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シーリングファン設置後に発覚する電源容量の制約

目次
シーリングファン設置後に発覚する電源容量の制約
はじめに
シーリングファンは、工場や倉庫など大規模な製造現場から家庭に至るまで、空気循環および省エネ対策として根強い人気を誇っています。
特に製造業の現場では、空調効率向上や室温ムラの解消、省電力化への対応としてシーリングファンの導入は増加傾向にあります。
しかし実際に導入を進めてみると、設置後に「電源容量が足りない」という課題が顕在化し、せっかくの投資効果が損なわれてしまうケースが少なくありません。
本記事では、シーリングファン導入時に見落とされやすい電源容量の制約という実務上の落とし穴について、現場目線で解説します。
さらに、事前調査や関係部門との調整のポイント、昭和的なアナログな業界慣習に根ざした問題点、そしてバイヤーやサプライヤーが押さえておくべき視点も交えて、深掘りしていきます。
なぜシーリングファン設置後に「電源容量の壁」に直面するのか
1. 設計段階での「部分最適」思考が生む盲点
シーリングファンの導入は、通常、現場の快適化や省エネ、環境改善を目的に発案されます。
そのため、「導入する台数」「取り付ける範囲」「既存の照明器具の代替 or 追加」といった局所的な検討に意識が集中しがちです。
しかし、施設全体の電源負荷や分電盤の容量、工場全体の配電設計まで踏み込んだ「全体最適」までを意識する機会は案外少ないのが現実です。
部分最適で進んだプロジェクトは、いざ設置工事のタイミングで「うちはこれ以上コンセントがない」「盤のブレーカー容量が足りない」といった想定外の事態を招きます。
2. 古い工場・ビル特有の電気設備の限界
昭和時代に設計された多くの工場や事業所の電気設備は、増改築、設備追加を幾度となく繰り返しており、竣工当時のままの盤構成や回路になっているケースも多いです。
既存の設備に新たなファンを追加した結果、「どこに接続すればよいのか」「追加で20Aの余裕は本当にあるか」などが、いざ着工段階で初めて明らかとなり、現場が混乱します。
古い配電図面が現存していなかったり、現状の使用状況が口伝え(アナログな情報管理)でしか伝わらないケースも、電源容量制約の発覚が後手に回る要因となります。
3. サプライヤー・バイヤー間コミュニケーションの「温度差」
サプライヤー側は、製品のカタログ上の消費電力や仕様を説明しますが、取り付け場所の配線状況や工場独自の電気使用パターンまでは把握していません。
一方、バイヤーや現場担当者は「現場に入る設備機器のスペック」「空間的制約」を主に意識し、電気設備負荷までは十分に考慮しないことがあります。
このすれ違いが、最終的に設置現場で「これはつなげない」「追加工事が必要」「納期がずれ込む」といった問題を引き起こします。
電源容量制約の具体的な事例
ケース1:工場の既存照明交換時に電圧降下が発覚
工場全体の蛍光灯器具をLED照明+シーリングファンに一括で切り替えようとしたA社のケース。
設置計画段階では「LEDは省電力」という先入観で話が進みましたが、既設の照明回路にシーリングファン(1台あたり70W×20台)を同時接続したところ、負荷が集中。
点灯時の瞬間的な電圧降下や配電盤のトリップが頻発し、結局、専用回路の追加と分電盤の拡張工事が必要になりました。
LEDの省エネ分を見込んでいたにも関わらず、突発的な追加工事とコスト増に頭を抱えることとなりました。
ケース2:ビルテナントで消防法制約と電源容量が交錯
ビルテナント(工場・倉庫兼オフィス)が天井にシーリングファンを後付け導入しようとしたB社の例。
ビル所有者からは「既存天井配線の負荷が大きい」「非常用回路と混在不可」「消防法上の申請がいる」と指摘され、計画段階ではシンプルに見えた工事が想定外の障害に直面。
最終的には、ビル管理者・消防当局・リース会社と複数社の調整、追加の電源引き回し工事まで発展し、導入時期が大幅に遅れました。
バイヤー・サプライヤーの“思惑”が絡むケース
サプライヤーは「この機種は並列で数台までOK」「配線工事は簡単」と営業的に訴求しがちです。
一方、バイヤーはコストと短納期重視、現場は追加工事や稼働停止を極力避けたいという思惑が交錯。
結果的に「後から電源が足りない」「配線工事費が予算オーバー」「夜間休日稼働でコスト増」といった“読み違い”が発生しやすくなります。
シーリングファン設置で電源容量の問題を防ぐための実践ポイント
