- お役立ち記事
- データ分析を始めたのに仮説が立てられない問題
データ分析を始めたのに仮説が立てられない問題

目次
データ分析を始めたのに仮説が立てられない問題
はじめに:データ分析はなぜ「仮説」でつまずくのか
製造業の現場では「データ分析」を使った改善活動が当たり前になりつつあります。
IoTによる自動化、AI導入、QC活動……。
しかし、いざ「データを分析しよう」としたとき、「そもそも仮説が立てられない」という悩みに直面する現場担当者は少なくありません。
私自身、長年工場長や購買、品質管理といった様々な立場でデータ分析を進めてきました。
その実感として言えるのは、「データ分析の前に必要なのは、技術よりも現場の目線と思考の柔軟性」だということです。
この記事では、昭和から抜け出せないアナログな業界風土の中に根強く残る“思考停止”の罠と、そこから新しい価値を生むための仮説思考の鍛え方、現場で実践できるラテラルシンキング手法について、具体例を交えながら解説します。
なぜ現場では「仮説」を立てにくいのか
そもそも仮説とは
「仮説」は単なる思いつきではありません。
現場で言う「仮説」とは、データを見る前に“根拠や目的”を持って「こうなるはずだ」と予想し、その結果とのギャップから真の課題やヒントを見出すための“仮の答え”です。
しかし多くの現場担当者は、
– 「何から手をつけて良いかわからない」
– 「思い込みや経験だけで判断してしまう」
– 「数字自体を疑う習慣がない」
そんな壁にぶつかります。
昭和的マインドが障壁になる理由
「経験と勘」が重視される製造業、とくに中小規模・老舗企業は、長年積み重ねたやり方・価値観を守る傾向が強いです。
また過去の失敗や「見て盗め」文化の中で、「なぜそれが問題なのか?」を問う習慣が乏しい現場が多いのも事実です。
その結果、
– 「データを取れ」と指示されて数字を集めること自体が目的になる
– 仮説を立てずに“とりあえず”全部分析する(=問題の本質がみえない)
– データ解析に詳しい“外部の専門家”に丸投げして現場が受け身になる
こうした現象が頻発します。
「仮説が立てられない」のは能力不足ではなく、長年の文化や思考停止の慣習が原因なのです。
バイヤー・サプライヤーの立場から見る仮説の重要性
バイヤーは本質を見抜く仮説思考が求められる
調達購買・バイヤーの世界でも、単純な「価格交渉力」より“課題発見力”が問われる時代になっています。
例えば、供給不安や品質不良が発生した際、「なぜ今起きているのか?」を突き詰めて仮説を持ち、それをサプライヤーと共有しながら改善サイクルを回すことが成果につながるのです。
サプライヤーは「バイヤーの視点」を仮説的に持つ
一方、サプライヤー側がバイヤーに刺さる提案をするためにも、バイヤーの頭の中を仮説的に想像することが重要です。
「この仕様変更がバイヤーの生産ラインにどんな影響を与えるか」
「納期短縮要請の背景にはどんな市場変化があるのか」
こうした“相手起点”の仮説を自社のデータや現場感と結びつけて考える力が問われています。
仮説を立てる力は「現場×データ」で磨ける
なぜ“現場感覚”が必要なのか
大手や先端企業がAIやBIツールを導入しても、現場で思うような成果が出ないケースはよくあります。
なぜなら、データは「現場で起きていることの数字化」でしかないからです。
たとえば、生産効率が落ちている=本当に設備の老朽化だけが原因なのか?
多品種少量・変則シフト・人のスキルマップなど“数字に表れない現場の変数”を仮説として挙げることが、データ分析成功のカギです。
現場のプロは「なぜ?」を掘り下げる習慣がある
私が工場長時代、歩留まり悪化に悩んで各種データをとっても答えが出なかった経験があります。
しかし、現場スタッフとの立ち話や、わずかなラインの異音など、「あれ、おかしいな?」と感じる違和感や、“なぜ”と問い続ける姿勢が、分析するべきポイントの仮説を生み出してくれました。
つまり、現場の五感とデータで仮説を立てることが最強の武器なのです。
ラテラルシンキングで仮説力を鍛える方法
固定観念を疑う:まず「真逆」に振ってみる
– 例:「不良原因は“装置の古さ”」→「実は最新設備の方が問題を生みやすいのでは?」
– 「納期遅れを“ヒトの問題”と決めつける」→「工程そのものにミス誘発の余地がある?」
常識の“裏側”の仮説をもち、一度極端に振ってみることで、隠れていた要素や因果関係に気付くことができます。
3つの「なぜ?」で本質に迫る
問題発生→なぜ?→原因→なぜ?→さらに深掘る→なぜ?……
表面的な現象から離れ、「本当に追いかけるべき仮説」が何なのかを、自問自答で明確化します。
データと現場の“点と線”をつなげる
特定の工程だけ不良が多い、特定の時間帯だけ歩留まりが悪い……
データに「ズレ」や「パターン」が見えたら、その前後(点と点の間)に何があったかを、時間軸や工程フローで追いかけてください。
この工程の間で、材料ロットが変わる? 作業員が交代になる? 設備の校正がされていた?
点と線をつなげてこそ、仮説力が伸びます。
チームで仮説を出し合う「コラボレーション」
一人で仮説を考え込むのではなく、他部門、現場スタッフ、調達担当、サプライヤーも巻き込んでみることも有効です。
見方が広がることで“想定外”の仮説が生まれ、本質に迫りやすくなります。
アナログな製造業の現場で仮説思考を根付かせるには
小さなトライで成功体験を積む
いきなり壮大なテーマを仮説で解決するのはハードルが高いです。
日々の「なぜこの順番で作業するのか」「なぜ手作業が残っているのか」といった小さな疑問を出発点に、仮説→検証→改善のサイクルを繰り返すこと。
これこそが、アナログな現場の中に“仮説文化”を根付かせる第一歩です。
「失敗しても良い」心理的安全性が生む仮説の数
仮説は必ずしも当たらなくて良いのです。
“間違えても大丈夫”“気付いたこと・感じたことを言える”空気をリーダーや現場管理者が作ることが、データ分析の実効性を高めます。
見える化とナレッジ共有の仕組みをつくる
例えば仮説のアイデアノートを部門横断で残す、小さな仮説×対応事例を社内SNSや掲示板でオープンにするなど、知恵や失敗も含めたナレッジの積み上げが、次世代の仮説力を底上げします。
まとめ:現場目線から“データの使い手”になる
データ分析を始めたのに仮説が立てられない——それは、現場力・仮説力・ラテラルシンキングの“現実世界に根ざした思考”が重要であることを、私たちに示しています。
昭和的な思い込み、アナログ文化を悪と決めつけるのではなく、現場のリアルな観察や日々の疑問こそ仮説の種です。
バイヤー、サプライヤー問わず、「なぜ?」「もしこうなら?」と思考を深め、データと現場感覚を掛け合わせることで、製造業の明日を変えるイノベーションが生まれていくはずです。
自分なりの仮説力を磨いて、あなたの現場や取引先に新しい価値を届ける“データの使い手”として活躍してください。