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庫内のムダ歩行が改善されない企業の思考停止

目次
はじめに——庫内のムダ歩行がなぜ無くならないのか
工場の現場に立っていると、現代でもなお致命的な「ムダ歩行」に悩んでいる企業が多いことを実感します。
どんなに5S活動や見える化を推進し、レイアウトを工夫しても、庫内でのムダな移動が一向に減らない。
この現象は、担当者個人や現場作業員の怠慢が原因ではありません。
多くの日本の製造業では、昭和から続く思考パターンや慣習が根強く残り、根本的な改革に二の足を踏んでしまっているのです。
本記事では、ムダ歩行を生み出す本質を掘り下げ、その改善の壁となる「思考停止」という業界特有の盲点と、そこから抜け出すための実践的アプローチについてプロの目線で解説します。
ムダ歩行の正体と現場に潜む「当たり前」という罠
工場内ムダ歩行の現状と「なぜなくならないか」
ムダ歩行とは、作業効率を高めるために本来であれば省くべき不必要な歩行・移動のことを指します。
一人一人の歩行距離は小さな差でも、一日、一ヶ月と積み重なることで想像以上の工数ロスになります。
実際、「ムダ歩行ゼロ」に向けてレイアウト変更や台車導入を繰り返しても改善効果は一時的で、数ヶ月後には元の木阿弥になってしまうケースが後を絶ちません。
これには根深い原因があります。
「うちのやり方」が生む思考停止
現場では「昔からこのやり方だ」「みんなこれでやってきた」という根拠のない安心感が根付いています。
たとえば、最短ルートで部品を取りに行ける仕様が整っていても、「あの道は通っちゃいけない」とか「一度棚を見に行ってから上司に報告」といった昭和的ルールが残っている現場も珍しくありません。
こうしたルールの多くは現代にそぐわず、理由を問うても「決まってるから」と思考停止で運用されています。
つまり、人ではなく構造や制度がムダ歩行を生み出しているのです。
なぜ改善活動が定着しないのか
トップダウンに頼る限界と現場の主体性不足
コンサルによる一時的な指導や、「本社主導の改革プロジェクト」の合図で、現場の流れやレイアウトが一新されることがあります。
しかし、「お上からのお達し」頼みで現場の作業者が納得する前に動かされるだけでは、誰もがその狙いやメリットを自分ごと化できません。
結局、少し経てば元の動きに戻り、イノベーションは長続きしません。
数字に現れにくい「歩行」というムダ
日本の製造業では「歩く」こと自体が工程表や管理指標に含まれていないケースが多いです。
そのため、改善案もコスト削減も、「歩くのがムダだ」と腹落ちしません。
見える形で定量化・定義化できていないからこそ、「歩行のムダは仕方ない」という諦めが蔓延しています。
ムダ歩行ゼロの実現に向けた「新・現場思考」
DX活用の本質とは「思考の自動化」ではなく「検証の自動化」
最近はDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せ、IoTやAIカメラで動線を可視化する事例も増えています。
ですが、デジタル化は「どうしたら歩行がムダなのか」という思考を現場全員が共有しなければ単なる「作業監視ツール」になりがちです。
重要なのは、DXで動線や歩数を分析し、「なぜこのルートを選ぶのか」「どこで歩行が発生するのか」を現場が日々自問自答し、改善検証を自動的に回し続ける習慣を根付かせることです。
「ムダ歩行」に潜む現場ナレッジの集約
ムダ歩行の背景には、「在庫の情報が見えない」「ピッキングリストが手元で分からない」「作業台が増えたのに導線がそのまま」といった複雑な事情があります。
現場担当者の頭の中にしかない“ナレッジ”を掘り起こし、どこで誰が何に困っているかをリストアップすることで、現状の歩行ルートの本質的な意味が見えてきます。
このプロセスこそ、現場参加型の課題発掘活動の第一歩です。
人とシステムの「並行進化」が不可欠
属人的な動きを「仕組み」に落とす技法
現場のベテランが無意識にやっている動線ショートカットや、独自の工具置き場などは貴重なヒントになります。
これを動画やモバイル端末で記録し、どの手順が「本当に必要な歩行」かをチームで可視化します。
そのうえで、「この歩行は台車の位置を変えたらゼロになる」といった仮説をひとつずつ検証し、ベストプラクティスを工程標準へと進化させていきます。
成否を分ける「巻き込み力」——リーダーの役割
ムダ歩行改善は現場の全員をいかに巻き込むかが最大のポイントです。
管理者が現場の声に耳を傾け、当事者が「自分ごと」として改善アイデアを出し合える空気を作ることが、思考停止からの脱却に直結します。
「言いづらい伝統ルール」「指摘できない古参スタッフの動き」など、心理的バリアを乗り越える仕掛けが要ります。
現場朝礼でのトライアル発表や、歩行距離のビフォーアフターを張り出すなど形に残す工夫をしましょう。
アナログ製造業こそ「一歩先」を目指すべき理由
変化を恐れず「疑う力」を高める
昭和流の成功体験がいつまでたっても刷新されないのは、日本の製造業が「失敗しないこと」「揉めごとをおこさないこと」を重んじる文化があるからです。
ですがグローバル化が進むいま、現場の課題に「見て見ぬふり」を続ける企業ほど競争力を大きく損なっています。
ムダ歩行という課題は、「なぜこうなったのか?」「どうしたら面白い改善案が出るか?」と常に疑問を投げかける覚悟から、本質的な変化が始まるのです。
バイヤー目線、サプライヤー目線でも「歩行ムダ」は重大な競争力差になる
BtoB取引において、バイヤーは調達先の工場見学で「非効率な動線」や「人海戦術」を見抜きます。
歩行ムダが多い現場イコール、「改善意識の低い工場」として評価を下げられるリスクがあります。
逆にサプライヤーとしては、「きめ細かな動線設計」にこだわることで、お客さまに「この工場は細部まで管理が行き届いている」と信頼感を与える強みになるでしょう。
まとめ——ムダ歩行ゼロは永遠の課題。されど、止まらぬ進化が現場を救う
ムダ歩行を生む「思考停止」——それを打破するために必要なのは、現場の全員が「今ある当たり前」を疑い、小さな違和感やヒントを共有する習慣です。
DXやIoTは“現場の知恵”を定量的につなぐツールであり、最も重要なのは「人」と「システム」の並行した成長にあります。
バイヤーもサプライヤーも、「歩行」というシンプルな現象のなかに潜む非効率を減らせる現場こそ、真に競争力のある現代の製造業なのです。
一人ひとりの当事者意識と、昭和のやり方に囚われない柔軟な試行錯誤。
あなたの工場の“ムダ歩行”がいつまでも変わらないのは、「うちのやり方」が“思考停止”になっていないか——今こそ見直すべき時かもしれません。
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