。
そもそもなぜリピート時に品質差が生まれるのか?
属人化とブラックボックス化が招く問題
昭和から続く製造現場では、製品仕様の伝達やノウハウが熟練作業員個人の頭の中や手帳の隅にあることも珍しくありません。
担当者が変更になるたびに「前とはどこか違う」「細かい部分が伝わっていなかった」という事象が起こります。
また、現場の「勘と経験」に頼った細かな調整は、標準化・見える化がなされていない場合、必ず品質差を生みます。
仕様書の解釈と改変リスク
特にOEMアウターのようなアパレル製品は、デザイン・資材・縫製・仕上げなど多岐にわたるパラメータが品質に直結します。
しかし、往々にして「何となく前回と同じで」というオーダーや、「資材メーカーが在庫を切らしたから似たものにした」といった現場都合の“なぁなぁ発注”“イレギュラー処理”が入り込みます。
これが積もると、リピートで「同一仕様です」と謳いながら実は細部に差異が生じ、エンドユーザークレームや返品リスクが高まるのです。
アナログ脱却~仕様書統一ルールの必要性
仕様書が「契約書」として機能しているか?
日本の中堅・中小製造業では、仕様書を単なる工程指示書とみなして本質を見誤っているケースも少なくありません。
しかし、仕様書はOEMにおける「契約内容」の根幹です。
設計・生産・販売・品質管理の各部署が、誤解なく同じ方向を向くための“共通言語”なのです。
従って仕様書の統一ルールは単なるフォーマット整備ではなく、事業継続・ブランド価値維持の根本となります。
リピート時のリスクと徹底すべき管理ポイント
リピート時の落とし穴は、下記のようなポイントにあります。
– 年度替わりや仕入先のロット差による材料・副資材の変更
– 現場の裁量による工程省略や、暗黙のルール変更
– 過去バージョンの仕様書の流用・上書きミス
– 「ここは同じ」で済まされる写真や図面の省略・肥大化
こうした“ズレ”を防ぐには、現場が拠り所とする明確な統一ルールが不可欠です。
実践的な仕様書統一ルールの策定方法
1. 仕様情報の「定義」と「必須項目」の明文化
まず組織内で、「アウター」とは何をもって1品番とするのか(型・色・サイズ・資材etc.)を再定義しましょう。
次に、仕様書で絶対に記載が必要な情報をリスト化します。
たとえば、
– 型式・品名・寸法(±許容範囲、JIS等規格値含む)
– 表地・裏地・芯地・副資材(メーカー名、製品番手、ロット明記)
– 仕上げ工程(プレス方法、検針・包装形態も含む)
– 梱包仕様(段ボール形状、輸送方法、ラベル表示、出荷形態)
– 安全・法規制情報(会社独自規格/法定ラベル)
最低でもこれら全項目が「空欄」にならないフォーム化が必要です。
2. 仕様書のバージョン管理と履歴管理
リピートオーダー時に混乱しやすいのが、どのバージョンで実績があるのかを全員が把握していない点です。
Excelや紙での管理は避け、バージョン番号(Ver.〇〇、日付など)を仕様書上で明確化し、改訂理由も履歴として残す運用を徹底しましょう。
ファイル名や社内ドキュメント管理システムで、枝番管理や改訂担当者履歴が追えるようにします。
3. 写真・図面・工程資料の「必要最小限化」と「添付ルール」
分厚い仕様書が現場の誰も見ていない、というケースも多々あります。
重要なのは「工程管理から現場まで誰が見てもすぐ正確に理解できる」ことです。
– 「必須写真」「作業要点写真」などタグ分けして、混乱しやすい部位に補足説明
– 2D図面+キーポイントに赤字コメント(例:見返し幅10mm厳守 等)
– 工程で変更が入った部分には、赤囲みで注意文言を加える
写真・図面資料は必要最小限に絞りつつ、要点・注意点は写真やフローチャートで可視化してください。
4. OEMサプライヤーとの「共通理解」の構築
仕様書は作成側が「渡せば安心」ではなく、受け取り側(OEM先)が100%内容を理解し自信を持って生産できる事が重要です。
意思疎通不足によるミスをなくすには、発注側バイヤーと受託OEMサプライヤー間での「仕様理解事項チェックシート」などを活用します。
疑義があればその都度書面で協議し、合意事項はすぐに仕様書本体へ反映。
一方的な通知・指示ではなく「納得できる共通認識」を築く運用が、業界全体の品質基準底上げに繋がります。
昭和的アナログ文化から脱却、現場根付くデジタル運用へ
デジタル化の壁と突破法
日本の中小~大企業工場では、仕様書のデジタル運用が進みにくい現状が根強く残っています。
– 「紙が手元にあれば安心」
– 「システムを入れる手間や教育コストが高い」
– 「パソコン苦手な現場が多い」
こういった「昭和マインド」こそが、情報の属人化・伝達ミスを引き起こしています。
突破策は「現場が自然と見たくなるシステム」を開発・導入することです。
– タブレットで即時閲覧しやすい UI
– 仕様書検索性や現場コメント入力欄の設置
– QRコード連携で、作業場から品番・工程で仕様書呼び出し可能
– 改訂履歴や変更点が現場側で即参照できる設計
現場の抵抗感を減らし、日常オペレーションに違和感なく溶け込む仕組みづくりがデジタルシフト成功の鍵です。
リピート受注の信頼獲得=サプライヤーの競争力
サプライヤー視点:仕様書を武器にする
バイヤーから発注される側—すなわちOEMサプライヤーにとって、安定したリピート受注は最も重要な成長要素です。
仕様書を「受け身」で受け取るだけでなく、
– 社内でのダブルチェック
– 先回りした仕様確認提案
– 過去実績レビュー
– QA(品質保証手順)の「見える化」等を積極的に行いましょう。
高いレベルの品質遵守を継続できるサプライヤーは、バイヤーからの信頼を獲得しやすく、長期的な競争力アップに繋がります。
バイヤー視点:価値提案型パートナーシップ形成へ
安易なコストダウン交渉や「丸投げ発注」だけでなく、サプライヤーの現場事情や技術力を理解しつつ、仕様書の策定・見直しプロセスにもパートナーとして深く関わることが重要です。
サプライヤーからの現場改善提案、工程合理化、共同品質会議などは、両者win-winの持続的成長モデルを生み出す礎となります。
まとめ:仕様書こそ製造業のDX・品質革新の起点
製造業の新しい地平線は、「属人的運用からの脱却」「開かれた仕様書活用」こそが切り拓くと確信しています。
アナログに染みついた慣例を一度見直し、仕様書統一ルールの明文化とデジタル化、さらにはサプライヤー・バイヤー間の共通認識醸成に注力することで、OEMアウターのリピート発注時にも品質差ゼロを目指すことが可能になります。
「仕様書の統一ルール化」はすべてのモノづくり現場において、DX・品質維持・顧客信頼の原点である。
これからも現場目線で、技術×仕組み×人の知恵をつなぐ記事を発信してまいります。
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