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パルパーで使われる主要部材名称とトラブルが起きやすいポイント

目次
はじめに:パルパーの基本構造とその役割
パルパーは、製紙業界やリサイクルプラントなどで広く使われている重要な設備です。
原料として投入された紙や繊維質材料を水とともに解繊し、均一なパルプスラリーを作り出す役割を担っています。
その構造や動作原理はシンプルですが、現場ではわずかなトラブルが生産工程全体の歩留まりや品質、コストに大きく響くため、主要部材の名称と併せてトラブル発生の多いポイントを押さえておくことが非常に重要です。
本記事ではパルパーの主要な部材名称を整理しつつ、現場視点での「起こりがちなトラブル」とその対策について詳しく解説します。
進化しきれていないアナログ現場にも根強く残る運用のクセや業界動向にも触れ、日々の設備管理やサプライヤーとのコミュニケーションに役立つ視座をご提供します。
パルパーの主要部材とその機能
パルパーは多くの部品から構成されていますが、役割やトラブルの多さという観点から以下の主要部材について整理します。
ドラム・ボール(パルパータンク)
パルパーの本体ともいえる円筒形または角型の容器部分がドラムまたはボールと呼ばれるパルパータンクです。
この中で原料、水、薬品などが混ぜ合わされ、回転するロートや刃によって原料が解きほぐされます。
・トラブルポイント
堆積物や異物の蓄積による滞留・詰まり、パルパータンク接合部からの水漏れ、ライニング(内張り)の摩耗、腐食などが主に挙げられます。
古いパルパーでは旧式設計ゆえの清掃性の悪さが顕著であり、溶接部のクラックも多発します。
ローター・アジテーター(解繊羽根、攪拌子)
タンク底部または内部で回転し、原料の解繊および攪拌を行うのがローターまたはアジテーターです。
このパーツは羽根の形状ひとつ違うだけでパルプの解繊性能や消費電力、トラブル頻度が如実に変わります。
・トラブルポイント
羽根先端の摩耗や欠損、異物の巻き込みや絡み、ボルトの緩み、バランス不良による振動が問題化しやすい部位です。
長年の現場では羽根の摩耗を見逃して生産性低下や異音発生を引き起こす事例が後を絶ちません。
スクリーンプレート(ふるい板)
パルパー底部には多数の穴や溝を持つスクリーンプレートが設けられています。
繊維と水がスクリーンプレートを通過して次工程に送られますが、異物や未解繊原料を分離する大切な役割があります。
・トラブルポイント
スリットや穴の目詰まり、摩耗による開口率低下、プレート自体の割れや変形などが発生します。
また業界内では、日常の清掃やプレート交換時の安全面への配慮が不十分な現場も少なくありません。
ギア・モーター・ベアリング
パルパーのローターを回転させるための駆動部であり、ギアやモーター、ベアリングなどが組み合わさっています。
動力の伝達効率が直接パルパー全体の歩留まりに影響します。
・トラブルポイント
ギアオイルの劣化や漏れ、ベアリングの焼付き、モーターコイルの断線といった機械的・電気的なトラブルが代表的で、突発停止や修理コストの増大要因です。
吐出部(アウトレット、ポンプ)
パルプスラリーを次工程へ送る部分です。
パルパータンクからパルプを排出するバルブや配管、ポンプは隠れたトラブルの温床です。
・トラブルポイント
配管詰まり、バルブ操作不良、パッキン劣化など滞留物が多い原料系統ならではの課題が集中します。
ここはバッチ方式のアナログパルパーでは特に人の技量や勘が影響しやすい部位です。
パルパーで起きやすい主なトラブルと原因
パルパーはシンプルなようで実は複雑な物理現象の集合体です。
起きやすいトラブルを現場経験から紐解くと、以下のパターンに絞り込むことができます。
原料の解繊不足・遊離スラッジの滞留
ローターやアジテーターの摩耗・破損、スクリーンプレートの目詰まり、またはタンク内部の流動不良などに起因した解繊不足は、製品品質の低下や工程への異物流入トラブルの根本です。
タンク内の洗浄や、原料投入量・水量・薬品量の最適化、定期的な羽根の摩耗管理がカギとなります。
異物混入・金属片やプラ異物の巻き込みトラブル
