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ロール段間ピッチが品質に与える影響

ロール段間ピッチが品質に与える影響
はじめに:製造現場におけるロール段間ピッチの重要性
製造業の現場では「ロール段間ピッチ」という言葉が、ベテランから若手まで頻繁に使われています。
これは、フィルムやシートなど連続した素材を複数のロールで搬送したり加工する際、それぞれのロール中心間の距離を指します。
一見、シンプルな寸法のように思えますが、この段間ピッチの調整こそが製品の品質に直結する重大なポイントです。
しかし、多くの現場では旧来の設計値や“前例主義”で設定されることも多く、実はその重要性に対する理解が遅れているのが現状です。
本記事では、ロール段間ピッチが製品品質に与える実質的な影響や、その課題・対応策について、工場長など現場管理職としての視点を持ちつつ、実践的に解説します。
ロール段間ピッチの基本的な役割と計算方法
ロール段間ピッチとは、例えばラミネートフィルムや鋼帯といった連続素材が、複数のロールを通して搬送される際に、隣り合うロールの中心から中心までの距離のことです。
このピッチ設定は、
・素材のテンション維持
・蛇行防止
・しわ、たるみ防止
・工程間投入速度設定
など、製品品質に深く関連してきます。
計算方法は単純明快であり、ロールの物理的な直径、必要なクリアランス、ライン設計速度、そして素材の物性を組み合わせて求めます。
ですが、実際には「実機での経験値」や「職人の勘」が幅を利かせていることも多く、そこに日本の製造現場の“昭和的アナログの壁”が存在します。
品質への影響1:テンション(張力)ムラが製造品質に直結する理由
ロール間のピッチが適切でない場合、まず顕著に現れるのが“テンションムラ”です。
例えば、フィルムの搬送を考えてみましょう。
段間ピッチが長すぎると、搬送経路が間延びし、経路上で張力が抜けやすくなる結果、一部で“たるみ”が生じます。
逆に、ピッチが短すぎると、素材に局所的な張力がかかりすぎて“しわ”や“蛇行”の原因になったり、素材そのものを損傷させるリスクが増大します。
特に近年は薄膜化や高精度が求められる材料が主流となっているため、十数ミリの段間ピッチの違いが、そのまま製品の“美観”、“寸法精度”、さらには“歩留り”にまで影響するのです。
また、テンションセンサーやアクチュエータなどの自動制御機器の応答性も、ロール段間ピッチの設定に大きく依存しています。
品質への影響2:しわ・蛇行・エアトラップといったトラブルの温床に
段間ピッチ不良によって発生しやすい製造トラブルは数多くあります。
・搬送中のフィルムやシートが「しわ」になる
・蛇行(斜行)して最終品寸法がばらつく
・ラミネート工程で封入されるエア量が多くなり「エアトラップ」が多発
・鋼帯の場合は、熱ひずみや板厚不良
「原因がわからない」と悩む現場の多くは、この段間ピッチの設計や、メンテナンス時のロール位置ズレが主因である場合が意外なほど多いのです。
とくに最近では、デジタル印刷機や高速ラミネーター、超薄鋼板など、時代的に“設計マージン”が小さくなっていて、アナログ時代の「まあ、これくらい大丈夫だろう」が通用しません。
段間ピッチの最適化が業界競争力につながる理由
日本の製造業界はいまだ“昭和モデル”の生産現場が少なくありません。
段間ピッチの設計も古いデータや現場経験に依存することが多いです。
しかし、近年はIoT、AI、センシング技術が急速に発達し、ロール位置や張力の細かなモニタリング・自動補正が可能となってきました。
こうしたデジタル化時代の新技術と現場経験が融合したとき、生産現場の真の競争力となります。
段間ピッチの最適化による得られるメリットには
・生産歩留まりの大幅向上
・ライン停止頻度の低減
・不良品発生率の低減
・新人・未経験者でも一定品質以上を維持
・現場改善サイクルの高速化
といったポイントがあり、これはグローバル競争で抜きんでるための不可欠な課題といえるでしょう。
昭和的マインドセットが招く落とし穴と現代的な解決手法
実は多くの現場で、「ロール位置は最初に設計したまま」「少し狂っても現場の勘で何とかなる」「調整はやればやるほど職人力が上がる」と考えられてきました。
しかし、これでは不具合原因の特定も難航し、いつまでも“属人的な解決”から抜け出せません。
そこで今、求められるのは──
・ライン設計段階で段間ピッチと張力の“デジタルシミュレーション”を事前に行う
・実装機には張力センサー、ロール位置センサー、エッジポジショナーの導入で数値管理化する
・定期的なロール間距離測定&記録(メンテナンスの標準化)
・ピッチ変更による製品物性変化の実機検証データをDB化し、ベストプラクティスとして現場全体で活用する
このような“標準化・デジタル化”の流れこそ、これからの日本製造現場の品質力・現場力を大きく底上げする柱となります。
バイヤー・サプライヤー視点で考える「ロール段間ピッチ」の価値訴求
部品や素材のバイヤーを目指す方にも、ロール段間ピッチは“生産におけるリスク・コストの源泉”として知っておくべきキーワードです。
なぜなら、工程の安定は即ち「納期・品質・コスト」=QCD改善に直結するからです。
バイヤーとしてサプライヤーに求めたいのは、
・ロール段間ピッチの根拠ある設計(再現性・ロット間ばらつきの低減)
・段間ピッチ見直しによる生産能力向上の提案
・テンションや蛇行などピッチ起因の異常履歴の報告と改善活動
こうしたデータがセットで提供できる企業こそが、取引先として高く評価される時代になっています。
逆に、サプライヤー視点では
「なぜこのピッチ値なのか、なぜこの位置でロールを配置しているのか」のロジックを言語化し、
“現場力”のみならず“データに基づく説得力”を訴求できることが、競合との差別化に繋がります。
まとめ:ロール段間ピッチは現場・技術・経営を繋ぐ要諦
本稿では、ロール段間ピッチが品質に与える影響を、現場と経営、バイヤーとサプライヤー双方の観点から掘り下げてきました。
かつては“経験と勘”というノウハウが現場を支えていましたが、今後は
・数値データと現場経験の両立
・再現性と柔軟性を確実に両立させる設計
・現場の「なぜ?」をデータで説明できる体制づくり
が、世界をリードする日本のものづくり現場には強く求められます。
“些細な段間ピッチが生み出す数十万円、数百万円単位の損失・品質トラブル”。
目に見えないコストを減らし、QCD競争力を高めるためにも、今こそ現場マインドをアップデートすべき時代です。
すべての現場人、バイヤー志望、サプライヤーの皆様の参考になれば幸いです。
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