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営業目線と購買目線が頭の中でぶつかる毎日

営業目線と購買目線が頭の中でぶつかる毎日
はじめに:なぜ営業目線と購買目線は「衝突」するのか
製造業の現場に長年身を置いて痛感したのは、営業と購買が常に同じ方向を向けるわけではない、という現実です。
売り手と買い手――この2つの視点は言葉の上では対立関係に見えますが、実は現場では密接に絡み合い、しばしば葛藤や摩擦を生みます。
特に昭和から続くアナログ思考が色濃く残る業界においては、その「目線の衝突」は日常茶飯事といってよいでしょう。
この記事では、営業目線と購買目線がなぜぶつかるのか、どう対処するのが実践的か、そしてこれからの製造業に必要な「新しい地平線」について、現場経験に基づいて深掘りします。
営業目線―「売りたい」「拡げたい」という本能
営業の本質は、いかに自社の商品・サービスを顧客に選んでもらうかにあります。
値下げ競争が激しく、同じような製品が並ぶ市場で、他社との差別化を図るには、時として過剰な提案が求められることもあります。
営業の頭の中では、「納期を短くできないか」「仕様をもっと柔軟に応じられないか」「あと1円でも下げてもらえないか」という思考が常に渦巻いています。
これは「顧客の要望を満たす」イコール「自社の信頼と売上を守る」という至上命題に根ざしています。
購買目線―「少しでも安く、安定的に、安全に」の呪縛
一方、購買担当の思考回路は全く異なります。
彼らの役割は、良質な原材料や部品を、少しでも安く、安定して、安全に調達すること。
サプライヤーには「値下げ交渉」「品質保証」「納期順守」など、厳しい要求を突きつけます。
購買の購買による購買のための働き――誤解を恐れずに言えば、彼らは「社内のための消費者」なのです。
言い換えれば、顧客のために利益を守り、コスト削減に命をかけているともいえます。
両者がぶつかる理由―「利害」と「使命感」の違い
営業にとっては「もっと売りたい」が正義。
購買には「もっと安く確実に仕入れたい」が正義。
同じ会社にいながら、使命感も評価軸も立ち位置もこれほど違う。
特に製造業のような大人数が関与するプロジェクトほど、営業と購買の対話は「攻防」「駆け引き」に終始しやすい傾向があります。
私は工場長時代、営業と購買が些細な納期や価格で意見をぶつけ合うのを何度も見てきました。
「ルールだから仕方ない」と割り切る人もいれば、「もっと本質的な対話が必要」と考える人もいます。
しかし現場で求められるのは、“その衝突すらも活用して最適解を引き出す”ことなのです。
アナログな現場がもたらす「根強い壁」
DX化や自動化、電子調達プラットフォームなど新しい潮流が進む一方、中堅や下請け層を中心に「電話とFAX」「人間関係重視」のアナログ商習慣が手堅く根付いているのも製造業の現実です。
この環境では、営業・購買いずれの担当者も「根回し」や「顔を立てる」など、デジタルを超えた気遣いが必要です。
「現物(サンプル)を見てみないと品質がわからない」「図面が手元になければ話が進まない」――こうした現場主義が両者の交渉を複雑化させ、時に非効率さを生みます。
人間関係が良好ならトラブルは回避されますが、少しでも感情がもつれると、全てがストップしてしまうことも珍しくありません。
デジタル化とラテラルシンキングで解決策を導く
では、この「営業目線 vs 購買目線」問題をどう捉え、どう解決すべきなのでしょうか。
ひとつは“ラテラルシンキング”――既存の枠にとらわれない思考法です。
たとえば購買がサプライヤー選定や調達コストにこだわるあまり、必要以上にスペックを厳しくしてしまうケース。
ここで、「顧客が本当に欲しいもの=営業が提案する内容」を再定義し、「本当に満たすべき品質基準は何か」をゼロベースで見直してみる。
この議論を営業・購買の垣根を超えて行うことで、調達仕様を無駄に膨らませることなく、コストと品質のバランス点を追求できます。
デジタル化も有効です。
たとえばクラウドを活用した価格・納期のシミュレーションや、情報共有プラットフォームによる仕様変更の即時反映など、従来の「人力承認フロー」や「紙&FAXベース」からの脱却で、両者の情報格差・感情的摩擦を低減できます。
ともに「最終的なゴール」を意識し、“共通のKPI”で行動することが、最終的には生産現場全体の効率や価値向上につながるのです。
バイヤー志望者・サプライヤー従事者へのアドバイス
バイヤーを目指す方、あるいはサプライヤー側から購買部門(バイヤー)の本音を知りたい方へ。
購買のプロは、単に「安く買う」「条件を引き出す」だけが仕事ではありません。
むしろ重要なのは「全社最適」と「顧客起点」のバランス感覚です。
営業と同じく、市場動向や顧客要望に敏感でありながら、社内の製造・品質・財務など“全方位”をカバーする調整力が問われます。
サプライヤーの立場で考えると、バイヤーは「自分たちだけに安くしてほしい」と願っているわけではありません。
品質や納期、供給安定性・技術開発力――あらゆる面で「現場の困りごと」に敏感です。
バイヤーとの商談では、納期・価格だけでなく、共に「改善」や「コストダウン策」に取り組み、信頼と共創の意識を持つことが、長期取引や有利な条件につながります。
これからの「モノづくり」と必要な資質
AIやIoT、グローバル化など大きな潮流の中で、営業も購買も「自社だけの都合」では立ち行かなくなっています。
昭和のような属人的手法から、より客観的でデータドリブンな意思決定へ。
一方で、最終的に受け手となるのは人間です。
営業と購買が対立するのではなく、「なぜぶつかっているのか」を言語化し、納得するまで意見を交わす力(論理×感情の統合力)が強く求められます。
今後は部門の垣根を超え「全体最適」「サプライチェーン全体の進化」を担う人材――たとえば調達経験を活かした営業、営業視点を持った購買など、越境型のキャリアがますます重要になるでしょう。
まとめ:衝突は「進化の源泉」
営業目線と購買目線。
異なる価値観がぶつかる場は、短期的にはストレスの温床ですが、長期的には現場を進化させるエネルギー源でもあります。
アナログとデジタル、利害と信頼、過去と未来――その「はざま」に立ち、現場レベルで最善手を模索し続けること。
これこそが、令和のモノづくりに生きる私たちが共有すべき姿勢ではないでしょうか。
現場のリアルと苦労を知るあなたに、この記事が視野を広げるきっかけとなれば幸いです。
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