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投稿日:2026年1月7日

純正部材と互換部材で差が出やすい鍛造プレス部位

はじめに:純正部材と互換部材の違いとは

製造業の現場に20年以上身を置き、調達や生産管理から工場の自動化まで経験してきた筆者が、現場目線で最も敏感に感じてきたのが部材調達の難しさです。
特に鍛造プレス部品における「純正部材」と「互換部材」の選定は、現場の歩留まりや品質、そしてコストに直結するため、常に頭を悩ませる課題でした。

純正部材とは、各メーカーが自社製品専用に設計・製造した交換部品です。
一方、互換部材は、サードパーティが純正品を模倣して製造する製品で、物理的な寸法やスペックを厳守して作られますが、必ずしも純正と全く同じ品質や性能とは限りません。

昭和から続く、アナログ色の強い現場では、「純正=高品質・高コスト」、「互換=コストダウン・品質疑問」と短絡的に片付けられがちですが、果たして本当にそれでいいのでしょうか。

この記事では、鍛造プレスの各部位において純正部材と互換部材の違いがどこで、どのように「差」として現れるのか。
また、なぜその差が生じやすいのかを現場の目線で解説します。
バイヤーやサプライヤー、現場担当者それぞれの視点で、より実践的な選択ができるような知識を提供します。

鍛造プレス部品の現場でなぜ「純正vs互換」が論点になるのか

なぜ鍛造プレス工程で部材選定が難題となるのか

鍛造プレス機は”金型”と”加圧機構”を中心に、複数の重要部品から構成されています。
高強度・高精度を求められる過酷な環境下で稼働し続けるため、部品ごとに異なる特性と寿命があります。

コストダウンや迅速な現場対応を狙って純正以外の互換部材を選ぶケースも増えていますが、安直に置き換えると重大なトラブルにつながりかねません。
特に鍛造プレスの場合、以下のような複合的な事情があります。

– 一度の故障やダウンが生産全体に波及
– 微妙な誤差が寿命や歩留まりに大きく直結
– 金型と加圧機構という高価な主要部品のメンテ頻度が高い
– 長期継続生産(数十年オーダー)のため、初期仕様の再現性にこだわる業界風土
– 減価償却を強く意識したコスト管理の必要性

こうした背景から、調達担当や現場担当者は「純正(OEM)にこだわるべきか」「互換品ならどこまで許容してよいのか」というせめぎ合いに日々悩まされています。

純正部材と互換部材の「差」が出る理由と現場事例

なぜ本質的に差が出るのか 「素材」「形状」「後処理技術」の観点から

純正部材と互換部材が「互換」である以上、カタログスペックや図面データでは大きな違いは見えません。
現場で差が出てしまう要因は、おもに次の3つの観点に集約できます。

素材:同じ鋼材でも“質”は異なる

例えばSCM(クロムモリブデン鋼)やSKD(熱間ダイス鋼)といった記号で指定された鋼種でも、溶解炉や製鋼メーカーの違いにより微量元素、介在物、鋼組織が微妙に異なります。
鍛造プレスの主要部品では、表記上は同じ合金でも耐摩耗性・靭性が数%単位で変わり、長期使用において割れや傷が出やすくなります。

形状精度:髪の毛一本分の違いが大問題に

鍛造プレスの「金型」やシャフト部、スライド部品などは、0.01mm~0.03mmレベルの公差管理が必要です。
互換部材の多くは量産や大量供給を目的とするため、加工工程や検査基準が純正品より甘くなりがちです。
初期組み込み時には問題を生じなくても、振動・熱膨張・繰り返し荷重によって、わずかな寸法誤差が「かじり」や「シール破損」などのトラブルとして顕在化します。

後処理技術:表面硬化や熱処理の違いが寿命をわける

耐摩耗部位や摺動部には、熱処理や窒化処理、表面コーティング等の「後処理」が施されます。
純正品の工程ノウハウと同一処理がなされていなければ、数ヶ月~数年後の使い勝手や保全間隔に大きな差が出ます。
この「工程ノウハウ」は図面や標準書には記載されないため、サードパーティの互換メーカーには真似できない部分です。

現場で顕著に差が出やすい鍛造プレス部位ベスト3

さて、筆者の経験と現場ヒアリングから「純正部材でなければ差が出やすい部位」を具体的に紹介します。

1. バックアッププレート(ダイセットプレート)

