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輸送中の振動試験を軽視した企業が後悔する理由

目次
はじめに:輸送中の振動試験の真価を問う
製造業に携わる方にとって、「振動試験」と聞くと“そこまで重要なのか?”と思われる方もいるかもしれません。
特に昭和時代から続くアナログな現場文化が色濃く残る業界においては、図面や仕様書どおりのものを作り、問題なく出荷すれば良しとされる風潮があります。
しかし、現代のサプライチェーンや物流の複雑化、市場のグローバル化により、輸送中のわずかなトラブルが最終顧客の満足度・ブランド価値に大きな影響を与える時代となりました。
この記事では、現場経験豊富な筆者が「輸送中の振動試験の重要性」と「それを軽視した企業がなぜ後悔するのか」を実体験・業界動向をまじえながら解説します。
なぜ、輸送中の振動試験が必要なのか?
現場の“あたりまえ”と顧客の“本音”のギャップ
多くの工場では、製品出荷にあたり「外観検査」「機能検査」「梱包チェック」だけでOKという流れが定着しています。
かく言う筆者も、現場管理職の時代には「これだけやれば問題ないだろう」と思っていました。
しかし、納品後に発覚するリードタイムトラブルや、顧客の元での“謎の不良”、思わぬクレームの多くは、実は「輸送中の見えないストレス」が原因であることが非常に多いのです。
これは、現場目線と顧客目線に大きなギャップがある典型例であり、「想定していた振動・衝撃」と「実際に起きた振動・衝撃」には大きな乖離が存在しています。
現代物流の環境変化とリスクの多様化
インフラの進歩や海外調達の拡大により、製品は「トラック輸送」だけでなく、「航空便」や「コンテナ船」など、多様な輸送手段を経由します。
拠点間移動の段数も増え、一回の輸送中に何度も積み替えや荷下ろしを伴うことが増加しています。
道路事情によるものだけでなく、梱包・パレットワークのちょっとしたミスが大きなダメージを招き―
これら新たなリスクに対応するため、現場も“従来の常識”から脱皮しなければなりません。
振動試験を軽視したときに企業が直面する「3つの後悔」
1. 輸送・納品後の思わぬクレームと信頼失墜
幾度となく目にしてきたのが、“梱包状態では異常が見られなかった”としても、納入先で開封したら「配線の断線」「微妙な部品の外れ」「液晶の破損」などが発生しているケースです。
このようなトラブルが起こると、サプライヤーは火消しに奔走し、社内でも原因追及や再発防止活動に膨大な工数がとられます。
何より、ユーザーやバイヤーからの信頼は一瞬で低下し、継続取引・将来の案件にも大きな負の影響を及ぼします。
2. 返品・再製作・現場対応コストの急増
輸送中の問題は、現地納品・現場立ち上げ直後に発覚することが多く、「急ぎで再製作」「エンジニア現地派遣」「再梱包・再輸送」など、直接的なコスト増大を招きます。
経験上、現場で“対症療法”を続けるほど、余計な間接コストや人的リソースが次々と投入されます。
これは本来、防げたはずの“ムダな支出”に他なりません。
3. 継続的な品質改善・効率化機会の逸失
振動試験を定常的に行わない工場では、「実際に何が起きているか」について再現性のある検証がなされません。
結果として、「なぜ壊れたのか」「なぜ破損したのか」を正確に分析できず、ノウハウも蓄積しません。
工場全体の“品質文化”の向上、および設計上の根本対策(部材・梱包・構造強度計算等)へのフィードバックが滞り、他社との競争でジリジリと劣後してしまうリスクが生じます。
現場目線で考える輸送用振動試験の「本当のノウハウ」
“カタログ通り”のスペック検証だけではNG
大手メーカーでは、JISやIEC等、各種の“規格試験”メニューが用意されています。
一見するとこれだけで十分と思いがちですが、実際の輸送環境は各現場・路線・物流会社ごとに異なります。
現場で重視したいポイントは、「製品がどの工程でどんな輸送ストレスに晒されるのか」「実際にどんな振動波形や衝撃レベルが発生しているか」をセンシングし、それを“現実に即して再現する”ことです。
“抜き取りチェック”から“継続的な確認”へ
昭和的なやり方では「初期ロットだけ一回試験すればOK」と思いがちですが、ロットごとの材料ばらつきや梱包・パレットワークの人的ミスを考えると、定期的なモニタリングや、バイヤーとの情報共有が不可欠です。
また、市場の声や輸送ルートの変更が発覚した場合には、速やかに追加試験を行い、フィードバックループを回すことでリスク低減に直結します。
デジタル技術の有効活用が鍵
IoTセンサーやデータロガーの低価格化により、最近では実際の輸送ルートに振動・衝撃計測デバイスを同梱し、実地データを吸い上げる運用が急速に広がっています。
過去には「感覚」や「経験則」に頼っていた現場も、実測データによる科学的解析を武器に、“本当に対策すべき箇所”を特定できるようになりました。
これは、生産工程や設計段階にも直結する極めて重要な進化です。
バイヤー・サプライヤー両者の視点で考える振動試験の意義
“バイヤーから見た理想のサプライヤー”とは
バイヤーにとって「輸送中の品質リスク」に鈍感なサプライヤーは、致命的なパートナーシップリスクを孕んでいます。
逆に、輸送工程まで見据えた品質保証体制を整え、科学的なエビデンスに基づく改善提案ができるサプライヤーは「頼りになる」と評価され、長期的な信頼関係構築に繋がります。
サプライヤーが“バイヤーの本音”を知る意義
多くの“日本型製造業”では、出荷した時点で品質保証が完了しているという意識が強いですが、実際のバイヤーは「最終顧客に届くまで」「施工現場で正常動作するまで」が本当の品質保証範囲と考えています。
これに気づき、前出のような輸送振動試験・現場フィードバックを積極的に実施することで、真にバイヤーの要求を超えるサービスが実現できます。
アナログ業界こそ求められるデジタルシフト
“昭和から抜け出せない”体質をどう変えていくか。
これが、いま多くの製造企業の新たな課題となっています。
振動・衝撃・輸送リスクは、これまで経験則と熟練者の“勘”に頼ってきた領域ですが、“データ”による可視化・再現試験・設計フィードバックを積極的に導入する企業が、実は国内・海外問わず急増しています。
特に新興国輸送や、長距離インターモーダル輸送などの拡大期には、アナログ的な“なんとなくこれで大丈夫”が命取りになるリスクが飛躍的に増えます。
いまこそ、アナログとデジタルの融合を加速すべきタイミングです。
まとめ:後悔しないための“一歩”を踏み出そう
現場感覚だけでは見過ごしがちな「輸送中の振動試験」。
これを軽視した結果、想像以上のトラブル・コスト・信頼の損失を被る企業を、筆者は数多く見てきました。
しかし逆に、輸送プロセスにまできめ細かく目を配り、積極的にデータを活用し、品質保証体制を磨き上げた組織は、バイヤー・ユーザーから選ばれ続けています。
製造業の現場で働く皆さん、そしてバイヤーやサプライヤー双方の皆さん――。
“今さら言えない”“うちの業界には不要”という感覚を捨て、まずは小さな振動試験からでも始めてみませんか?
輸送という「見えない敵」を制す者が、これからのものづくりDX時代の覇者となることは間違いありません。
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