1. 必ず「配電盤の現状」を調査する
現場にとって一番大切なのは、新規機器を追加する際に必ず配電盤(分電盤)の回路・容量を実態で確認することです。
建屋の図面や旧資料だけでなく、現場でテスター、分電盤ラベル、カバー開閉による実地調査を行い「どの回路が何用か」「今すでに何A使っているか」「余裕容量はいくつあるか」を必ず押さえましょう。
2. サプライヤーには「設置現場図面」をきちんと渡す
サプライヤー任せにせず、必ず現場の配線図・レイアウト図を準備し、「どの回路にどうつなぐか」「既存コンセントがどの系統なのか」まで開示する姿勢が重要です。
サプライヤーからも「負荷計算書」「推奨配線方式」の提出を求め、疑問点は現地立会い確認をセットで実施するのがベストです。
3. 昭和的アナログ管理の限界を直視する
「どこにつなぐかは現場の○○さんが知っている」「配線は昔からの決まり」で済ませていたやり方は限界にきています。
配電盤や配線経路を一元管理する仕組み作りや、継続的な台帳整備・デジタル化を進めない限り、想定外の事故や容量オーバーによるトラブルは必ず起きます。
今後は、現場×設計×購買×サプライヤーの「情報共有のプラットフォーム化」や「QR台帳、電子化」なども実践の選択肢になってきます。
電源容量トラブルを防ぐためのプロセス・業界動向
1. 設備投資計画時の「電源負荷見える化」
最近は、増設計画段階からあらかじめ「新規機器リスト」と「負荷合計」を見える化し、段階的に電源容量配分を設定する動きが広がっています。
工場インフラの“健全な運用”(コスト、BCP、エネルギー管理)に直結するため、全社一丸で取り組む事例も増えています。
2. サプライヤー提案内容の変化と責任範囲の明確化
業界として、従来の「納品したらおしまい」ではなく、事前の現場調査や施工管理、試運転完了までを含むパッケージ提案の比重が高まっています。
サプライヤー/工事会社と「誰が」「どこまで」責任を持つかを契約上明確化することも必須です。
3. サブスク型サービスやIoT化の波
シーリングファンや空調設備も、稼働監視や遠隔制御、異常検知まで含めたIoTソリューションが広まりつつあります。
設置前後の消費電力状況を“見える化”し、データで繊細な設備計画を立てていく流れが今後の主流になるでしょう。
これにより、設置後に発生していた“想定外の電源容量不足”も早期発見、即時対応できる体制が整い始めています。
バイヤー・サプライヤーが押さえるべき“考え方”と今後の展望
バイヤー視点のポイント
– 導入初期のコストだけでなく「あとで発生する追加工事コスト」「生産現場の稼働停止リスク」「エネルギー管理負荷」まで含めて投資判断する
– 現場担当、工務・インフラ担当、サプライヤーと初期段階で役割分担・チェックリストを作成する
– IoTや台帳デジタル化等、今後の“現場管理DX”も見据えて設備投資を評価する
サプライヤー視点のポイント
– 単なるスペック提示だけでなく、「現場の負荷状況」「配線の方法」「他設備との電源バッティング」まで提案力を高める
– 導入初期から工程管理、アフター保守、トラブル時の対応体制もパッケージで提示し、顧客と“協業”目線で伴走する
– ユーザー設備管理者への教育や啓蒙活動もセットで提案し、アフターまで見据えたビジネスモデルを志向する
昭和的な現場慣習からの脱却
– 口伝え、ベテラン頼み、通い台帳等のアナログ管理から、IoT・デジタル台帳、データ可視化へと舵を切る必要性
– とはいえ“現場知(カンコツ)”も引き継げる仕組み(現場ナレッジの形式知化)を同時にすすめる意識が重要
まとめ:電源容量問題は「全社的テーマ」へ
シーリングファン設置に伴う電源容量の制約は、単なる現場配線の問題ではありません。
日本の製造業では、長年のアナログな管理慣習や部門縦割り文化のなかで、潜在的な設備インフラの限界が覆い隠されてきました。
これからは「部分最適」から「全体最適」へ、現場・サプライヤー・バイヤーが真の意味でタッグを組み「見える化」「協調管理」にシフトする時代です。
皆さんの現場でも、シーリングファン設置時にはぜひ「電源容量」という落とし穴に注意を払い、事前準備と部門連携を徹底してください。
そして、昭和的な現場慣習に安住せず、今こそDXの第一歩(インフラの見える化、業務プロセスのアップデート)にチャレンジしていくことが、これからの現場競争力向上に欠かせません。
製造業の発展と、現場で働く皆さんの安心・安全・効率化のために、この記事が役立つことを願っています。