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チャットボットが社内問い合わせを減らせない理由

目次
はじめに:なぜチャットボット導入が増えているのか
近年、製造業の現場でもデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せています。
特に、社内の業務効率化や人手不足解消策として、チャットボットの導入が活発になっています。
現場でよく耳にするのは「担当者への問い合わせが多すぎて、本来業務が進まない」「定型的な質問は自動で対応したい」といった課題です。
こうした理由から、チャットボットが注目されている背景をまず整理しておきます。
しかし、実際に多くの現場で「社内問い合わせ数が思ったほど減っていない」「結局、人が対応している」という声も多く聞こえてきます。
なぜ、チャットボットは社内問い合わせ削減という期待された効果を十分に発揮できていないのでしょうか。
チャットボットが想定どおり機能しない理由
1. 現場の暗黙知や現場感覚を理解できていない
製造業では、現場独自の呼び方や表現、略語、過去の経緯に基づくルール、そして「阿吽の呼吸」といった暗黙知が根強く残っています。
例えば「Aライン」「月次棚卸」「標準工数」といった言葉は、社内でも部門ごとに微妙に意味が異なることがあります。
チャットボットはこうした前提や文脈を理解せず、“表層的なFAQ”しか回答できません。
多くのチャットボットは「質問→回答のパターンマッチング」がベースです。
しかし、現場の社員が実際に知りたいことは「なぜいまそれを聞くのか」「どの順序で何を進めるべきか」「自分の置かれた状況ではどう判断すればいいのか」など、よりヒューマンな側面が多いのです。
また、「昨日の出荷遅延、A工程が原因?」といった、状況依存型や感情を含む問い合わせには対応できません。
この隙間こそが、なかなかチャットボットが現場になじまない大きな要因です。
2. ナレッジデータベースの更新と現場とのギャップ
チャットボットの「学習材料」となるナレッジデータベースの充実も課題です。
製造業の現場は日々変化し、小さなルール改訂や運用変更が頻発します。
たとえば、部品の発注手順が変わった、図面と実際の相違が現場で修正された、という些細なことほど、現場の問い合わせにつながります。
これらの“生きた情報”は、現場メンバーが持つ経験則や個人記録、口伝えレベルで閉じていることが多いです。
ナレッジベースは現場自身が更新してこそ現実にマッチしますが、多忙な現場で「データの更新」自体が後回しになる現実を、導入側も認識しておくべきです。
結局「古いFAQしか出てこないボット」という評価に陥り、社員は「やっぱり人に聞いたほうが早い」となってしまいます。
3. 「問い合わせる側」の心理的障壁が想定以上に高い
「チャットボットを試してみて、使えないと感じると、それ以降使おうとしなくなる」——これは昭和世代だけでなく、デジタルネイティブ世代含めて多くの声です。
“AIに質問しても、結局たらい回しで時間のムダ”という経験が一度でもあると心理的ハードルが一気に上がってしまいます。
生産管理や調達現場では、「いまの自分の悩みがどんな言葉で質問すればいいか分からない」と感じるケースも多いです。
人間同士なら、「あの時のトラブルどうやって解決した?」とざっくり聞くことができますが、チャットボット相手だと「キーワードを何と入力すればよいか」と戸惑う担当者がいまだに多くいます。
結果、「うまく活用できず放置されるチャットボット」が増えてしまい、本来の目的である問い合わせ数の削減にはつながりません。
4. アナログ文化が根強く残っている
製造現場は先端的なライン自動化装置やIoT機器を導入しながらも、意思決定やノウハウ伝承はアナログ的な口伝え文化が根強く残っています。
「部長に直接聞いた方が確実」「あの人に電話で確認しないと不安」といった古き良き“現場感”が業務の下支えになっているのです。
こうした文化は、単に非効率なのではなく、「コミュニケーションによるリスクヘッジ」「属人的な信用による迅速な判断」といった強みでもあります。
チャットボットを導入する際、この“人との接点の持つ価値”を否定しない使い方を模索することが肝心です。
失敗しないチャットボット活用のためのヒント
1. チャットボットと現場ベテランの“共存”を設計する
現場に根付くアナログ文化と、デジタルツールであるチャットボットは「二者択一」ではなく、「共存」させるのが現実的です。
たとえば、チャットボットが「簡単な案内やFAQの初期画面」となり、解決できないときは自動的に担当者へ繋げる“ハイブリッド運用”が効果的です。
また、現場のベテラン職員の「質問への回答」を定期的にヒアリングし、ナレッジとしてチャットボットにフィードバックしていく運用も重要です。
これにより、チャットボットの精度は徐々に上がり、現場とのギャップが縮まっていきます。
2. 分かりやすい“入口”と“質問の仕方”の工夫
「どう聞けばいいか分からない」という障壁を下げるには、「選択式の質問例」や「よく使われるキーワード集」をチャットボットの入口に置くと効果的です。
また、「もしよく分からなければ、ココからお困りのことをざっくり教えてください」といった自然な導線にすることで心理的なハードルも下がります。
社内のイントラネットや作業手順書、業務マニュアルとリンクさせて、「答えを自力で探しやすい」「ステップバイステップで案内する」といった設計も、アナログ文化に馴染んだ現場には有効です。
3. 「小さな成功体験」の積み重ねと現場主導型の運用
最初から大きな変革を目指すのではなく、「あの部署で、簡単な申請手続きがボットでラクになった」という小さな成功事例を全社で共有し、地道に“使えるツール”としての認知度を高めていくことが実は一番の近道です。
現場のリーダーやキーパーソンが「自分たちのツール」として活用を促す現場主導型の運用が、チャットボット定着のカギになります。
サプライヤー・バイヤーが知っておくべき現場目線
調達・購買業務では、サプライヤーからの膨大な問い合わせをいかに的確にさばくかが現場の効率化に直結します。
しかし、チャットボットの導入により逆にサプライヤーとのコミュニケーションがギクシャクするケースも出てきています。
理由の一つは「形式的な回答しかできないボットではサプライヤーの本音や懸念をすくい取れない」こと。
たとえば、納期交渉や品質不具合の相談など、ビジネスマナーや業界特有の慣習が絡む問い合わせには、やはり人手での柔軟な対応が欠かせません。
バイヤー側も「チャットボットは、あくまで社内用のツールであり、取引先との信頼関係や場面ごとの臨機応変な受け答えにはまだ限界がある」と認識しておくことが重要です。
逆にサプライヤーの立場からすれば、「ボットにしかつながらない会社=非人間的で冷たい印象」というリスクもあるため、アナログな“人の目線”を忘れず心掛けるべきです。
まとめ:技術と現場の融合が本質的な生産性向上のカギ
一足飛びのDXも、便利なRPAやチャットボットも、「現場目線」や「人と人との温度感」を無視して浸透することはありません。
現場の声やアナログ的価値観を否定せず、現実に根差した運用ルールや継続的な改善活動こそが、「問い合わせ業務の本質的な削減」につながります。
チャットボット導入は、業務効率化のための“手段”です。
「現場の課題」「運用現場の声」「人間でなければできない仕事」と「自動化できる業務」を見極め、地に足のついたデジタル活用を進めていきましょう。
経験豊富な皆さんの現場目線からの積極的なフィードバックが、持続可能な製造業変革の原動力となります。
ぜひ「チャットボット失敗あるある」も前向きに共有いただき、業界発展の一助となれば幸いです。