金型と本体フレームの間に配置される板状部品で、鍛造時の衝撃重要荷重を吸収します。
板厚・面粗さ・面圧耐性に微妙な差が生存寿命を区別します。
純正品と互換品では、数十万ショット後の「割れ」「圧痕」「歪み」に明確な差が出ることがあります。

2. ラムシャフト/ガイドピン

繰り返し押し込み運動をする軸部品で、公差・直角度が0.02mmオーダーで管理されます。
高精度品ほどコストアップしますが、互換品の許容公差が緩い場合、数ヶ月使用後に「異音」「偏摩耗」「焼き付き」が発生します。
特に古い型式プレスでは、ラミナー流動やガイド部摩耗も無視できません。

3. クッション部(ダイパッドなど)のバネ/油圧部材

補助加圧やワーク保持に使う部品群は、負荷条件が設計通りかどうかが肝要です。
互換品バネの場合、応力歪曲線や耐疲労性が純正品と同等とは限らず、5万~10万ショットレベルで「たるみ」「座屈」が起きるリスクがあります。
油圧・空圧部品も、シール材質や内部構造に純正独自のノウハウが盛り込まれていることが多いです。

純正・互換の選定 現場目線の意思決定フロー

購買・調達で「使い分け基準」をどう作るか

コスト重視の時代とはいえ、全て純正を使うことが正義なわけではありません。
バイヤー目線では、コスト・納期・品質をどうバランスさせるかが最重要です。
サプライヤーとしては、「どの部位になら互換を提案できるか」「純正を死守すべき部位は?」「現場担当者の心理」といった実情を理解する必要があります。

目安となる意思決定フローを例示します。

意思決定フロー(現場ヒアリング+分析例)

1. その部品は「安全性」「生産継続性」にどれだけ影響するか?
 →YESなら基本は純正、NOなら互換品も検討
2. 初期投資と全体ライフサイクルコストを比較する
 →純正が高コストだが寿命やトラブル低減なら、長期総コストで再評価
3. 過去の歩留まり/故障データから影響部位を分析
 →直近3年のトラブルTOP10を重点的に純正化、それ以外は互換もOK
4. 在庫・納期リスクと緊急時対応可能性を判断
 →互換品による納期短縮や調達多様化も大きな武器
5. サプライヤーの技術力を精査(プロセス監査)
 →互換メーカーの技術・品質保証体制も入念に監査

デジタル時代における部材選定と現場イノベーション

部材選定も「データドリブン」が主流に

昭和の時代は「勘と経験」、つまり現場技能者の経験則が全てでした。
しかし今は、IoT・AIによる故障予兆や寿命管理が発達し、「どの部位が互換部材でリスク低減できるか」が、データ分析から明らかになりつつあります。

たとえば、各ショットごとのトルク、温度、振動のセンシングデータをクラウド上で管理することで、「互換ピンの寿命は純正の80%」「このセクションは互換バネでも99%の稼働率」など「数値で判断」できる時代です。

人依存から「知見の見える化」「組織ノウハウ化」へ

ベテラン担当者の勘や経験も依然として重要ですが、それらを可視化し、標準作業手順書や予防保全プログラムに落とし込むことで、最適な部材選定が組織的に実践できるようになります。

品質・コスト・納期の三拍子すべてを最大化するには、多店舗・多国籍展開やリモート監視時代にマッチする新たな現場イノベーションが不可欠です。

まとめ:現場を守りつつ「戦略的調達」で一歩先へ

鍛造プレス部材の「純正vs互換」論争は、今後も現場の永遠のテーマですが、正しい知識・データ・現場事例に基づいて意思決定すれば、コスト競争力と安定操業の両立も不可能ではありません。

「どの部位で差が生じやすいのか」「なぜその差が出るのか」「どうすればリスクを最小化しつつ新たなイノベーションに繋げていけるのか」。
製造業の未来は、こうした深い現場知識とラテラルシンキング(横断的な発想)によってこそ切り開かれます。

バイヤー、現場技術者、サプライヤー、様々な立場の皆さんが部材調達で悩んだとき、この記事が現場の “地平線” を広げる一助となれば幸いです。

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