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フランジ部材の面粗さ不足が密封不良を生む背景

目次
フランジ部材の面粗さと密封不良問題の本質
フランジ部材は、配管や機器の接続部として欠かせないパーツです。
多くの産業現場で使われているフランジですが、現場ではしばしば「密封不良」というトラブルが発生します。
この密封不良の大きな要因の一つが「フランジ部材の面粗さ不足」にあります。
しかし面粗さと密封性の関係は、実際の現場でどこまで理解されているでしょうか。
今回はこの実践的な問題に踏み込み、現場目線で「なぜ面粗さ不足が密封不良を生むのか」、その背景や影響、またアナログ的な業界カルチャーも踏まえ解説します。
フランジ部材の面粗さとは何か
面粗さの基礎:Ra、Rzって何?
面粗さとは、表面の凹凸の度合いを示す値で、英語で「Surface Roughness」と呼びます。
代表的な指標として、Ra(算術平均粗さ)、Rz(最大高さ粗さ)などがあります。
工業的には「μm(マイクロメートル)」単位で管理されることが多く、図面には例えば「Ra3.2」などと記載されています。
現場の肌感覚では「ツルツル」「ザラザラ」で表現されることも多いですが、数値はシビアな品質保証の拠り所になります。
特にシールやガスケットを挟んで密封するフランジ面は、この面粗さ管理が極めて重要になります。
なぜ面粗さが重要なのか?
フランジの接合部は、ガスや液体が漏れないよう絶対的な密封性が必要です。
しかし、金属同士がいくら高精度で加工されても、ミクロ単位で見ると完全な平面・鏡面ではありません。
そこに空隙(すきま)が生じ、このひずみが漏れの起点になります。
シール材(ガスケット)は、この微細な凹凸に入り込み圧縮されることで液体やガスの通り道(リークパス)を塞ぎます。
しかし、表面の凹凸=面粗さの管理が悪いと、シール材が正しく密着せずリークパスを遮断できません。
つまり面粗さが規格より粗い(または逆に細かすぎる)場合、期待したシーリング効果が得られず漏れの原因となるのです。
密封不良が発生する具体的なシナリオ
面粗さ不足=なめらかすぎる面は本当に危険
「面粗さ不足」とは、一般的には仕様よりも『なめらかすぎる』状態を指します。
意外ですが、面粗さは細かいほど良い、というわけではありません。
たとえばシールガスケットの種類によっては、あえてある程度の『ザラザラ』があったほうが密着性が高まります。
具体例を出します。
標準的なガスケット(非金属系)が使われる場合、フランジ面のRa値は3.2~6.3μm程度が良いとされています。
ここで精密な仕上げを目指しRa1.6μmなどに極限まで磨いてしまうと、ガスケットが滑って位置ずれ・密着不良が起くケースが増えます。
その結果、圧力がかかった時などに一気に漏れ(ブローアウト)が発生するリスクが高まるのです。
昭和的な現場カルチャーと面粗さ管理
日本の製造現場、特に昭和から続く事業所では、熟練工の“肌感覚”や経験知が今も根強く残っています。
「オレの手触りでわかる」
「昔からこのやり方でトラブルなかった」
こうした職人技がすぐれた品質を支えてきたのは事実です。
しかし、グローバル環境下で求められる品質保証やトレーサビリティ、そして人材の多様化には、数値で語れる明確な基準が必須となりました。
とりわけフランジ部材は一度トラブルを起こすとダウンタイムや安全事故に直結するため、面粗さ測定器による管理、工程標準化、記録の保管が求められています。
現場で見落としがちな密封不良リスク要因
面粗さ測定の誤差と検査抜け
現場での面粗さ測定は、ピックアップ式粗さ計などの測定器を使う場合が多いです。
ですが、測定場所の斑(むら)、定期的な校正の未実施、測定方向の違いなど、意外な落とし穴が少なくありません。
また、量産現場ではロットごとに抜き取り検査が中心となり、部分的な不良を見逃しやすい傾向もあります。
このため
・ロット全体の傾向把握とともに、ハイリスク品や重要保安部品の全数検査
・測定器の定期校正と手順の統一
・測定者間のバラツキ対策(教育・標準化)
が現場改善のポイントとなります。
ガスケット材質と面粗さのミスマッチ
フランジの密封性は、ガスケット(シール材)の材質や構造にも強く依存します。
たとえば金属系ガスケットは、相手フランジ面が粗すぎると、密着が確保できません。
逆に非金属ガスケットは、面粗さが細かすぎると滑ってしまう。
また、最近増えているPTFE系やセミメタルガスケットでは、最適な面粗さ規格が異なる場合もあります。
これらの知見を理解せずに、「図面通りの数値だけを見る」「昔ながらの標準値を使い続ける」ことが大きな密封不良リスクです。
バイヤー・サプライヤーは面粗さの何をチェックすべきか
バイヤー目線でのリスク管理
バイヤーが外注先でフランジ部材を購入する場合、カタログスペックや見積価格だけでなく、
「面粗さをどのレベルで管理しているか」
「測定体制・工程保証は信頼できるか」
を必ず確認することが重要です。
また、出来上がり品の抜取り検査データだけではなく、QC工程(工程ごとの品質管理観点)や認証体制も確認しましょう。
“面粗さ規格を正しく守っているか”は、取引上の信頼性そのものです。
サプライヤー目線での付加価値提案
反対にサプライヤー側では
「顧客の想定ガスケット材質・使用条件に本当に合った面粗さになっているか」
「面粗さ測定データをロット毎に提示し付加価値とする」
「面粗さ異常時の発生原因・再発防止策を明示しレポーティングする」
などの“攻めの品質提案”が他社との差別化につながります。
現場の声を吸い上げ、バイヤーが安心できる証憑(データや記録、標準書)提供も顧客満足に直結します。
今こそ新たな面粗さ管理へシフトを
デジタル化とIoTで見える化
近年は、面粗さ測定値をIoTプラットフォームで自動記録・トレーサビリティ化する動きが進んでいます。
工程ごとに測定結果をリアルタイム監視し、異常値自動アラームを発生させる仕組みも出てきました。
これまで「職人の勘」で頼ってきた部分から、「機械で見える化・数値化」へ。
これにより属人化脱却、教育の効率化、顧客への説明力アップなど多くのメリットが生まれます。
図面に頼りすぎない現場相互理解
最後に、フランジ部材の密封不良を防ぐには、単純な面粗さ数値だけでなく
「どの工程で粗さ異常が生まれる?」
「ガスケットの進化や現場ニーズは?」
「バイヤーとサプライヤーが本音で語れる現場力は?」
こうした現場の気づき・意識共有が最強のトラブル未然防止策です。
クロスファンクションな協力や、技術者・調達担当者が現場を訪問し合う“現場交流”も今こそ重要です。
まとめ
フランジ部材の面粗さ不足は、密封不良という重大なトラブルを生み出す原因です。
現場での感覚や職人技も大切ですが、これからの時代はデジタル管理と、バイヤー・サプライヤー、設計・生産現場の三位一体でのノウハウ共有が求められます。
ものづくりの理想は、全員が“なぜこの数字なのか”を共通理解し、未然防止を徹底することです。
「面粗さはただの数値」ではなく、現場の安全・品質・信頼を支える生命線であることを、今一度現場で再点検していただければと思います。