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耐摩耗ライニング部材と耐薬品ライニング部材の違い

目次
はじめに:ライニング部材の重要性と業界背景
製造業の現場は高温・高圧・腐食・摩耗など、さまざまな過酷な環境にさらされており、設備の耐久性や安全性を保つことが生産効率や品質管理を支える根幹となっています。
特に、設備の内側に施す「ライニング部材」は、母材を守り、トラブルや事故を未然に防ぐ重要な役割を果たします。
バイヤーやサプライヤー、現場技術者の立場から、この分野の根本や実務ノウハウ、業界の傾向をお伝えします。
今回のテーマである「耐摩耗ライニング部材」と「耐薬品ライニング部材」の違いについて、昭和から続くアナログ的な判断基準や最新のトレンドにも触れながら、現場目線で深掘りしていきます。
耐摩耗ライニング部材とは:用途と特徴
耐摩耗とは何か?
耐摩耗という言葉は、文字通り「摩耗に耐える」特性を示します。
主に固体同士や粉体、スラリー(泥状の流体)などが設備内部を移動する過程で、摩擦により発生する消耗や損傷を防ぐ目的で使用されます。
耐摩耗ライニングの主な用途
多くの生産ラインでは、以下の設備が代表的な適用対象です。
- シュートやホッパー:原材料や製品の搬送通路
- ミキサーや粉砕機:原料を混合・粉砕する機械の内部
- 配管・ダクト:高流速や粒子の多いラインの配管部
- コンベアベルトの裏打ち材
鉄やステンレスといった一般的な材料では摩耗が速く、設備ダウンや頻繁なメンテにつながります。
そこで、耐摩耗性を高める目的のライニングが採用されるのです。
主な材質と特徴
耐摩耗ライニング部材でよく用いられる材質は以下の通りです。
- セラミックス(アルミナ、ジルコニアなど):高硬度で優れた摩耗耐性
- ウレタン樹脂:ゴムの弾力と耐摩耗性を両立
- クロム鋼鋳物・ハードフェーシング:金属の中でも特に高耐摩耗のもの
- 耐摩耗ゴム:摩耗とともに騒音・振動も緩和
ここでは素材の持つ「硬さ」や「弾力」、「衝撃吸収性」、そして「コストと交換サイクルのバランス」が実務上重要です。
選定時の現場ポイント
現場では「実際にどのような摩耗・衝撃が加わるか」を理解せずに標準化部材を選定してしまうケースが散見されます。
・粉体の粒度や硬度
・流速や落差の大きさ
・スラリーの場合の固形分の含有率
これらをヒアリングし、テストピースや過去の交換履歴を分析して最適材質を導き出し、コストパフォーマンスを最大化することが求められます。
耐薬品ライニング部材とは:用途と特徴
耐薬品性とは何か?
耐薬品ライニング部材は、主に「化学的な腐食」から設備を守るためのものです。
苛性ソーダ、塩酸、硫酸などの強酸・強アルカリ、あるいは溶剤や油脂など、多様な化学物質が製造設備内部に接触します。
金属やコンクリート母材ではこうした薬剤に長期間さらされることで、穴あき・膨潤・腐食劣化などの深刻な損傷が起こります。
主な用途
耐薬品ライニングは以下の設備に多く使用されています。
- 化学プラントの反応槽、タンク、配管
- メッキラインや排水処理装置
- 医薬品・食品業界の設備
- 半導体・電子部品工場の薬液ライン
代表的な材質
耐薬品ライニング部材には高分子材料が多用されます。
- フッ素樹脂(PTFE、PFA、FEPなど):最高レベルの耐食性
- 塩化ビニル樹脂(PVCやCPVC):コストと耐薬品性のバランスが取れる
- ゴムライニング:特定の薬剤に強い天然ゴム、合成ゴム(例えばEPDM)
- ガラスフレークライニング:ガラスの耐食性と樹脂の施工性を両立
薬液の種類や温度・濃度、施工方法によって最適な材質が異なります。
選定時の現場ポイント
薬品との接触条件、つまり
・薬品の名称(グレードや純度も重視)
・使用温度
・連続・断続運転の別、希釈頻度
これらを正確に現場レベルで洗い出すことが必須です。
「似たような薬品だから」と安易に安価な材質を選ぶと、思わぬ事故や生産停止につながりかねません。
耐摩耗ライニング部材と耐薬品ライニング部材の違い
根本的目的の違い
耐摩耗ライニングは「物理的な力(摩擦・衝撃)」から保護することが主目的です。
一方で、耐薬品ライニングは「化学的な力(腐食・溶解)」から保護することが目的となっています。
材質選定の考え方の違い
