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段ボール仕様の微妙な違いが輸送品質を左右する事例

目次
はじめに:段ボールの仕様が輸送品質に与える影響とは
製造業界において、商品の品質を守る上で欠かせないのが「輸送品質」です。
その中でも、最前線で商品を支えているのが『段ボール箱』です。
段ボールは一見どれも同じに見えますが、実はその仕様に微妙な違いがあり、これが輸送品質やトラブルの発生リスクを大きく左右しています。
昭和から続くモノづくりの現場では、依然としてアナログなカルチャーが強く根付いています。
「これまでと同じで良い」という固定観念を打破しない限り、段ボールの仕様検討も深掘りされない傾向があります。
しかし、グローバル化や物流現場の変化、省人化・自動化の進展をふまえると、今こそ現場目線で段ボール仕様の最適解を探ることが重要です。
このコラムでは、実際の現場経験と管理職としての視点を生かし、段ボール仕様の微妙な差異がどのように輸送品質へ影響するのか、事例を元に分かりやすく解説します。
また、調達購買担当者やサプライヤーが知っておくべきバイヤーの心理にも踏み込んでいきます。
段ボールの仕様とは:どこが違うのか?
基礎知識:紙質・厚み・構造
段ボール箱の「仕様」と言われてイメージするのは、サイズや印刷くらいかもしれません。
しかし、段ボールの仕様を決めるうえで本質的に重要なのは、主に次の要素です。
– 紙質(原紙の種別、表皮・中芯、それぞれのグレード)
– 厚み(3層・5層あるいは段の高さによる分類)
– 段の構造(Aフルート、Bフルート、Wフルートなど)
一般的にコスト削減要求が高まると、目につきやすい厚みやサイズばかりに意識が向きます。
しかし、段ボール箱の“耐えうる強度”や“適正な保護力”は、紙そのものの材質や構造に大きく依存しています。
本質を知るバイヤーや工場長は、外からは見えにくいこの仕様差を重視しています。
見えないコスト、隠れたリスク
紙質や段構造の違いは、見た目や触感では判断しきれません。
例えば「同じ5mm厚の段ボール」に見えていても、使われている紙の再生比率や水分量、圧縮耐性などのスペックは大きく変わります。
これにより、次のような問題が発生します。
– 輸送中の箱潰れ、商品破損
– パレット積み替え時の崩壊事故
– ライン投入時の自動箱詰めトラブル
些細な“スペックダウン”が、一発で全体コストアップにつながる例は枚挙にいとまがありません。
調達側・サプライヤー側ともに「スペックの見極め」と「リスクとコスト最適のバランス」を理解する必要があります。
事例で解説:段ボール仕様が輸送品質を左右する瞬間
輸出梱包での悲劇:紙質ダウンによる崩壊事故
私が工場長時代に経験した事例を紹介します。
海外輸出用の大型部品を納める段ボール箱について、調達部門から「コストダウンせよ」と命じられました。
そこでサプライヤーが選定したのが、見た目は同じ厚さ(5層Wフルート)ですが、中芯の紙質をワンランク落とした箱でした。
一見すると耐荷重はカタログ値で変わらず、現場担当も「問題なさそう」と判断。
しかし、輸送後に現地から「梱包箱が崩壊し、部品の破損多数」との一報が入りました。
調査すると、船便で湿気+高温の環境下、紙質ダウンした中芯が著しく強度を失っていたのです。
この事例は、単純に「厚ければ強い」では語れない、仕様の奥深さと現場起点の緻密さを教えてくれます。
安易なコストダウンが“見えない破損コスト”になり、結局は全体損失を生む典型でした。
自動化ラインでのロス増大:返しの高さ違いによるミス
最新の自動化工場では、ロボットアームが一斉に段ボール箱を展開し、製品を詰めていきます。
この工程で、「箱の展開がスムーズにいかない」「組立精度が落ちる」といったトラブルが発生することがあります。
