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製造設備のボイラーで使う送風ファン部材のバランス加工と振動課題

目次
はじめに:製造現場で求められる送風ファンの“本当のバランス”とは
製造現場の心臓部とも呼べるボイラー設備。
その性能や安全稼働を支える重要パーツの一つが「送風ファン」です。
ボイラーは常に安定した燃焼を維持しなければならず、その燃焼空気を送り込む送風ファンは、わずかなアンバランスや振動でも、設備全体に深刻な問題をもたらします。
本記事では、20年以上の実体験をもとに、送風ファン部材のバランス加工や振動対策の実際、現場ならではのノウハウや課題解決の切り口を、現代の製造業の「昭和的アナログ文化」も踏まえながら、深掘りしていきます。
調達担当者(バイヤー)、サプライヤーの設計者・現場技術者、品質管理の責任者など、幅広い製造業関係者の皆さまの参考になれば幸いです。
送風ファンの役割と設計上の基本課題
ボイラー用送風ファンは、燃焼空気を安定して供給し、熱効率の維持・排ガスの環境対策にも不可欠です。
ファンが高回転・高負荷で動作するため、羽根(インペラー)、シャフト、ケーシングなどが受ける動的負荷は想像以上です。
ここで重視すべきは、設計値どおりの「動バランス」。
このバランスが狂うと、回転時に強い振動が発生し、ボイラーチューブやベアリング、周辺配管の損傷、最悪の場合は火災・爆発リスクすら高まります。
現場では「ファンがうなる」「軸受けが異常発熱する」といったトラブルが頻繁に起きています。
この根本原因の1つが、部材製造段階のミクロン単位のバランス不良です。
部材バランス加工の基本とよくある勘違い
多くのファンメーカーや下請け加工業者は「図面指示どおり」に部材製作を行っていますが、現場のリアルに触れると“図面通り”=“現場で問題なし”とは限らないことに気づきます。
図面公差と実装公差のギャップ
ファン部材に設計者がよく設定する「バランス等級」。
ISO 1940-1規格のG6.3やG2.5などの指示も見かけますが、実際の運用環境は想定より過酷です。
搬送・据付時の微小クラックや、組立時溶接のわずかな溶接ビード歪み。
これらの“現場要因”が原因で、現物がファクトリーに設置された時点で、すでに想定外のアンバランスが生じていることも少なくありません。
静バランスと動バランス──アナログ現場の落とし穴
特に昭和的な工場に根付く誤解が「静バランスさえ取れていれば大丈夫」という発想です。
確かに静バランスだけで済んだのは、モーター回転数1,500rpm程度、かつ小型のファンの場合のみです。
近年の高速・大風量ファンは2,800rpm超も珍しくなく、動バランス(回転体全体としての質量バランス)まで求められるのが標準です。
しかし、作業現場では静バランス測定装置しか設備がない事例も多く、「納期優先」「コスト最優先」で動バランス工程が省略されてしまう恐れがあります。
工場現場で多発する送風ファンの振動トラブル事例
現場目線でよく見られるボイラー送風ファン部材由来の振動トラブルを以下に整理します。
1. 羽根の重量アンバランスからくる周期的な振動
インペラー(羽根車)の溶接組み付けのわずかな重量ズレや、羽根曲げ加工時の肉厚バラツキが主な原因です。
特に多品種少量生産の現場では、熟練工の技量頼みになることが多く、属人的な品質バラツキもトラブルの温床となります。
2. シャフトの芯出し不良による追従共振
羽根だけでなく、シャフトとベアリングの組み合わせも、アンバランス発生原因の一つです。
据付時の芯出し作業が不十分だと、回転時に本来の中心で回れず、振動や異音が発生します。
3. ベアリング損傷と振動の悪循環
アンバランスが継続すると、ベアリングにも異常荷重がかかり、内外輪ともにダメージが進行します。
その結果、「振動」の波動がどんどん増幅され、最終的には破壊や事故停止に至る事例も、数えきれないほど経験してきました。
4. 二次振動・共鳴現象の見逃し
