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調達人材の不足で属人スキルが組織のボトルネックになる現実

目次
はじめに
近年、製造業における「調達人材」の不足が組織全体のボトルネックとなりつつあります。
特に、調達という業務は仕入先選定や価格交渉、納期管理、品質保証など、専門性と現場感覚の両方を問われる分野です。
この分野では、経験や人脈に裏打ちされた属人的なスキルが幅広く活用されてきました。
しかし、働き方改革やデジタル化の波、さらには世代交代の進展により、属人化の弊害が顕在化しつつあります。
本記事では、製造業現場で20年以上の調達・生産管理経験をもとに、現場目線を大切にしながら、調達人材不足の本質と属人スキルがボトルネックになる現実、そして未来を切り開く処方箋を提案します。
なぜ今、調達人材が不足しているのか
1. 現場力依存と属人化の歴史
日本のものづくりは、「現場力」で支えられてきました。
調達も例外ではなく、その時々の技術背景や商習慣に応じて、個人の経験値を最大限に活かす文化が根強く残っています。
仕入れ先ごとの価格交渉術、社内・社外の調整ノウハウ、暗黙知ともいえる独自のネットワーク——こうしたノウハウはマニュアル化できず、ベテランだからこそ成せる技でした。
この属人スキルへの依存が、調達部門のリスクを高めているのです。
2. 少子高齢化と人材流動化の加速
日本の労働人口は減少しています。
逆に産業構造は多様化し、若手人材が製造業に魅力を感じづらい構図が浮き彫りになっています。
また、ひと昔前と違い「1社でずっと」というキャリアモデルは崩れつつあり、人材確保自体が難しくなっています。
その中で、属人化された業務を継承する後継者探しは、ますます困難を極めています。
3. デジタル化と現場実態とのギャップ
IoTやAI、サプライチェーンマネジメント(SCM)のシステム化が叫ばれて久しいですが、調達部門の現場では、昭和から続く「電話・FAX・紙ベース」でのやり取りが根強く残っています。
一部の人が特定のツールや業者との関係性に依存したまま、DXが進まない現場も少なくありません。
このギャップが、調達業務全体の効率化を阻み、人材不足の影響を増幅させているのが現状です。
属人スキルが組織を阻む本当の理由
1. ナレッジの「見える化」不足
長年調達業務に従事したベテランが持つ属人スキルは、一朝一夕で身につくものではありません。
例えば、不具合発生時の現場対応や、海外サプライヤーとのコミュニケーション、長期に渡る価格交渉など、非定型業務が多いのが特徴です。
マニュアルやシステムに落とし込まれない知恵やコツが引き継がれず、「あの人が辞めたら分からなくなる」属人リスクは常に現場を脅かします。
2. 新陳代謝の停滞とイノベーション阻害
属人スキルへの過度な依存は、業務の新陳代謝を停滞させます。
若手や新任バイヤーが新しい手法・デジタルツールを導入しようとすると、「前からこうだった」「これが一番効率的」と属人スキルが壁になります。
結果として現場改善や業務効率化が進まず、業界全体のイノベーションを阻害する温床となっているのです。
3. サプライヤーとの関係性バイアス
特定バイヤーと仕入れ先の長年の付き合いに依存することで、公平な価格交渉やサプライヤー評価ができなくなります。
その結果、他にもっと競争力のあるサプライヤーが現れても、属人スキルが障壁となり見逃してしまうことも。
組織的な調達改革を進めるうえで、見過ごせない問題です。
脱属人化へのステップと現場視点の改善策
1. ノウハウ・暗黙知の見える化と共有
「誰かしか分からない」「この案件はあの人にしか任せられない」という状態を打破するためには、属人的ナレッジの体系化が不可欠です。
具体的には、調達業務プロセスを洗い出し、要点ごとにマニュアルやワークフローを作成します。
例えば、価格交渉の進め方、リスク発生時の対応フロー、仕入先とのミーティング議事録のデジタル化など。
クラウドツールやチャットツール、ナレッジ共有システムを部分的にでも導入し、日々のやり取りを積極的に記録します。
この積み重ねが長期的には若手育成、ひいては部門のレベルアップに不可欠です。
2. 標準化と自動化の推進
調達業務は本来、QCD(品質・コスト・納期)のバランス追求が肝です。
ルーティン化できる作業はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やEDI(電子データ交換)などに思い切って委譲します。
例えば、見積依頼や発注書発行、納期フォローなど定型業務は自動化できます。
そうすることで、中核人材はサプライヤー開拓や価格交渉といった価値の高い業務に集中でき、組織の生産性が底上げされます。
3. サプライヤー選定基準の再構築
属人的関係だけに頼らない仕入れ先評価システムを作り、透明性を持たせることが重要です。
品質・コスト・納期などの観点ごとに、評価指標や点数化ルールを取り入れます。
新規仕入れ先の調査や、公平な競争機会の設定もポイントです。
属人スキルだけに依存しない、組織としての調達力を高めましょう。
4. 現場を知るデジタル人材の育成
「現場を知らないデジタル推進」は現場とかみ合わず失敗する事例を多く見てきました。
製造業の調達現場には工程管理・物流・品質保証など専門用語や独自の文化があります。
デジタル人材を育成するには、現場研修やOJT、部門横断プロジェクトを活用し、まず“現場”を理解してもらうことが大切です。
一朝一夕で属人スキルを置き換えることはできませんが、「見える化」による知識の相互共有が新たな調達人材を生み出します。
製造業バイヤー、サプライヤー双方の立場から考える未来
バイヤーが身につけるべき新しいスキルセット
これからの調達人材は、従来の調整力や交渉力に加え、デジタルスキルやリスクマネジメント力も不可欠です。
多様化するサプライチェーンに柔軟に対応し、時にはグローバル規模での仕入れ先開拓や、新たな協業関係の構築も求められます。
属人的スキルに安住せず、「変化を楽しむマインドセット」こそバイヤーの未来を切り拓くカギとなります。
サプライヤーが知っておくべきバイヤーの本音
サプライヤーの立場としては、価格や納期だけでなく「トータルバリュー」で評価される時代が到来しています。
創造的な提案力や災害対応力、グローバルな調達網を持つこと、そして自社の情報や強みを「分かりやすく可視化」して伝えることが大切です。
属人的な関係だけに頼る時代は終わり、組織対組織でWin-Winを実現する協働が求められます。
まとめ:属人スキルの「活用」と「脱却」のバランスを
調達人材の不足は今や業界全体の共通課題です。
現場で磨かれた属人スキルは製造業の競争力そのものですが、もしそれが組織のボトルネックとなるなら、見える化・標準化・デジタルシフトが不可欠です。
大切なのは、「人」による現場力と、「組織」としての仕組み力を両立させること。
属人スキルの長所を活かし、かつ属人依存からの脱却を進めることで、日本の製造業は新たな未来を切り拓けると信じています。
現場の知恵とデジタルの力を融合させ、世代を超えて愛されるものづくりを共に目指しましょう。
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