調達購買アウトソーシング バナー

投稿日:2026年2月2日

社員研修DXが現場OJTを弱体化させる問題

はじめに:DX時代の製造業と現場OJTの葛藤

製造業の現場では、社員育成の要として古くからOJT(On the Job Training/現場教育)が根強く受け継がれてきました。
一方で、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せる今、社員研修にもデジタルの力が積極的に導入されつつあります。
研修DXは、デジタル教材やeラーニング、バーチャル工場見学、シミュレーターなど、多様な手法が手軽に導入できることから急速に広がっています。
この動き自体は素晴らしいものであり、私自身も「情報の公平な共有」や「遠隔地人材の育成」という利点を強く実感しています。

しかし、製造現場を20年以上見てきた立場からすると、「現場力の根幹をなすアナログのOJT文化」が破壊されかねない危うさも同時に感じます。
今回は、社員研修DXが現場OJTを弱体化させるどんな問題を孕んでいるのか、バイヤーやサプライヤーとしてどのように現場教育を捉えるべきか、実例や現場感覚も交えながら深く掘り下げていきます。

現場のOJTとは何か?製造業での役割

OJTの本質と昭和的現場文化

OJTは業務の現場で、先輩や上司が直接指導しながら教育する仕組みです。
導入コストはゼロ、現実の「不良が出た」「機械が止まった」「計画が狂った」といった突発的なトラブルを目の前にして、指導者と習得者が同じ感覚・五感を使って解決します。
指や道具の使い方の細かいコツ、機械の異音に気が付く勘どころ、複数の仕事を同時に進める段取りの体感。
テキスト通りの理論では学びきれない「暗黙知」の継承にOJTは絶大な効果を発揮してきました。

昭和時代から続く現場の文化は、このOJTを中心に回ってきたと言っても過言ではありません。
カイゼンの提案やQC活動などの現場改善も、この直接的なやりとりや「仲間で汗をかく」経験が土台にあったのです。

人材育成におけるOJTの強み

1. 実際の設備・材料・工具を使い、その場で習得できる
2. 目標(品質や納期)が具体的かつ即時に可視化される
3. 現場ならではの段取り・チームワークが感覚として身につく
4. その企業独自の慣行や判断基準も同時に学べる
5. 困難な状況ほど、多くを学べ「現場力」が鍛えられる

このようなOJTの強みは、デジタル化が進んだ今も、依然として“製造の競争力”の源泉です。

社員研修DXの実態とそのメリット・限界

DX研修、なぜ必要とされているのか

一方、企業の生き残りをかけた事業変革の渦中で、研修DXの導入が必要不可欠になっています。
その主な理由は以下のとおりです。

・人手不足・熟練工の不足による教育負荷の平準化
・多拠点・海外現地へのノウハウ速やかな水平展開
・人材の多様性(性別、母国語、バックグラウンド)の尊重
・教育の効率化・定量化(標準教育コンテンツの構築と効果測定)

eラーニングや動画教材、操作シミュレーターなどを使えば、短期間でたくさんの社員に均一な知識・技能を伝えやすくなります。
熟練者の引退や、現場のタテ社会崩壊を補う策としても有効です。

DX研修のメリット・成功例

・遠隔地でも同一内容の教育を一斉に受けられる
・反復学習が容易で、習熟に合わせた繰り返しが可能
・教材の更新や改訂が迅速、法改正や顧客要求への追従も容易
・効果測定や記録管理が自動化され、評価が透明
・物理的設備への依存が小さく、コスト効率が良い

事実、最近の工場新設プロジェクトや海外生産拠点立上げの現場では、現地スタッフ用に日本語+現地語対応のDX研修コンテンツが重宝されています。
また、労働災害対策やコンプライアンス教育、標準作業への理解度チェックなど、“紙・口頭では曖昧になりがちだった分野”で、DX研修は欠かせません。

強みと限界

ですが、こうしたDX研修にも、現場からは次のような実感ベースの“限界”の声が多くあります。

・知識の「暗記」には強いが、「使いこなす」には弱い
・現場特有の判断、イレギュラー対応が身につかない
・五感(音・匂い・触覚)を使う技能まで伝わらない
・新人の「分かったつもり」と、現場での「できる」のギャップが拡大

実際、動画で「溶接」や「機械段取り」を学んでも、いざ現物を前にすると「全く勝手が違う」という声や、“失敗体験”を経ていないことの怖さ——。
これがDX研修の一番のリスクなのです。

なぜ現場OJTは弱体化するのか?

