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設計者のクセが図面の癖となり他者が読み取りにくくなる組織的属人化

目次
はじめに:設計図面に表れる“設計者のクセ”とは?
製造業の現場において、設計図面は製品開発や生産の根幹をなす重要な情報伝達手段です。
ものづくりの第一歩であり、現場や調達・購買、生産管理、品質管理など多くの部門が同じ図面を参照し、製品を完成へと導きます。
しかし、いくら標準化ルールが存在しても、設計者一人ひとりの“クセ”が実際の図面に深く刻み込まれてしまう現象は、今なお多くの製造現場で後を絶ちません。
この“設計者のクセ”が図面に色濃く出る現状は、業界のアナログな側面が息づいている証拠ともいえるでしょう。
ここでは、設計者のクセがなぜ起こるのか。
なぜそれが属人化につながり、組織的課題となるのか。
その背景、課題、解決への糸口を現場・管理職の視点も交えて掘り下げていきます。
図面に現れる設計者のクセ:実例から紐解く
設計者のクセ、というと抽象的に聞こえるかもしれませんが、実際には以下のような現象として現れます。
独自の記号や寸法表現の使い方
例えば、寸法の並べ方に個人差が現れることがあります。
「一般的にはこの方向だろう」というレイアウトが、ある設計者だけ異なっていたり、既存の公的規格にはない独特な補足メモが混在していたりします。
また、公差指示に設計者独自の略記号を勝手に使ってしまうことで、他のメンバーが戸惑うケースもあります。
細かすぎる、あるいは省略しすぎる注記
過去の品質トラブル経験から、念には念を入れて注記を無数に追加したり、逆に「これくらい分かるだろう」と注記を抜かしすぎたりする設計者もいます。
このような図面は、現場やサプライヤーによる正確な理解を妨げる火種となります。
モデリングやデータ構造の傾向
最近は3D CADデータが普及していますが、モデリング手法にも個人差が表れています。
ツリー構造やレイヤー名、ファイルの管理体制も設計者ごとにばらばら、属人化が進みやすいポイントです。
なぜ設計者のクセ・属人化は生まれるのか
“昭和文化”のなごりと手作業志向
製造業の現場、特に長い歴史を持つ企業では、“設計は設計者のセンスだ”“ベテランの引き出しに頼る”という昭和型の現場文化が色濃く残っています。
そのため個人のやり方が暗黙のルール化してしまい、設計標準が形骸化しがちです。
標準化活動の停滞とリソース不足
現場が多忙を極める中で、設計図面の表記標準化や属人化解消のために時間と手間を割く余裕がないことも、その一因です。
標準化プロジェクトは“重要だが緊急度が相対的に下がる”ため、後回しにされる傾向が強いです。
属人化による“仕事の奪い合い”心理
技術的ノウハウをドキュメント化すること=自分の仕事が盗まれる・評価されにくくなる、という心理的な抵抗感も根強くあります。
自分だけのやり方を守ることで、社内での自分の存在価値を維持しようとするベテラン設計者も少なくありません。
属人化がもたらす現場の混乱とリスク
サプライヤーとの意思疎通トラブル
サプライヤー(部品メーカー、外注先)が図面を受け取った際、設計者特有の表記や注記に戸惑い、意図と思わぬ別解釈をしてしまうことは日常茶飯事です。
この段階でのコミュニケーションロスが、不具合やリードタイム遅延の要因となります。
バイヤーの仕事も非効率に
調達・購買担当者は、図面が分かりにくいと見積もり依頼や質疑応答に余計な工数がかかります。
また、複数社のサプライヤーから共通認識を得ることが非常に困難になり、イレギュラー対応が増え、標準化の恩恵が受けられなくなります。
引き継ぎ・組織知継承の障害
設計者が退職、異動した瞬間に「この図面は●●さんしか分からない」状態が頻発し、組織としての生産性や競争力を大きく損なう事態に陥ります。
特に2025年問題(団塊世代大量退職)時代には、深刻な属人化リスクとなります。
「設計者のクセ」解消のための現場アプローチ
社内標準ルールの徹底的な見直し
まずは設計標準そのものを、実態に則して柔軟に見直すことが第一歩です。
設計現場のベテラン、有識者、製造、品質、調達部門の意見を織り交ぜ、“本当に現場で機能するルール”の策定が重要です。
標準書・スタイルガイドを現場で分かりやすく改訂し、デジタル共有も推奨します。
設計レビューとクロスチェックの習慣化
図面完成後に「他の設計者・現場担当による第三者チェック」の機会を組織的に設けましょう。
独りよがりな設計・注記・書式がないかを洗い出し、組織的な知識継承や若手育成にもつなげます。
レビュー項目として、「業界標準に即しているか」「注記不足はないか」「他人が見て分かるか」などを明文化すると良いでしょう。
設計お役立ちデータベースの構築
図面上で頻出する表現や注意事項、過去の失敗事例(NG集含む)を“技術wiki”やナレッジ集として社内で共有します。
属人化を仕組みでなくす「ナレッジプラットフォーム」を構築・定期更新することで、多様な設計者同士の知識ギャップを解消できます。
サプライヤー目線のフィードバック導線を活用
調達・生産、サプライヤー担当者から「分かりにくかった図面」や「不明瞭な注記」を積極的にフィードバックしてもらう体制を作りましょう。
バイヤー・サプライヤーの現場目線には属人化を可視化するヒントが無数にあります。
設計DX推進と3Dデータ活用
図面そのものも、「紙からデータ」へのDX推進が求められています。
3D CADによるビジュアル情報伝達やデータ一元管理の仕組みを整えることで、属人化を低減し、技術継承の負荷も減らすことが可能です。
業界動向:アナログからの脱却、標準化進展の兆し
近年、グローバル化の進展や働き方改革により、企業単位での標準化・属人化解消の取り組みが加速しています。
国際規格・共通デジタルフォーマットへのシフト
ISOやJISなどの国際的設計規格や、3D PDF、STEPなどデジタル図面の共通フォーマットの運用が進行中です。
これにより、「自社だけで理解できる図面」から「誰が見ても分かる設計情報」へ進化する潮流が生まれています。
調達・設計一体型プロセスの登場
設計段階で調達部門と一緒に「第三者目線」で図面や仕様を落とし込む動きが広がっています。
バイヤーが単に価格交渉するのではなく、設計仕様の明確化やサプライヤーとの共創プロセス設計を推進しています。
属人化解消が製造業にもたらす未来
設計者のクセを脱し組織的な標準化を実現すれば、次のような効果が期待できます。
- サプライヤーや現場に対する伝達精度向上・トラブル大幅減少
- バイヤーの見積もり、発注、工程管理など調達活動の効率化
- ベテランから若手へのスムーズな知識・スキル継承
- 設計・調達組織全体の生産性・競争力強化
属人化に伴うムダな摩擦や手戻りを解消することは、ミスや品質トラブルの低減だけでなく、従業員満足度やイノベーション創出にもつながる大きな一歩です。
まとめ:設計者のクセ、組織的属人化から脱却しよう
「設計者のクセ」による組織的属人化は、昭和時代から延々と続く製造業の宿痾とも言える課題です。
しかし、現場の知恵と工夫、デジタル技術の進展、現場を跨いだコミュニケーションによって必ず乗り越えられる壁でもあります。
ものづくりの未来を担う皆さん、今こそ現場目線で“自分のやり方”を見直し、“皆がつながる図面文化”を根付かせましょう。
製造業の真の進化は、属人化の解消から始まります。
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