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開発者が市場環境を理解しておらず方向性を誤るケース

目次
はじめに:なぜ“開発者の市場認識”が重要なのか!?
製造業の現場では、日々新製品開発やコストダウン、品質向上といった課題に取り組んでいます。
特に、調達購買担当やサプライヤー、現場リーダーを経験してきた方なら、「せっかく作った新製品が全く売れなかった」「苦労してコストを下げた製品が実は市場では価値がなかった」といった事例を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
こうした失敗は、単なる開発手法や技術の不足によるものではありません。
むしろ、開発者自身が市場環境を十分に理解していないことが最大の原因です。
本記事では、開発者が「マーケットをどう捉えるべきか」「なぜ方向性を誤るのか」「どうしたら改善できるのか」について、現場のリアルな経験をもとに解説します。
現場事例:よくある“勘違い開発”と失敗要因
昭和的発想:「いいモノを作れば売れる」という罠
日本の製造業は“ものづくり大国”として、品質や技術で世界をリードしてきました。
しかし、「いいモノこそ正義」という昭和の価値観に捉われるあまり、市場ニーズとズレた製品開発を続けているケースも少なくありません。
たとえば、最新鋭の自動機を導入して生産性を高めた結果、製品のコストは劇的に下がったが、市場では同等品が既にもっと安価に流通していた…という失敗例は枚挙にいとまがありません。
この“勘違い”は、社内の論理(技術者の自負や経営層の願望)が、市場の声や統計分析よりも優先されたことが根本原因です。
バイヤーの視点:「何でこのスペック?」「なぜこの価格?」
私が調達担当として多くのサプライヤーとやりとりした際、最も戸惑ったのは「なぜその機能が必要なのか」という説明が曖昧な提案でした。
“こういうものができたから買ってほしい”という開発者の自己満足と、バイヤーが求める「トータルコストダウン」「安定供給」「グローバル基準適合」といった本質的な購買動機には、往々にしてギャップが生じています。
「技術と市場の乖離」は、コミュニケーション不足から生まれる典型的な問題です。
どうすれば“市場とズレた開発”を回避できるのか?
現場目線×マーケティング思考の重要性
開発部門と営業・調達部門を往来してきた経験から、一番大切なのは“現場視点とマーケティング的視点の融合”です。
現場のものづくり力・技術力をベースに、「市場が今、何を最も必要としているか」を徹底的に分析することが不可欠です。
調達・バイヤーを目指す方なら、「サプライヤーの技術提案が、自社の調達戦略や製品バリューチェーンにどのように貢献できるか?」というストーリー作りを意識しなければなりません。
サプライヤーにとっては、バイヤーの購買基準や業界トレンドを把握したうえで、「この仕様・このコスト感・この納期だから選ばれる」と言える提案が価値になります。
実践的メソッド1:バイヤー現場への“ヒアリング力”を磨く
開発者や技術部門が一歩現場に出て、バイヤーや川下ユーザーに率直な意見を聞く。
想像ではなくデータや現実の“困りごと”“選定基準”を集め、「そこに最大の技術資源を投入する」ことが、ニーズとのギャップを埋める第一歩です。
製造業の現場では、数字で語れる根拠(“今期どれだけコスト削減インパクトがあるか”など)を示せることが信頼と説得力につながります。
実践的メソッド2:昭和的開発会議から“ビジネス視点会議”へ転換
会議でも「どんな技術ができるか」から「市場でどんな価値になるか」「競争優位性をどう出すか」というビジネストークができる環境に変える必要があります。
その際、営業部門・調達部門・現場作業者のリアルな声を“毎週一件インプット”することをルール化すると、空中戦の議論が激減します。
業界動向:なぜ“アナログ的発想”が根強く残るのか
理由1:年功序列的人事と情報の縦割り文化
昭和的な製造業界には、経験年数や地位がものを言う“縦社会構造”がいまだ根強く残っています。
情報はセクションの壁で区切られ、営業・調達の“現場の声”が開発現場まで届きにくい。
これは日本だけでなく、海外進出型の現地工場でも見られる傾向です。
理由2:“変更はリスク”という保守的考え方
製造現場では“安定稼働・トラブルゼロ”が最重要視されます。
そのため、新しい市場ニーズや開発テーマが持ち込まれると、「そんな未経験領域には簡単に踏み込めない」「今の体制ではリソースが足りない」といった“守りの論理”が優先されやすい事情もあります。
それ自体は悪の根源ではありませんが、「現場の知恵を集約して攻める」回路がない会社は、市場変化についていけず、結果として“方向性の誤り”を繰り返します。
これからの製造業に必要なスキルとマインドチェンジ
サプライヤーもバイヤーも「市場対応型」人材に進化せよ
開発者・生産管理者・品質管理職・調達バイヤー…
どのポジションでも、これからは“現場で培った目利き”と“市場動向を見抜くセンス”の両立が求められます。
(例)材料サプライヤーであれば:
・「その機能が、なぜ今必要なのか?」
・「代替材との比較では何が優れているのか?」
・「納期や価格面でどのような差別化要素があるのか?」
を具体的に説明・PRできる人材であれば、バイヤーからの信頼獲得が早くなります。
川上・川下の境界を超える対話力
「ウチの技術はどこでも通用する」ではなく、「取引先のサプライチェーン上のどこで、どんな困りごとを解決しているのか?」を具体例で話せる開発者・営業担当が今後重宝されます。
そのために必要なのは“現場ヒアリング力”“異業種の市場観察力”“数値データでの効果証明”です。
デジタル変革×現場力の融合
先進的な現場では、IoTやAIによる生産最適化や予兆保全ツールの導入などを通じて、
「市場から得たデータをタイムリーに開発に反映」「サプライヤー選定にもデータドリブンで競争力を持たせる」といった仕組み化が進んでいます。
“アナログとデジタルの架け橋”になる人材像が理想です。
まとめ:現場と市場の“バイパス”が、企業の未来を拓く
最後にもう一度強調したいのは、「現場経験に裏打ちされた技術力」と「市場の声を聞き分ける感度」は、どちらも欠かせない時代だということです。
昭和的な“技術がすべて”の価値観から一歩踏み出し、現場とバイヤー、サプライヤーとアフターマーケット、川上と川下をつなぐ“バイパス”となる人材や思考回路が、今後の日本の製造業にとって最大の資産となります。
ぜひ、あなたの現場でも「本当に市場が求めていることは何か?」を一歩深く掘り下げるところから始めてみてください。
そして、技術と市場の新たな橋渡し役として、時代をリードする存在に成長していきましょう。