問題の根本は、サプライヤーチェンジ時に段ボールの“返しの高さ”が規定より1mm高くなったことでした。
人手作業では吸収できた差も、自動化機械ではエラーの原因となり、ライン停止トラブルに繋がりました。
「どんな小さな違いも見過ごさない」現場力が、安全・安定生産のカギだと痛感した瞬間です。
パレット積載効率の改善が品質とコストを両立させるケース
段ボールの耐荷重をただ上げるのではなく、「段数あたりの積載効率」「デッドスペースの解消」に目を向けた例です。
現場作業者からの「パレット上に積んだとき段ボールの潰れが気になる」との声を聞き、バイヤーとサプライヤーが協働して設計協議を行いました。
耐荷重を維持しつつ、実はわずか2mmの段差を減らした設計に改良したことで、出荷時の安定性がアップ。
更には積載効率が向上し、輸送コストも削減することができました。
現場の肌感覚を活かし、川上・川下の垣根を越えた一体型チームならではの成功例です。
昭和アナログ文化の罠:なぜ仕様見直しが進まないのか
「昔からこれで良かった」症候群
製造業の多くの現場では、「規格書」「仕様書」「型番」に強いこだわりがあります。
とくにベテラン層は「20年間この段ボールで問題なかった」と語ります。
しかし、物流環境も自動化も、時代とともに要求が刻々と変わっています。
慣習・経験則だけに頼った仕様維持は、課題発見のブレーキとなり、気付かぬうちにリスクを 拡大させてしまいます。
調達現場と現場担当の“分断”
コスト低減ばかりが先行すると、「値引きのためだけの交渉」になりがちです。
その結果、“現場の本音”が調達バイヤーやサプライヤーに十分伝わらず、仕様見直しの共通認識が醸成されません。
バイヤーが『現場目線の数字』(箱積み回数、作業時間、破損率など)に着目すれば、現場もサプライヤーも共にウィン-ウィンのコスト・品質最適解を見つけやすくなります。
バイヤー・サプライヤーが知るべき、これからの段ボール仕様検討
現場の数字を“見える化”する
最適な段ボールを選ぶ第一歩は、「標準作業」「出荷事故率」「積み上げパターン」など現場の数字を見える化し、意思決定に活かすことです。
事実をもとにした“現場起点”の議論こそ、真のコスト競争力・品質力を生みます。
サプライヤーも「提案型」に変わる時代
これからのサプライヤーは「言われた通り」ではなく、「現場に即した改善提案型」が強みとなります。
例えば“仕様書通り”ではなく、「今の生産ラインや物流がこう変わったので、こうした箱仕様を提案します」といったプラスαの価値提供です。
バイヤーも、現場力と提案力に長けた仕入先を選ぶ傾向が今後ますます強まります。
デジタル技術で段ボールの“見えない違い”を評価する
IOTやAIの進化により、段ボールの強度や耐湿性能をリアルタイムで見える化する“工程内モニタリング”の事例も登場しています。
例えばパレット積載時に荷重を計測し、予兆段階で段ボールの変形や異常を検知するなど、デジタル+現場知見の融合が進みつつあります。
まとめ:段ボール仕様の「微妙な違い」が未来を変える
段ボール箱の仕様は、一見すると些細な違いにすぎません。
しかし、素材・厚み・構造の“一歩踏み込んだ見極め”が、最終的な輸送品質やコスト効率の明暗を分けます。
昭和の慣習に安住せず、現場数字に根ざした仕様検討を怠らない姿勢が、これからの製造業においてより一層重要です。
調達購買担当もサプライヤーも、現場とのコミュニケーションを強め、仕様の本質を見極める力を磨きましょう。
そしてメーカー現場こそが「新しい段ボール価値創出」の主役であると自負し、次世代のロジスティクス・品質管理を切り拓いていくべきです。
段ボールの微妙な違いにまで想像力をめぐらせ、一歩先の現場品質を一緒につくっていきましょう。
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