耐摩耗では「硬度」や「弾性」「厚み」が軸となります。
逆に、耐薬品では「耐化学薬品リスト」「高・低温挙動」「膨潤や脆化の有無」を重視します。
ここが大きく異なるポイントです。
兼用できる場合・できない場合
現場では「両方の特徴が必要」なことも少なくありません。
例えば、「腐食性スラリー」を扱う設備や、「塩酸混合粉体」を送るラインなどです。
こうした場合、複合材(フッ素樹脂+ゴムライニングなど)や、厚膜セラミック+特殊樹脂コーティングで設計することが増えています。
しかし、共存性のない組み合わせ(耐摩耗だが耐化学性に劣る金属系など)は避けなければなりません。
現場で起きがちな失敗例・注意点
ケース1:カタログスペックだけで選定
業界では「過去の納入実績」や「商社からの薦め」で材質を決めてしまう場面がいまだ多く存在します。
現場の実情と合わないことで、設備の早期損傷・修理コスト増につながることが少なくありません。
ケース2:メンテナンス性を軽視
耐摩耗も耐薬品も、100%メンテナンスフリーを期待するのは難しいです。
現場作業者が交換しやすい設計や、部分補修が可能な施工法をあらかじめ取り入れることが、トータルコスト削減の鍵です。
ケース3:業者任せで意思疎通不足
施工業者や材料メーカーの試算・推薦だけを鵜呑みにすると、工場独自の運用ノウハウやメンテ習慣とミスマッチを起こします。
自社のユーザビリティやメンテ履歴、現場の声を必ず反映しましょう。
調達・購買バイヤーの視点で押さえるべきポイント
コストだけでなく「ライフサイクルコスト」を意識
イニシャルコストの安さだけで選ぶと、
・ライニング交換頻度の増加
・生産停止期間の拡大
・小修理の度重なる発注と現場作業の非効率化
など、総合的なコストアップを招きます。
バイヤーは「製品寿命」「現場の交換手間」「ダウンタイム」まで加味した総コストで提案・折衝することが、サプライヤーとの差別化にもつながります。
サプライヤーから見ると「現場データ」が最重要
バイヤーが設備情報や過去の損傷傾向、薬品リスト、運転パターンといった「定量的・具体的な現場データ」を明示すると、サプライヤーはより最適なアドバイスやカスタマイズ提案が可能です。
単なる「見積もり依頼」から一歩進んだ信頼関係を築くことができます。
納期・検査方法・トレサビリティも要チェック
特に耐薬品ライニングは、素材のロットや製造履歴、施工記録が品質保証の根拠となります。
書類・検査証明・立ち合い検査などの運用は、今後ますます厳格化しています。
日本独特の「実績主義」や「長期安定稼働の文化」を再確認しましょう。
昭和から令和への変化と今後の展望
アナログからデジタルへの転換
まだ多くの現場では、個人の経験や「長年の勘」で材質・メーカーを選ぶ習慣が根強く残っています。
一方で、IoTやセンシング技術による「摩耗量のモニタリング」「腐食進行のリアルタイム把握」といったデジタルデータの活用も進み始めています。
ライニング部材の選定も、これからはデータドリブンで予防保全型にシフトしていくでしょう。
サステナビリティと新素材動向
近年では、SDGsやGHG排出削減、ライフサイクルアセスメントといった環境視点が購買活動にも求められています。
バイオマス由来樹脂や、再利用可能な耐摩耗材料、低VOC施工型ライニングなども登場しつつあります。
これらの新しい潮流にアンテナを張り、積極的に現場で検証する姿勢が、製造業強化の新たな鍵となります。
まとめ:バイヤー・サプライヤー・現場の三位一体で最適化へ
耐摩耗ライニング部材と耐薬品ライニング部材は、目的・材質・採用現場が大きく異なります。
しかし、どちらも「現場課題の深掘り」「適切な材質選定」「実務に根差した施工・運用設計」が不可欠です。
購買バイヤーは「現場データとライフサイクルコスト」の重視、サプライヤーは「技術的な提案力と現場目線のサポート力」、現場は「小さな改善提案とフィードバック」を絶えず行い、三位一体で最適化に挑む姿勢が、デジタル化・サステナブル時代にも求められています。
「部材選定は単なるコストカット」ではなく、「設備の持続的な成長と企業価値向上への投資」であると位置付けることで、これからの日本のものづくりはさらなる高みへ進むと確信しています。
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