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ロールフォーミングに向く業界と向かない業界

目次
ロールフォーミングとは何か
ロールフォーミングは、連続した金属帯(コイル材)を専用のローラーを使って徐々に成形し、最終的な断面形状を持つ長尺製品に加工する板金加工の一手法です。
この技術は、切断後に曲げるプレス加工や曲げプレスと異なり、素材を繰り返し段階的に少しずつ変形させていくのが特徴です。
そのため、同じ断面形状を持つ製品を大量かつ安定して生産できる反面、初期投資や金型設計の自由度には制限も出てきます。
ロールフォーミングがどんな業界で活用され、またどんな業界には馴染まないのか。
製造現場での実体験や近年の業界動向をもとに、解説していきます。
ロールフォーミングに向く業界
建材業界
建材業界は、ロールフォーミングが最も得意とする分野のひとつです。
代表的な製品は、サイディング、屋根材、スチールパネル、軽量鉄骨、天井・間仕切りのチャンネル材など、多種多様です。
一度金型を準備すれば、大量の同一断面の製品を連続して生産できるため、コストパフォーマンスに優れ、納期も短縮できます。
特に、戸建住宅から大型ビル、公共建築物まで幅広く利用される建材は、長尺物同士をジョイントして使う機会が多く、断面精度や全長の安定性が求められます。
最近では、断熱材や遮音材をインサートした複合断面形状のロールフォーミングなども増えており、後工程の省力化も図れます。
自動車業界
自動車にも、ロールフォーミング技術は広く導入されています。
特に、バンパービームやロッカービームなどのサイドメンバー部材、骨格部品にロールフォーミングは好適です。
厳しい強度や寸法精度、軽量化ニーズにも対応でき、また高張力鋼板にも対応できる点がロールフォーミングの強みです。
また、量産性が高いことから、台数の多い自動車生産にフィットしています。
ただし、個別対応が多い小規模部品や複雑形状の内装パーツなどは、他工法への分野分けとなる場合が多いです。
流通・物流インフラ関連業界
物流や流通業界向けの「ハンガーラック」、「コンベアフレーム」、「支柱」なども、ロールフォーミング向けといえます。
定尺のパイプやチャンネル材、C型鋼、棚の支柱など、標準化された部材を大量かつ安定供給することが求められるため、ロールフォーミングの大量生産力が大いに活かされます。
さらに、設計変更やライン変更の頻度が少ない構造用部材では、初期投資の償却も容易です。
家電・インテリア業界
冷蔵庫や洗濯機、エアコン内部の補強フレーム、スチール家具のフレームや棚板など、断面精度の要求が高い長尺板金部品にロールフォーミングは適しています。
多品種小ロットへの対応が難しい反面、定型部品の安定した供給やコスト低減が求められる分野ではロールフォーミングが選ばれる傾向が強いです。
農業・温室・施設関連業界
温室やビニールハウスの骨組、農業用保管庫なども、ロールフォーミングの適用範囲です。
特に、シンプルな構造体の大量製造では、溶接や曲げ加工よりも生産性とコストで大きく優位性があります。
ロールフォーミングに向かない業界
航空・宇宙産業
航空機部品や宇宙産業で使われる構造部材は、多品種・高精度・高機能の複雑な形状が要求されます。
この分野では、プレスや削り出し、鍛造、複合材料の積層など、より自由度や高機能化を得やすい工法が選ばれやすく、ロールフォーミングはあまり利用されていません。
医療機器・精密部品業界
医療機器や精密部品分野では、形状の自由度や微細精度が重要です。
1品ごとの個別設計が多く、小ロット生産が主流です。
セットアップコストや型費の回収が困難なため、ロールフォーミングは選ばれにくい傾向にあります。
デザイン性・意匠性が高く要求される業界
インテリアや店舗什器、意匠建材など、個性的かつ曲線美を活かした設計が求められる業界では、ロールフォーミングの直線基調な形状や押出し断面では対応が難しい場合が多いです。
このような場合、曲げ加工や板金溶接、切削加工などの柔軟な工法が選択される傾向があります。
多品種少量生産がメインの業界
食品機械、各種専用設備、精密機器など、ロットサイズが小さくバリエーションが多い業界では、ロールフォーミングの「金型に依存する連続生産」という特徴は不向きです。