現場でよく耳にするのが、異物(特に鉄片・金属・プラ類)がローターやスクリーンプレートに噛み込む事故です。
これにより羽根やプレートが破損し、全体のライン停止に発展することがあります。
サプライヤーとの原料品質管理強化と、マグネットや異物除去器設置が根本的な対策です。
水漏れ・腐食・パッキンの劣化
パルパータンクの継ぎ目や配管・バルブ部位からの水漏れは、パッキン材質の経年劣化や締付け不良に起因します。
昭和時代のアナログ設備では、パッキンやシールの材質選定・メンテ間隔も必ずしも科学的に決まっておらず、個々の職人勘に依存したままの現場も多く残っています。
モーター・ベアリング焼付きや異音
定期グリスアップや日常点検が不十分だと、モーターの過負荷・ベアリングの摩耗・潤滑油切れが誘引となり突発停止や異音が発生します。
ベアリング温度の監視や振動監視システムの後付けといったIoT活用も進みつつありますが、現場ではアナログな聞き耳点検が主流というギャップも依然残っています。
製造業の現場で役立つパルパーの保守・運用ポイント
長年の現場経験から確信できるのは、パルパーの安定稼働には「観察」「清掃」「計測」この3つが現場の粘り強い実践に支えられている、という事実です。
観察:アナログ感性を大切に
ローターの音、振動、液面のわずかな変化、スラリーの泡立ちなど、ベテランが五感でキャッチしてきた情報は非常に強力なエラー検知器となります。
昭和の“職人魂”を否定することなく、経験とデータの双方を現場で活用することが今後も重要です。
清掃:日々のチリが大きな災害につながる
スクリーンプレートやタンク内部、ローター・バルブ部の定期的な清掃は、目詰まり・異物混入・腐食進行等の重大トラブルを未然に防ぎます。
清掃時のチェックリスト作成や、サプライヤーとの情報共有会による“磨き合い文化”が現場全体のミス削減に貢献します。
計測:IoT・DXの波を現場で活かす
新しいセンサーや振動・温度監視装置の導入によって、人手に頼りすぎずとも予防保全や早期異常検知が可能になりつつあります。
ベアリング温度のグラフや消費電力の推移といった数値データは「なぜ不具合が起きるのか」根本対策を考える際の羅針盤となります。
業界動向:なぜパルパーは“進化しきれない”のか
IoTやDX(デジタル変革)の波が押し寄せている製造業ですが、ことパルパーの領域では設備更新のサイクルや投資回収の長さ、“業界独自のサプライチェーン”が進化の足枷となっています。
・パルパー自体が数十年単位で稼働する“長寿命設備”である
・原料や製品規格が曖昧なまま職人裁量で運転してきた歴史がある
・コストダウン優先で旧式設備を騙し騙し使い続けている工場が多い
こうした背景から、進化どころかマイナーチェンジに終始している製造現場も珍しくありません。
「昭和の知恵と令和の技術」両方を掛け合わせた現場変革が、今後の競争力の鍵になるでしょう。
バイヤー・サプライヤー両方の視点で考える
バイヤー(調達担当)を目指す方は、パルパーの主要部材について単なる価格や納期だけでなく、現場目線の耐久性・交換性・メンテナンス性などに着目すると、現場の信頼を勝ち取ることができます。
一方、サプライヤーにとっては「なぜそのパーツが現場で選ばれるのか」「どこでトラブルが多いのか」を具体的に知ることで、新たな提案や差別化のヒントにつながります。
ベテラン現場担当者の“昔話”の中には、取引リスク低減のヒントや今後の商品開発の可能性が詰まっていることを意識してほしいと思います。
まとめ:実践現場の知恵が“止まらないパルパー”をつくる
パルパーは決して新しい設備ではありませんが、主要部材名称とトラブル発生ポイントを現場視点で把握することが、安定生産や次世代現場づくりにつながります。
昭和時代から根付くアナログ運用の強みと、最新センサーやデータ活用による予防保全―両者を賢くミックスし、バイヤー・サプライヤー・工場現場それぞれが共創することが、成熟業界の新たな価値創造に直結すると確信しています。
本記事が、現場で働く方、バイヤー志望の方、サプライヤーとして競争力を高めたい方のヒントとなれば幸いです。
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