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詳細設計より資料作成の工数がはるかに大きいという本音

目次
はじめに:製造業現場に根強く残る“資料作成高負荷”の実態
製造業の現場で「設計」と聞けば、多くの方が図面や仕様を考えるクリエイティブな作業をイメージするかもしれません。
しかし、実際の現場では、『詳細設計』それ自体よりも、むしろその後に待つ膨大な資料作成や社内外確認のプロセスが、技術者や調達担当者の時間と心を大きく消耗させています。
これは、まだまだ昭和時代からのアナログな慣習が根強く残り、デジタル化や効率化の波に乗りきれていない日本の製造業ならではの課題でもあります。
本記事では、長年にわたり現場でさまざまな“資料作成地獄”を経験した立場から、なぜ詳細設計以上に資料作成が工数を食うのか、企業の発展を阻害するこのアナログ慣習の実態を明らかにします。
そして、今後の製造業に不可欠な「真の効率化」と、それを実現するための現場視点からのアプローチを、ラテラルシンキングの観点も交えつつご提案します。
なぜ「設計」より「資料作成」が重たいのか?本当の現場工数
設計完了=終わり、ではない現実
現場で設計者や技術担当、調達部門が腰を抜かすのは、「設計さえ終われば一息つける」という思い込みが幻想に過ぎないことを、新人時代に痛感する瞬間です。
詳細設計の作業そのものは、たしかに技術力と想像力が求められます。
しかし現実には、設計資料・構成表・品質文書・工程フロー・QC工程表・各種承認書類・サプライヤー向け仕様資料――これら『設計を裏付ける資料作成』にこそ、莫大な工数と確認作業のループが発生します。
“とりあえず資料”要求の沼
多くの現場で見られるのが、「念のため」「万が一」「後で揉めないように」といった不安から、形式重視・保身目的の資料要求ばかりが増え、実態以上の書類を作り続ける姿です。
しかも、各部門ごとにフォーマットや要件が微妙に異なるため、同じ内容をコピペ・改変して幾度も作り直すことが日常となっています。
たとえば、調達部門はサプライヤー管理のために追加の工程管理資料を、品質部門は過去トラブル回避のための詳細な検証資料を要求。
時には「根拠を示すため」「説明責任のため」など追加でA3一枚のダイジェスト版まで。
こうして、詳細設計一つあたりに20~30もの資料パッケージを用意する、という現場も珍しくありません。
この“とりあえず出せる資料”地獄こそが、設計工数そのものよりも大きな労力と、非本質的なストレスを生み出しているのです。
デジタル時代に、なぜ資料作成は効率化できないのか?
アナログ業界特有の「変化への抵抗感」
日本の製造業がIT化・デジタル化を推進する流れの中で、資料作成が未だにアナログ作業から脱却しきれない最大の理由は、現場に根強い“変化への抵抗感”に他なりません。
「今までこれでやってきたから」「データだけでは信頼できない」「紙一式がないと不安」――こうした心理が、効率化を阻み続けています。
また、各種システムを比較検討しても「うちの業務フローには合わない」「例外処理が多すぎる」といった現場特有のカスタマイズ要求が止まらず、最終的に“部分的なデジタル化”止まりになりがちなのです。
部門横断の合意形成が難しい“日本型縦割り”構造
もう一つの大きな壁は、部門間でフォーマットやデータベースの統一が進みにくい日本型組織構造です。
「うちの部門にはこの様式が必要」「この項目も追加したい」と、サプライヤーや調整部門ごとに個別仕様が乱立。
本来は一元管理できるはずの情報も、Excel・Word・PDFといった“ばらばら資料”でやりとりされ、“最適化されたプロセス”にはほど遠い現状になっています。
資料作成に悩む現場のリアルな声・事例
工場長や現場リーダーの立場から、日々現場で聞かれる生の声をいくつかご紹介します。
設計者Aさんの声
