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改善活動が人によって品質差を生む逆効果

目次
改善活動が人によって品質差を生む逆効果とは
はじめに:なぜ今「改善活動」が見直されているのか
製造業において「改善活動」は永遠のテーマです。
納期短縮やコストダウン、不良削減を目指し、カイゼン活動は1970年代から現場に根付いてきました。
しかし、生産現場では今なお「アナログな改善活動」が主力で、担当者や部署によってその成否や効果に大きな差が生まれているのが現状です。
現場経験を重ねてきた立場から見れば、それが「品質のバラツキ」という形で顕在化する逆効果を生み出す場合も少なくありません。
本記事では、なぜ改善活動が仇となり品質差を広げてしまうのか、背景や実態、そして昭和的な手法の限界を深掘りしつつ、未来に向けた解決策も提示します。
現場で現れる「改善の逆効果」とは何か
担当者の裁量が品質差を生む
製造の現場では、「現場主導の改善活動」が当たり前のように進行しています。
しかし、その実態は担当者や管理者の経験値や価値観に大きく左右され、「○○さん流のやり方」「ベテラン頼み」が常態化しています。
改善の目的や追求の深さも人によってまちまちで、指摘や異議を唱えにくい風土が温存されてしまうことで、実際には手順の曖昧化や個人依存が増大します。
このようなアプローチは、一見現場が自主的で活性化しているように見えますが、標準化されない運用が持ち込まれることで、同じ工程でも担当する人によってパフォーマンスや品質に摩擦が発生してしまいます。
バイヤー・サプライヤー双方に拡大するリスク
たとえば、同じ図面・同じ部品仕様であっても、A社はスムーズに調達できるのにB社では度重なる不具合が出る、といった事象はよく知られています。
その背景には「現場の改善ノウハウの属人化」「人による解釈の差」などが潜んでいます。
バイヤーの立場から見れば、安定した品質・納期を求めているにも関わらず、サプライヤーの現場ごとに納入部品のバラツキが生じてしまうのです。
これが“見えないコスト”やトラブルの温床となり、サプライヤーから見ても「納得いかないクレーム」につながるといった悪循環を発生させます。
なぜ「属人化」した改善が起こるのか
昭和的現場文化の背景と現代とのギャップ
こうした属人化問題の根底には、「技能伝承」「OJTに頼る」「観察力・カン・コツを重視」といった昭和的な現場文化が色濃く残っています。
多くの製造現場は「きちんと指示しなくてもベテランが雰囲気でカバーする」ことを美徳とし、マニュアルや標準化による均質化を二の次にしてきました。
一方で、現場に新規入社者が増えたり、グローバル調達先が拡がったりする現代では、この「阿吽の呼吸的アプローチ」が裏目に出ます。
デジタルで示せず全体システム化も不十分なまま、多様な現場流の改善活動が乱立する…。
結果として、工程医療(かこう)ではなく“個人医療(こじん)”に近い状態となり、属人性が強まるのです。
評価・人事制度が改善のバラツキを助長
また、多くの現場では「改善活動が重要」とされている割には、その成果が定量的・客観的に評価されません。
現場に任せきりにすることで「やったフリ改善」も横行しがちです。
場合によっては、担当者のモチベーションや得意不得意に依存してしまい、「本当の課題解決」より「見栄えの良いアクション」に注力する風潮も根強く残っています。
こうした環境では、真摯な改善が続く現場と、帳尻合わせの改善文化が蔓延する現場との品質差が生まれやすいのです。
「逆効果」をなくし品質を均一化するためには
全体最適視点での「標準化」の徹底
この誤った“改善礼賛”から脱却し、属人差による品質の乱れを最小限に抑えるには「標準化」と「全体最適」の徹底が不可欠です。
属人ノウハウが横行しやすい場合でも、客観的な「標準作業書」や「ジョブインストラクション」を現場共通言語として定め、改善前後の効果を定量評価できる体制が望まれます。
ここでは、業務手順だけでなく、「なぜその改善が必要か」「代替案との比較」「想定されるリスク」など、ラテラルシンキングを通じて多角的な視点を取り入れることが重要です。
デジタル技術の活用で個人依存を減らす
また、昨今ではIoTやAIを駆使した「スマートファクトリー化」も進行しています。
作業工程や設備状態をリアルタイムに可視化し、PDCAサイクルをデジタルで回すことで、現場ノウハウの属人化を回避することが可能になります。
たとえば、改善前後での品質データ蓄積や、人の作業習熟度までデータ化することで、属人性によるバラツキを「見える化」できます。
これにより、「失敗や成功」を一部担当者の体験談ではなく、組織資産として全体で活用できる素地が生まれます。
現場の意識改革とコミュニケーション活性化
ただし、システムの導入や標準化推進には「現場の納得と巻き込み」も不可欠です。
これまでの属人的な改善小集団活動を否定するのではなく、「なぜ共通化が必要なのか」「CHANCE・CHANGE・CHALLENGE(変化の好機と挑戦)」という視点を現場リーダー自身が持つことが重要となります。
バイヤー、サプライヤー、調達部門、品質管理、製造現場すべてが「品質均一化は全員のテーマ」と考え、同じゴールに向けて意見を交わす組織文化を育てることが、結果的には逆効果を最小化する道となるでしょう。
まとめ:「人まかせカイゼン」から脱却するために
品質に差が出る真の原因は、「担当者まかせ」「現場主義」に隠された属人化・標準化不足の構造問題です。
昭和からの成功体験に囚われ、日本のものづくりが抱える”人による品質バラツキ”を放置していては、調達先の多様化やグローバル競争の波に遅れをとるだけです。
逆効果を生み出さないためには、一人ひとりの工夫や努力を「標準」と「全体最適」に昇華させ、現場データに基づく科学的なアプローチへシフトすること。
バイヤー・サプライヤー双方の信頼を生み出し、製造業全体の底力を底上げするカギとなります。
今こそ「改善活動」そのものの本質を見直し、ラテラルシンキング(水平思考)でもって新たな地平を切り拓くタイミングです。
現場の“人”に依存したカイゼンから、仕組みで全員が勝てる”みんなのカイゼン”へ、一歩踏み出していきましょう。
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