金型変更の手間やコストがネックとなるため、多品種少量にも対応しやすいレーザー加工や曲げ機、旋盤などが主流となっています。
ロールフォーミング導入に際して悩みやすいポイント
初期投資と生産規模の見合い
ロールフォーミングは、生産立ち上げ時に金型・設備の初期投資が必須です。
そのため、一定以上の年間生産量が見込める場合や、長期的な安定供給が計画されている用途で初めて、コストメリットが生まれます。
生産数量が少ない、頻繁に形状変更が発生する場合、むしろコスト高になることも多いため、事前に投資対効果をシミュレーションすることが重要です。
設計自由度・変更の柔軟性
ロールフォーミングは少しずつ成形側面の形状を仕上げていく構造から、複雑な断面や穴あけ・切り込み・曲線・折り返し形状などは対応困難です。
また、形状変更が生じた場合は新規金型の製作や大幅な設備調整が必要となり、柔軟性には課題が残ります。
そのため、初期段階での設計確定や、シリーズ展開における断面プロファイルの標準化が、コストダウンのカギとなります。
品質管理と歩留まり
ロールフォーミングラインでは、原材料の入荷状態、ローラーの摩耗、セットアップ精度、溶接・接合後の仕上管理など、多くの工程ごとに細かな注意が必要となります。
特に昭和から抜け出せないアナログ現場では、「職人の勘」に頼った段取りやセッティングが強く残っているため、不良品や歩留まりの悪化を招きやすいです。
最近は自動化設備やIoT技術の導入が進んでいますが、現場での定量的なデータ測定やリアルタイム監視の仕組みを整え、安全かつ安定した生産ラインを確立させる必要があります。
昭和体質からの脱却!製造現場で押さえるべき「これから」のポイント
ロールフォーミングの適用範囲を広げていくうえで、単なる大量生産指向から脱却し、「少品種多量」と「多品種中~小量」の双方に対応できる新陳代謝が業界全体に求められています。
現場目線で強く感じるのは、以下の3点です。
① 設計段階への現場知見フィードバック
ロールフォーミングの金型設計や断面プロファイル策定時には、営業・設計・製造・設備・品質すべての部門と密に連携し、現場の知見・トラブル事例もリアルタイムでフィードバックしましょう。
「設計だけが先行し、現場があとで苦しむ」構図から脱却し、工程FMEAや現物確認、試作段階のコミュニケーションを徹底することがコストダウンの最短ルートです。
② デジタル化推進と人材教育の両輪強化
工程管理や品質管理は、現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化によって劇的に効率化できます。
ですが、現場技能者の暗黙知や微調整スキルも依然として重要です。
IoTや自動化ライン導入と並行し、現場社員の再教育や技能伝承の仕組み作りも益々不可欠になっています。
③ サステナビリティ・トレーサビリティ対応と新価値創造
環境意識やESG(環境・社会・統治)経営の流れが加速する今、「省資源で大量生産」だけでなく、リサイクル性や素材選定、CO2排出量の可視化といった観点も必須です。
ロールフォーミング製品がサプライチェーンを通じてどう付加価値を出せるのか、現場・営業・設計が一体となり顧客価値の再定義に取り組む必要が出てきています。
まとめ ― ロールフォーミングを戦略的に活用するには
ロールフォーミングは、大量生産のコストメリットが最大限に発揮できる建材、自動車、物流インフラ、家電・農業関連分野で力を発揮します。
一方で、多品種少量や高い設計自由度が必須の業界、最先端の精密要求や芸術的形状を追い求める分野には、なかなか適用しづらいのが現実です。
初期投資・生産数量・設計要件・品質管理の観点から、自社にとって本当に「ロールフォーミングが適するのか」「他工法との棲み分けはどうか」を、今一度見直してみてください。
また、現場のアナログ文化や属人化した工場運営から一歩踏み出し、DXやオープンコミュニケーション、持続可能性を意識した現場改革に挑戦することが、これからの製造業の競争力強化につながるでしょう。
現場経験で磨いた目線で適材適所を見極め、ロールフォーミングの実力を最大限に活かす一歩を、ぜひ踏み出してみてください。
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