「詳細設計そのものは、集中して2~3日でカタがつくのに、そのあと関連資料作りや各所説明、承認取りに倍以上の時間を取られる。正直、本来の仕事=設計なのに、資料作成に潰されている感覚です。」
調達担当Bさんの声
「設備や部品を発注する時も、設計から上がってきた情報が不十分で追加資料作りを依頼したら、それで何日もお互い時間をロス。結果的に納期がどんどん後ろ倒しになる悪循環に。」
サプライヤーC社の声
「バイヤーさんから毎回違う様式や、独自項目指定で追加入力を求められる。わざわざ元資料に赤入れしてPDF化し直し、同じような資料に何度も時間を割くムダが多い。」
これらの声に共通するのは、「設計以外の本質的でない作業」に多くの工数を奪われているという実感です。
“昭和”から抜け出せない業界構造の功罪
アナログ慣習が育んだ“守り”の文化
日本の製造業が世界に誇った“ジャストインタイム”や“カイゼン”の精神は、一定の厳格さ・丁寧さが重要だからこそ育まれました。
しかしその裏面には、さまざまな部門が少しでもリスクを減らすために証拠資料を積み上げ、抜け漏れがあれば「なぜ証拠がなかったのか」と重箱の隅まで問われる文化が根付きやすい構造が潜んでいました。
その結果、ときに“作ること自体が目的化した資料”――仕事のための仕事――に、多くの現場が埋没してしまっているのです。
資料作成は「だれのため」「なんのため」なのか?
ラテラルシンキング的に考えてみましょう。
資料は本来「他者にわかりやすく伝える」「意思決定のための裏付け情報を示す」ために存在します。
一方で、“出すこと自体が目的化した資料”“確認されたことがないまま保管されるファイルの山”が大量に生まれています。
目的と手段が逆転し、「とりあえず資料を増やし続けること」に現場は忙殺されている――これが現実です。
これからの製造業に必要な「資料作成効率化」のアプローチ
本質的な情報設計・“やらない勇気”の見極め
極端な話、「本当に必要なのは何か?」を真剣に突き詰めることが第一歩です。
既存の資料群ひとつひとつについて“削るべき項目は削る”“新たな資料は最小限でよい”と、現場に近い立場から積極的に企画・見直しを行うことです。
管理職やリーダーこそ、「他人に不要な仕事を振っていないか?」「形骸化した資料が出回っていないか?」を日常的に点検する意識が求められます。
デジタル化・クラウド活用の実践的推進
クラウドベースの資料一元管理や、データベースとの連携でヒューマンエラーや多重入力のムダを徹底して排除することも重要な取り組みです。
たとえば、部門横断で参照できる設計データベース、進捗状況のリアルタイム可視化、承認フローの電子化など、業務プロセスそのものをデジタルに標準化していけば、資料作成工数は飛躍的に減らすことができます。
サプライヤー・バイヤー両輪の目線を持った“現場改革”
バイヤー側は「サプライヤーが本当に納得して業務に取り組める工数」を意識し、サプライヤー側も「最小限かつ的確な資料作成」で本質的な価値提案を強化する。
この双方の“目線交換”こそ、現場起点のイノベーションの鍵です。
事務的なやりとりを自動化・省力化するだけではなく、“誰でも同じ情報・同じ判断基準でやりとりできる”環境づくりが、質の高いパートナーシップを育てます。
まとめ:資料作成工数を“仕事の本質”に取り戻すべき時代
製造業の現場では、詳細設計よりもはるかに大きな工数が資料作成に費やされている――。
これは、“昭和のまま”のアナログ業界ゆえに根強い課題でもあります。
技術者が本来やるべき“ものづくり”に集中できる環境。
バイヤーとサプライヤーが余計なやりとりの手間・齟齬を減らし、本質的な価値提案・品質向上に時間を回せる現場。
このような“未来の製造業”を実現するためには、現場目線から徹底的にムダ資料を洗い出し、業務の本質に迫る効率化を断行する覚悟が必要です。
今こそ、資料作成という“見えざるコスト”から脱却し、製造業を根底から変える新たな地平線を、一緒に拓いていきましょう。