- お役立ち記事
- 値下げ一辺倒の方針に限界を感じる本音
値下げ一辺倒の方針に限界を感じる本音

目次
値下げ一辺倒の方針に限界を感じる本音
はじめに:製造業の現場から見える「値下げ至上主義」の現実
製造業における調達購買の現場では、コスト削減が最重要テーマとして掲げられ続けてきました。
特に昭和から連綿と続く業界文化の中に、「価格交渉=値下げ」という短絡的な思考が根付いています。
この体質から抜け出せずにいる会社や担当者は多いことでしょう。
本記事では、20年以上の現場経験を踏まえ、値下げ一辺倒の調達方針にいま何が起きているのか、現実の課題や限界、その先にあるサステナブルな調達のあり方まで、実践視点で深掘りしていきます。
なぜ製造業は「値下げ一辺倒」から抜け出せないのか
特有の業界構造と過去の成功体験の呪縛
製造業、とりわけサプライチェーン全体が数十年単位で固定されてきた企業体質においては、「先代がやってきた通りやる」ことが評価につながる傾向があります。
購買担当者が価格交渉を繰り返し、とにかく仕入れコストを1円でも下げることだけが成果とみなされてきました。
昭和〜平成初期の時代背景では、量産効果や円高の恩恵もあって、この方法が奏功していました。
しかし、グローバル競争が激化し、原材料費が高騰し、サプライヤー側の人件費も上昇する現在、このやり方にはもはや限界があります。
それでもなお、値下げ一辺倒が続いてしまう理由は、業界の評価制度や上司・経営層のマインドセットが過去にとらわれているからです。
調達・購買部門のKPIの偏り
多くの企業ではいまだに「前年比○%コストダウン」「仕入単価○%引き下げ達成」など、値下げそのものがKPIとして設定されています。
指標が変わらない限り、担当者はどうしても値下げ交渉を最重視しなければならず、サプライヤーの技術力や納期遵守、品質向上への貢献度など他の重要要素に目が向きづらい現実があります。
値下げ一辺倒の方針がもたらす課題とリスク
サプライヤー疲弊と長期的品質リスク
値下げ交渉を無理筋で何年も繰り返せば、サプライヤーの収益構造が悪化します。
生産現場では、経費の切り詰めや人員削減、改善投資の先送りが起こります。
結果として、納入品の品質管理や生産設備の老朽化対応が後回しとなり、「安かろう悪かろう」といった長期的品質リスクが高まるのです。
現場からすれば「また不良だ、またトラブルだ」と後手対応に追われ、調達購買・生産管理・現場の関係部署で不信感や摩擦が生まれやすくなります。
イノベーション停滞と競争力の低下
サプライヤーとしても、利益が圧縮されると新技術や新素材への投資、デジタル化、自動化設備への投資意欲が減退します。
また、「せっかく新しい提案をしても、また値下げか」「儲からないからイノベーションを持ち込む意味がない」と思われてしまうと、優秀なサプライヤーほど離れていきます。
もう一歩先の差別化や改善提案、プロアクティブなサプライヤーとの協業は、値下げ一辺倒の関係からは絶対に生まれません。
安定調達の崩壊、サプライチェーン断絶のリスク
昨今の地政学的リスクやパンデミック、原材料ショックを経験した今、「安価なものをどこまでも求める姿勢」自体に企業リスクが潜んでいることが明らかになってきました。
サプライヤーが事業撤退や倒産、他社への転注などを選択すれば、安定生産そのものが揺らぎます。
現場では深夜や休日にもかかわらず、資材手配や緊急増産対応、不良リカバリーに追われ、コストどころではない混乱が実際に起きています。
バイヤー視点とサプライヤー視点、温度差の本音
バイヤーに求められる「本当の価値創出」とは何か
調達購買・バイヤーの本来の役割は、「安く買う」ことではなく、「いかに自社の競争力に資する価値を調達するか」です。
「値下げを通じて会社に貢献する」フェーズはすでに終焉を迎え、「新たなサプライヤーを開拓する」「共同で設計開発し、新素材や新工法を採用する」「ESGやカーボンニュートラルなど社会的要請を共に実現する」など、よりクリエイティブな業務がバイヤーに求められています。
サプライヤーの本音:「数字」以外も見てほしい
サプライヤーの現場にも20年以上通い続けている立場から言えば、本音として「価格以外の努力も認めて欲しい」という願いが強いです。
例えば、図面や仕様にない微細な工夫で品質の安定化や納期短縮を実現している例、コンプライアンスやBCPに多大な努力を重ねている例も多々あります。
数値化しづらい「見えないコスト」や「現場力」を購買担当者が正しく評価し、対話を深めることが、これからのサプライチェーン強靱化のカギなのです。
競争だけでなく「共創」の時代へ
切磋琢磨することも大切ですが、全サプライヤーを敵に回して全方位値下げ交渉するやり方では互いに疲弊するだけです。
今こそ「競争と共創」を両立し、強いパートナーシップを築く必要があります。
サプライヤーにもメリットのあるウィンウィンな付き合い方が、VUCA時代のサプライチェーンリスク回避にも直結します。
昭和体質からデジタル&サステナブルな調達へ
アナログ脱却の第一歩は「プロセスの見える化」
値下げばかりに囚われている企業の多くは、調達プロセス自体が旧態依然としています。
「紙の発注書」「電話とFAXだけの交渉」「エクセル台帳、手計算での原価積算」など、いまだに昭和時代と変わらぬオペレーションが残っています。
まずは調達プロセス全体を見える化し、価格以外の指標(納期遵守率、提案力、品質安定度、サステナビリティ対応レベル等)も可視化、評価する仕組みづくりが必要です。
デジタルツールやSRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)導入で、バイヤーとサプライヤーの関係性をアップデートできます。
部門横断・全社最適の調達戦略の重要性
調達購買部門が値下げばかりを追うのではなく、設計・品質・生産管理・営業と連携したクロスファンクショナルチームで全体最適を志向すべきです。
例えば、設計段階からサプライヤーと協働し、原価低減と品質安定化を同時に実現する仕組み、小ロット多品種やカスタマイズ生産でも柔軟にサプライチェーンを組める体制が不可欠です。
新しいバイヤー像:「調達イノベーター」としての役割
これからのバイヤーに求められるのは、「言われたモノを安く買う人」ではなく、「技術・市場・人脈を駆使して、自社価値を最大化できる人」、つまり「調達イノベーター」への進化です。
商品知識、業界動向の把握、グローバル調達の感覚、数値分析力、そして何より現場重視・共創志向のマインドセットが必須となります。
また、ESG経営やダイバーシティ、サステナブル調達といった社会的価値を追求できるスキルも選ばれるバイヤーの大きな強みとなっていきます。
まとめ:値下げだけでは未来は切り拓けない
現場・管理職・経営層のすべてが「値下げ至上主義」の限界を認識しなければなりません。
これからの調達バイヤー、サプライヤーは「安く買う」から「価値を共に創る」関係へと進化することが必要不可欠です。
製造業の皆さんは、ぜひ現場や自社サプライヤーの中に眠る“見えない価値”に目を向けてください。
過去の成功体験の呪縛を超え、デジタル・サステナブルをキーワードに、共に業界の未来を開拓していきましょう。
値下げだけに頼らない新しい調達像を、一歩ずつでも現場から積み上げ、次世代へとバトンを繋いでいきたい――この本音が、きっと業界の新たな価値創出につながるはずです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)