DX研修の浸透による「現場力」の希薄化

現場で繰り返し語られるのが、「最近の若手は、人に聞いて解決する前に動画やPDFを見るだけで済ませてしまう」「分からないまま現場に放り込むと、判断ミスや作業ミスが増えている」という懸念です。
デジタル化によって、現場OJTそのものが“古臭い非効率な手法”と見なされる傾向がすすみ、「まず動画で基礎を学べ」「教科書どおりやって」、ではOJTの“経験の継承”がなおざりにされがちです。

こうして、
・現場作業の標準化やマニュアル化は進んでも、暗黙知の喪失
・目の前にあるリアルなトラブルへの感度や解決志向が弱まる
・対人スキルやチームコミュニケーション(阿吽の呼吸)が育たない
・「学びを会得するプロセス」の体験機会が減少する

こうした「現場感覚」の空洞化が、最終的には現場力の低下や品質トラブル、納期遅れ、不良の多発、事故リスク増大につながります。

アナログ現場ならではの問題

特に日本の製造業では、設備や作業自体がアナログ色の濃い現場がまだ大多数です。
こうした現場でこそ、新人育成には“現場の泥臭さ”“五感をフル活用”したOJT指導が不可欠です。
にもかかわらず、コスト削減や人手不足の流れからOJTそのものが「効率化=DX化」の名の下に縮小傾向にあり、現場の「人と人とのつながり」が弱体化しています。

現場のOJTと研修DX、両立の新たな地平線とは

OJTとDX研修の役割分担の理想形

現場で本当に強い人材を育てるには、「研修DXとアナログOJTは二者択一ではない」と考えるべきです。
基礎知識、ルール、全体像の習得にはDX研修の力を、現実の応用・イレギュラー対応、暗黙知の伝承にはOJTの力を活かす。
この両輪で「学び」の質・量・スピードを最大化する。
それぞれの役割分担こそが、製造現場の新しい“教育の地平線”です。

現場指導者(バイヤー・サプライヤーPOVで)の行動提案

・新人研修の最初はDXで基礎知識・基本ルールを理解させる
・現場OJTの際は、動画などと照合させ「どこが違うか」「現場ならではの注意は何か」を対話しながら指摘する
・トラブル発生時には「これこそが学びのチャンス」と捉え、失敗の振り返りや他部門との連携体験も意識的に取り入れる
・新人自身に「気付いたこと」を都度メモさせ、現場OJTの“気付き”を見える化する
・中堅層には「教える側」の経験を積ませ、個人技の属人化から“現場全体での知の共有”を推進する

DX研修を通じた知識インプット→現場OJT→DXで振り返り・弱点補強。
このサイクルをチーム全体で意識づける仕組みが求められます。

管理職・経営陣へのメッセージ

本音で言えば、効率化の波に押され“現場教育”をむやみに省力化せず、「現場力の継承=会社の競争力の維持」であることを、上層部・他部署にも正しく認識してもらう必要があります。
バイヤーであれ、サプライヤーであれ、現場で起きている本当の課題や、教育の質の重要性を経営の観点からも再評価すべきです。

まとめ:真の現場力を守るために必要なこと

DX化、効率化の波は今後も製造業を飲み込んでいきます。
しかし、どれだけ品質管理や生産スケジューリングが自動化されても、リアルな現場力・人間力が土台にない組織は、品質不良や再発事故、納期トラブルで信頼を失いかねません。
現場OJTと研修DXは、本来“補完しあう存在”です。

製造業のバイヤーを目指す方、サプライヤーの立ち位置でバイヤーの思考プロセスや現場のリアルを知りたい方も、「現場教育は現場の本質である」ことを理解し、OJT文化を大切に守り発展させてください。
研修DXの弱点と強みを正しく認識し、現場OJTとの相乗効果で新たな人材育成の地平線を切り拓いていきましょう。

未来の製造業は「デジタルでもアナログでもない、ハイブリッドな現場力」でこそ、勝ち残る時代です。

調達購買アウトソーシング

調達購買アウトソーシング

調達が回らない、手が足りない。
その悩みを、外部リソースで“今すぐ解消“しませんか。
サプライヤー調査から見積・納期・品質管理まで一括支援します。

対応範囲を確認する

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

NEWJI DX

現場のExcel・紙・属人化を、止めずに改善。業務効率化・自動化・AI化まで一気通貫で設計します。
まずは課題整理からお任せください。

DXプランを見る

受発注AIエージェント

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page