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水害対策工事の効果検証ができない現実

目次
はじめに:水害リスクが高まる日本の製造現場
ここ数年、日本国内では記録的な集中豪雨や台風による大規模な水害が頻発しています。
特に、沿岸部の臨海型工場や河川沿いの工場が甚大な被害を受け、操業停止やサプライチェーンの寸断も深刻な社会課題となってきました。
そのため、多くの製造業では水害対策工事に莫大な投資を行い、浸水防止壁や排水ポンプ、止水板、敷地構造の見直しなどのハード面の強化を図っています。
しかし、水害対策工事を実施した現場の担当者や工場長がいまだに頭を悩ませるのが「果たして本当にこの工事が効果を発揮できるのか」という点です。
これは、他の設備投資とは一線を画す特殊性があります。
水害対策工事の「効果検証」が難しい根本的理由
1. 実被害が起きる確率が低いことへの矛盾
まず、水害対策の効果を“実証”したいのなら、実際にその工場が水害に遭遇しなければなりません。
しかし、頻発するとはいえ特定の工場が毎年水没するわけではありません。
10年に一度あるかないか。
その間、工事の対策が本当に効いたのか、幸運に水害が来なかっただけなのか判断できません。
2. 実際の気象条件と工事仕様のずれ
水害対策工事は過去の最大想定降雨や氾濫のデータに基づいて行われます。
しかし、これを遥かに超える規模の豪雨が発生する可能性も否定できません。
設計基準を超えた災害が来れば、対策工事も「想定外」で無力化することがあり得るのです。
3. シュミレーション・演習による限界
大規模な訓練や浸水想定シミュレーションを実施して対策有効性を確認する例もあります。
しかしこれも「机上の計算」に過ぎません。
大規模停電、通信途絶、人的パニックが重なる本番さながらの現場状況は、事前演習では再現しきれません。
4. 定量的なKPIの設定難易度
生産性や品質のように定量的に評価できるKPI(重要業績評価指標)がないこともネックです。
「何もなかったから効果があった」。
この証明は困難であり、その評価も「本当に正しかったか?」と後になるほど薄れていきます。
業界に根付く“昭和的”体質が、さらに検証を困難に
1. 投資判断プロセスにおける「お上頼み」体質
多くの製造現場では行政の補助金や自治体の指導、系列企業の情報をもとに類型的に工事を進める傾向が色濃いです。
自社独自のリスクシナリオや現場ヒアリングを欠いたまま、標準的対策に終始してしまうケースが目立ちます。
2. 「前例主義」からの脱却の困難さ
設計基準や水害マニュアルはどうしても前例に頼りがちです。
「過去の最大洪水」と「これから起きるかも知れない未曾有災害」の間のギャップは、組織文化としてはなかなか吸収されません。
独自のリスク想定は「やりすぎ」とされ、現場から疎まれることもあるためです。
3. 組織内コミュニケーションのタコツボ化
水害対策工事は、設備部門・施設部門・生産現場・購買・経営陣それぞれが絡む多部門横断型プロジェクトです。
このため、調整・情報連携の不全が起こりやすく、現場実態と投資の方向性がずれたまま意思決定される場面も散見されます。
実務家として「効果検証」に近づくための現場発ラテラルシンキング
こうした状況下で、製造業の現場担当者や購買バイヤーがより納得感を持てる「効果検証」に近づくためにはどうアプローチすればよいか。
1. 「あり得ない事態」を起点に逆算するリスクテスト
発想を逆転し、「今考えうる最悪ケース」を仮定して、そのとき何が起こるか現場目線で徹底的に洗い出します。
各自の経験値を持ち寄り、「こうなったら絶対困る」を可視化し、そこから必要な具体対策を埋めていきます。
2. インシデントレビューによる実態の共有化
他工場や他業種で実際に起きた水害事例の“当事者インタビュー”や“被害写真・映像”を活用し、リアリティのある演習・レビューを繰り返します。
「もしウチだったら?」の視点で現有設備や組織体制の脆弱性を浮き彫りにします。
3. 定性的なKPIやマイルストーンを活用する
「○年に一度は対策設備の稼働試験を必ず実施」「被害想定レベルに対し現段階の防災力は○%強化された」など、定量でなくても「みんなで進捗を把握できる約束ゴト」に落とし込み、見える化する工夫が有効です。
4. 調達・サプライヤーの知見を“現場言語”で活用
水害リスク対策製品を開発・提供しているサプライヤーの失敗事例や他顧客情報を積極的に吸収し、自社現場のリスクイメージと擦り合わせます。
バイヤー起点で「現場が本当に使えるものか、緊急時に素早く設置できるのか」を、とことん現物検証してみせることで、経験知を組織へ落とし込めます。
今後の流れと読者へのメッセージ
水害対策工事は「やったから終わり」は絶対にあり得ません。
むしろ「想定を超えてくるリスク」と「組織の古い体質」を見据え、常に自社現場の特性やリアルな運用実態を“深掘りと見直し”していく姿勢が、結果的にいちばんの“保険”になります。
この新しい地平を切り拓くのは、現場と調達、サプライヤーの知恵と経験のかけ算です。
業界に根付いた昭和的なやり方も否定せず、「継続的見直し」と「現場参画型のリスク対話」を続けましょう。
バイヤーを目指す方、そしてサプライヤーとしてお客様の真の困りごとを知りたい方。
ぜひ“起きた後の後悔”にしないためにも、「今ここ」にあるリスクに正面から向き合う目と行動力を磨いていってください。
私は、長年の実体験から「工場は人で動く、人こそが最も大きなリスク低減の鍵」だと確信しています。
水害対策工事の効果検証は難しいですが、「現場知」への深い対話と創意工夫で、きっと真のレジリエンスを形にできるはずです。
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