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鍛造プレス用金型ホルダ部材の固定不良が生む危険

目次
はじめに
製造業の現場では日々、多様なトラブルや課題が発生します。
その中でも、鍛造プレス用金型ホルダ部材の固定不良は、想像以上に重大なリスクを内包しています。
特にアナログな体質が残る業界では、「今まで大事故は起きていない」「職人の勘と経験でなんとかなってきた」といった油断が根強く、重大なインシデントにつながりかねません。
本記事では、20年以上現場を見てきた筆者の視点から、固定不良の発生原因とその実態、そして予防策に迫ります。
鍛造プレスと金型ホルダ部材の役割
鍛造プレス工程は、莫大な圧力で金属素材を成形する代表的な加工プロセスです。
多くは自動車、建設機械、産業用設備のシャフト、ギア、フランジ等の製造に利用されています。
その中核をなす金型ホルダ部材は、成形用金型を正確な位置に固定し、繰り返しのプレス荷重に耐えうる堅牢性と精度が求められます。
製品精度は金型の取り付け精度に大きく依存し、ホルダ部材の固定状態の良し悪しが工程品質全体、ひいては現場の安全性を左右するのです。
金型ホルダ固定不良が招く主なリスク
製品精度不良とコスト増
固定不良があれば、当然ながら金型そのものが微細にズレます。
この微細なズレが繰り返されることで、寸法公差を満たせない不良品発生、表面の打痕・クラック、焼付きや金型破損など、多岐に渡る問題が発生します。
結果、不良品のリジェクト、再鍛造や再加工といった手戻りが増加し、現場の生産性と利益率を強く圧迫します。
重大な災害リスク
固定不良は最悪の場合、金型自体の落下や飛散事故、部材の破断による人的災害、周辺設備の損傷等、一気に現場を危険地帯へと変貌させます。
実際、筆者が知る限りでも「普段はなかったグラつきを放置した結果、突如金型がずり落ちて作業員を負傷させた」「不完全なクランプ締結が原因で金型が吹き飛び、隣の設備を直撃した」など、“ちょっとした油断”が大きな事故に繋がったケースがあります。
設備そのものの損耗促進
金型やホルダ部材の固定不良状態でプレスを続行した場合、金型自体のみならず鍛造プレス機のラムやボルスタ、治具、周辺ユニットにも異常な力が働きます。
小さな締結部品の変形やすきまの発生が、やがて機械本体のフレーム割れや変形、寿命の著しい短縮につながっていきます。
結果的に保全コスト増、頻繁なライン停止が発生し、競争力をどんどん奪われていくのです。
なぜ固定不良が根絶されないのか
現場の「あるある」原因
固定不良の直接要因は以下の通り、決して一つに限りません。
– 金型交換時の締結ボルトやクランプの締付け不足、トルク管理の未徹底
– ホルダ部材自体の摩耗・変形・割れ
– 油や切削屑の噛み込みによるスリップ
– 老朽設備での締結部のがたつき(クリープ現象)
特に昭和時代からの設備・やり方を引き継いでいるラインでは「昔からOKだったやり方」が常態化し、目視・手の感触・音・経験則での感覚的判断がメインとなっている現場も少なくありません。
こうした現場文化や「評価されるのは納期優先・段取り短縮・生産数」といった価値観が、“固定不良の芽”を見過ごしがちな本質的な要因です。
バイヤー・サプライヤーのジレンマ
バイヤー(調達購買)視点では、「コスト低減」「納期短縮」「安定した品質」が常に追求されます。
一方で、部品サプライヤーは日常的な価格競争や型投資負担にさらされ、品質・安全よりもコストに目が行きがちです。
こうした調達現場のハードなリアルが、本来必要な部品の品質検証やメンテナンスの手間・コスト圧縮につながり、固定不良のリスク増加を招くことがあります。
固定不良防止のため、今すぐできる対策
現場管理職・作業者への啓発とスキル標準化
現場の皆さんは、実は「危ない」と直感しながらも、業務優先・納期プレッシャーでつい軽視しがちです。
まずは固定不良がなぜ危険か、具体的なヒヤリ・ハット事例や統計データを交えて、全員に危機感を共有しましょう。
さらに、金型交換・固定作業の手順を明文化し、工具やトルクレンチの定期的なメンテナンスも徹底していくことで、属人的な“カン”から脱却できます。
熟練者ゆえの「俺のやり方」は悪くありませんが、何かあった時に再現できる“標準”に落とし込むことがポイントです。
設備自体の点検・アップデート
老朽設備には、部材・締結部の摩耗や変形がつきものです。
定期的な点検・記録・部材交換が肝要です。
AIやIoTを組み合わせたトルク監視、異常振動センサ、金型セット時の自動チェックなどの先進ツールも、有効な投資対効果を得られるでしょう。
また、新規導入やリプレイス時には、固定部の材質や構造の見直し、作業性・冗長性を考慮した設計提案もバイヤー・設計者双方で擦り合わせておくことが重要です。
バイヤー視点の“攻め”の提案力
バイヤー職に就く方は、価格交渉だけでなく「安全・品質・生産性向上につながるアイデア提案」を積極発信しましょう。
例えば、金型ホルダ部材の材質グレードアップ、耐摩耗処理の付加、見える化(固定状態を可視化するインジケーター)等を部品サプライヤーに共同検討してもらうのも効果的です。
サプライヤーは、「品質に厳しい要求は金額増に直結する」と思いがちですが、“現場のムダ・危険・修理コスト減少”の提案ストーリーを上手く示せれば、両者にとってメリットのある新しい関係が生まれます。
事例紹介:固定不良による事故の教訓
かつて自動車部品工場で実際にあった事例です。
段取り替え時、急ぐあまり古い金型ホルダの締結確認をせずにプレス開始。
成形開始数ショット後に金型が微細にズレ、金属ワークがうまく抜けずプレス機が緊急停止。
運良く重大事故は免れましたが、社内ルール改訂、全設備点検、現場研修のやり直し、大量の不良品・納期遅延発生と、莫大な“見えないコスト”が生じました。
「安全・品質は“ただのコスト”ではなく、全体利益の礎」だという根本原則が再認識された瞬間です。
現場の意識・バイヤー発想 “昭和から令和”の変革へ
変化の速い市場。
新しい生産技術・安全設備の導入スピードも増す中、昭和時代の“とりあえず動けばいい”という文化だけでは戦えません。
現場感覚とデジタル化を融合し、現実的なリスク低減策を地道に積み上げていく。
その積み上げが二度と戻らない災害防止、新規顧客の信頼獲得、ひいては事業の持続的成長につながることを、忘れてはいけません。
バイヤーの皆さんも、サプライヤーの皆さんも。
“今までなんとかなったから”を疑い、“もっと安全・確実・利益の出る仕組み”へと知恵を出し合い、現場の地平線を開拓していきましょう。
まとめ
鍛造プレス用金型ホルダ部材の固定不良は、小さなミスに見えても現場に大きな災害リスク、想像以上のコスト、事業継続の危機をもたらします。
現場の感覚と最新技術、双方の強みを活かし、根本から対策し続ける。
一歩一歩の積み重ねこそが、これからの製造現場を守り、業界全体のアップデートを実現する道です。
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