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品質基準が厳しすぎると言われるが実は過去の事故が基準を決めている現実

目次
はじめに:品質基準が厳しい、その本当の理由
日本の製造業において「品質基準が厳しすぎる」という声は、現場からもサプライヤーからもよく上がります。
特に、昭和の高度成長期から続く伝統的な製造現場では「ここまでやる必要が本当にあるのか」と疑問視されることしばしばです。
しかし、その基準の多くは過去に起きた痛ましい事故や不具合の教訓から生まれていることをご存じでしょうか。
この記事では、なぜ品質基準が厳格になったのか、その根底にある歴史と、実務で役立つ現場目線の考え方を解説します。
また、今後の調達購買や品質管理において活かせる「本質的な基準の意味」について掘り下げていきます。
なぜ品質基準が厳しいのか?~歴史から学ぶ製造業の安全意識~
昭和から続く“事故の連鎖”を断ち切るための努力
昭和の日本は、世界に誇るモノづくり大国として急成長を遂げました。
その裏には、度重なる製品事故や品質トラブルが数多く存在します。
例えば、自動車産業ではリコール隠しやブレーキ不良など命に関わる重大事故が発生し、社会問題となりました。
また、家電業界では設計ミスによる発火事故がたびたびニュースを賑わせました。
これらの痛ましい事故は「もう二度と起こしてはならない」という強い教訓となり、品質基準の厳格化に直結しています。
一度でも人命や社会的信用を失えば、企業活動そのものが立ち行かなくなるという危機感が、“やりすぎ”とも言われる現在の品質基準を形作ったのです。
実際の基準策定は“過去の不具合リスト”から始まる
現場で要求される品質基準は、JISやISOなど規格の条文そのものというよりも、各メーカーの「過去に失敗した事例、指摘されたクレーム」を基に紡がれます。
例えば「この寸法公差は±0.05mm以内でなければならない」という厳格な基準には、過去に0.1mmの誤差によって部品が組み付かなかった、機能に重大な支障をきたした等、必ず何らかの“事件”の裏付けがあります。
現場の品質技術者や生産管理担当は、「なぜここまで厳しいのか?」と疑問を抱いたとき、数十年前まで遡って事故記録やクレーム情報を精査しています。
それほどまでに、過去の事故や不良の歴史が、今の“厳しすぎる”品質基準を決定しているのです。
現場目線で考える「基準」と「現実」のギャップ
“ムダな責め”に見える基準も、実は意味がある
多くの現場作業員やサプライヤーは「本当にここまで必要なのか」「コストに合わない」と感じることも多いでしょう。
たとえば、年に一度しか起きない不良を撲滅するために、毎月高額な測定機や外注検査を導入するケースも珍しくありません。
一見すると過剰品質で不要なコストと感じますが、「たとえ1回でも重大事故に発展する可能性があるならば、コストより命と信用を優先する」という判断が根底にあります。
実際、私が現場責任者を務めていた時も、「過去の不良発生時にどれだけ会社全体が苦労したか、その反省を忘れるな」と幾度となく先輩や上司に言い聞かされてきました。
現場は“想像のリスク”より“経験した苦労”を重く見るのです。
バイヤー・サプライヤー双方に必要な“歴史”の理解
最新鋭の工場やITフル装備の現場でも、この「基準の裏にある歴史」まで理解せずに業務を進めると、調達・購買では必ず壁にぶつかります。
例えば、価格交渉や納期短縮を持ち掛けられたサプライヤーが「この品質管理はやり過ぎでは?」と疑問を呈したとき、現場のバイヤーが「なぜ必要か説明できない」と信頼を失うことがあります。
逆に、サプライヤーが過去の失敗例や業界事故をリサーチして、「御社の品質基準の裏には過去の実績があるんですね。ならばどこまで緩和できるか、一緒に検証しませんか?」という提案ができれば、協力的な関係も築きやすくなるのです。
単なるスペックや仕様だけでなく、“なぜその基準があるのか”を掘り下げる姿勢が、今後の製造業には欠かせません。
昭和体質の「アナログ重視」と“時代遅れ”の誤解
アナログ管理のメリットと、今なお根付く理由
令和の今日でも、多くの工場現場は手書き管理や目視検査といったアナログな手法を多数残しています。
一見、非効率で時代遅れに思えますが、こうした方法は「過去の重大事故を“見逃さないための最後の砦”」でもあります。
例えば、高度なAIによるカメラ検査でも、人間が直感的に異変を感じた経験や肌感覚に勝るものはありません。
異常を感じた作業者がラインを停止し、即座に現場責任者が駆けつけて不良原因を究明する――こうした“人”による品質保証が、事故ゼロを目指す日本の製造業現場に根強く残る理由です。
デジタル化で覆せない“人間の知見”
もちろん現代の製造現場ではIoTやビッグデータによる自動監視、AIによるトレンド分析も急速に普及しています。
しかし、数値やログだけでは検知できない“グレーゾーンの不良”や“機械の気まぐれな異常”には、人間の気づきや経験が不可欠です。
つまり、昭和のアナログ現場で培った品質へのこだわり、独特の現場力がいまだ健在であることも、品質基準の厳しさを支えているのです。
バイヤー・サプライヤーが知るべき「品質基準の本質」
単なる“厳しさ”ではない、「守るべきもの」とは?
品質基準は決して現場や下請けを「苦しめるための足かせ」ではありません。
本質は、過去に起きてしまった「本当に悲しい出来事」を二度と繰り返さないための“誓い”でもあります。
だからこそ、現場の苦労に寄り添いながらも、バイヤーもサプライヤーも「本当に守るべきもの=安全・信用・持続性」と向き合っていくことが最重要です。
これを理解したうえで、たとえば「最新の技術で同等の品質が確保できる」「測定方法を見直しても基準が守られる」という代替提案やコスト改善提案での協働は、とても有益です。
単に基準を緩和してコストダウンを図るのではなく、「本質的なリスクを管理しながら最適解を見つける」ことが、強い信頼とパートナーシップを育みます。
基準を“ゼロリセット”してはいけない
時折「こんな時代遅れの基準は捨てて、ゼロベースで構築しよう」という声も聞かれますが、これは大きな落とし穴です。
なぜなら、“事故やクレームの履歴を無視して基準を再設計”してしまうと、歴史がまた繰り返されるからです。
これを防ぐためには、過去の全記録や“起きた時の苦しみ”に学びつつ、現代のテクノロジーや現場力も活用し、段階的に新しい基準へとブラッシュアップしていく必要があります。
まとめ:厳しい品質基準は「未来への安全投資」
日本の製造業が誇る厳しい品質基準は、決して“保守的な精神論”や“ムダな儀式”から生まれたものではありません。
過去の痛ましい事故やクレームの「反省」と「学び」が、今も確実に息づいています。
その厳しさこそが、日本製造業が世界に誇る“安全・安心・信頼”の土台なのです。
本記事を読んだ皆さんが、品質基準の裏にある「歴史と本質」に目を向け、現場や調達購買の業務を新しい視点で捉えていただければ幸いです。
品質基準の持つ意味や必要性を正しく理解し、現場目線を持ったプロとして、未来の製造業を一緒に築いていきましょう。
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