「送風ファンの振動=ファン単体のバランスが悪い」と思われがちですが、周辺配管やフレームと固有振動数が一致した場合、複雑な共振現象も発生します。
現場でよくあるのは「ファン単体では基準内だが、据付後に異常振動発生」というケースです。
現場実践ノウハウ:バランス加工・測定の徹底ポイント
送風ファンのトラブルを未然防止するには、「加工工程」「組立工程」「据付現場」それぞれで、バランス精度を高める工夫が不可欠です。
1. 加工段階での動バランス測定の必須化
現場で最も効果的なのは、「完成インペラー単体」に対し、動バランス試験(ダイナミックバランシング)を必ず行うことです。
その際、研磨によるバランス取りだけでなく、あらかじめ加重(バランスウエイト)を計画的に配置する設計工夫も、現場実務では非常に有効です。
2. 組立工程での中間チェックと記録管理
羽根、シャフト、ハブなどの中間組立ごとに、一度「部分バランス測定」を実施することを推奨します。
これにより、問題発生時にトレーサビリティが明確になり、「どこでどんなズレが出たか」をさかのぼる事が容易になります。
3. 据付前後の現場振動測定──アナログとデジタルの融合活用
現場でできる振動測定(FFTアナライザーなど)はコストの都合や習熟度によるバラツキが依然多いですが、スマートフォン用の簡易振動計測アプリなども登場し、アナログ現場でもITの活用余地が広がっています。
まだ「感覚頼み」「音・匂い・肌触りで判断」という現場も多いですが、今後は振動データの見える化がせいじょるさけられません。
バイヤーとサプライヤーの実務で知っておくべきバランス課題
調達バイヤーの目線では、ただ「安く部材を買う」のではなく、「全体最適」で振動事故やメンテナンスコスト=隠れた総コストを減らす目利き力が問われます。
調達時の図面・仕様書に盛り込むべきポイント
– バランス等級(G2.5相当など)は具体的に指定
– 測定方法、測定装置メーカー、測定記録提出の義務化
– 必要であれば現場立会い検査も仕様化
– 振動値(mm/s)や周期データの要求
設計や購買でこれらを仕様に盛り込むだけで、事故・トラブルリスクが激減します。
サプライヤーが絶対に確認すべき“見落としがちな現場要件”
– 実際の現地搬入経路(搬送中のアンバランス発生リスク)
– 現地据付後に新たな再バランス作業の要否
– ファン本体だけでなく、駆動Vベルトプーリーやフレームの影響確認
これらを事前にバイヤーとすり合わせておくことで、納品後に「言った・言わない」のトラブル防止にもなります。
昭和からアップデートすべきアナログ現場の課題と展望
多くの工場で、未だに「勘と経験」「納期最優先」「検査記録も紙中心」のルールが色濃く残っています。
しかし、今後は予知保全・データドリブン経営への変革が待ったなしです。
国際的なISO認証のみならず、顧客のCSR(企業の社会的責任)監査やBCP(事業継続計画)対策も、今や日常となりました。
この流れを受け、「送風ファンのバランス」という一見地味な分野こそ、製造業変革の重要な足元といえます。
具体的な“脱アナログ”アクション例
– スマホ+クラウドを活用した現場バランスデータの定期監視
– バランス試験装置メーカーと連携しながら、現場教育と標準作業手順書(SOP)の整備
– 振動トラブルの未然防止を“品質コスト”ではなく“企業競争力向上”と捉える意識改革
まとめ:”真の現場起点”でボイラーファン部材バランスに挑もう
製造設備の送風ファン部材のバランス加工や振動対策は、「設計」「加工現場」「据付現場」「運用現場」すべてが一体となって初めて、本当の品質が保証されます。
バイヤーもサプライヤーも、「図面通り」だけで安心せず、現場・現物・現実を徹底的にすり合わせる“現場起点の問題意識”が必要です。
そして、昭和のやり方の良さをうまく活かしつつも、「アナログ+デジタル」のハイブリッドなモノづくりが、これからの製造現場の新しい“バランス”。
全ての製造業従事者が、自社と産業全体の発展につながる目利きと実践を、一歩ずつ進めていきましょう。
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