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投稿日:2026年2月19日

なぜメーカーはテストマーケティングの結果を活かせないのか

なぜメーカーはテストマーケティングの結果を活かせないのか

はじめに ― テストマーケティングの現実

製造業の現場では新製品開発や既存製品の改良において、テストマーケティングが重要な役割を果たします。

しかし、多くの製造業メーカーではテストマーケティングのデータや現場の声をうまく活用できていない現状があります。

現場で20年以上、多くの製品開発、量産化に携わってきた経験から、なぜそのような事態に陥りやすいのかを、現場目線で深掘りしつつ、製造業特有の構造や時代背景も含めて解説します。

昭和の常識が根強く残るアナログ構造

多くの日本の製造業がいまだに昭和の成功体験や、いわゆる「現場主義」にとらわれています。

現場主義そのものは決して悪いものではありません。

しかし、現場の経験則が重視されすぎるとテストマーケティングの数値的なフィードバックや、市場の変化といった「外の声」が経営に活かされず、旧態依然とした判断がなされてしまうことが多いのです。

これはデジタル化が進みにくい要因とも直結しています。

紙による報告書、対面主義、属人的な決断が繰り返され、マーケットイン(市場からの発想)の文化が根付かず、プロダクトアウト(自社都合の発想)から脱却できないことも多数見られます。

この壁を破るには、まずは現場・経営層がともに「テストマーケティングの数値や事実」に素直に耳を傾ける姿勢を持つこと。

ここが出発点となります。

意思決定プロセスの壁 ― サイロ化と情報伝達不全

製造業では部署ごとの役割分担が明確であり、しばしば情報のサイロ化が起こります。

調達、開発、生産、営業、それぞれが積み上げてきた経験や成功体験を持っており、自部門の目線最優先で物事を判断しがちです。

テストマーケティングのデータが営業部門から上がってきても、開発側や生産側が「それは現場で無理」「うちのラインでは対応できない」とネガティブになることが多々あります。

また、上層部までデータが正確に伝わらず、判断材料として機能していない場合も少なくありません。

このような情報伝達不全により、貴重な市場の声が消化されずに終わってしまうわけです。

加えて、製造業界特有の「決定までに時間がかかる」というスローペースにも問題があります。

せっかくのテストマーケティングの結果も、社内で検討しているうちに市場のニーズや競合の動きが変わってしまい、活用できなくなることも多いのです。

「数値」よりも「経験」が優先される日本型意思決定

昭和型経営の特徴として、「データドリブン」よりも「経験と勘」が重視されます。

とくに年功序列の文化が根強く残る会社では、若手社員や中堅社員がテストマーケティングのデータをもとに提案しても、「若いのに生意気だ」「そんな数値に振り回されてはいけない」と押し返されてしまいます。

実際に、工場長を務めていた私も「過去にうまくいったから」「大きな失敗にはつながらないだろう」のような“前例踏襲”の発想が強く働き、テストマーケティングの結果が軽視される現場を幾度となく見てきました。

結果として、せっかく導き出されたデータや市場の声が、最終的には上司や役員、経営層の主観や感覚で却下されるという悪循環が生まれてしまいます。

調達・バイヤーの目線からみた“活かしきれない”状況

調達・購買部門のバイヤーにとっては、テストマーケティングとは「適切な仕様の見極め」「コストと市場ニーズのバランス最適化」に直結しています。

しかし、現場や開発側が市場の声よりも「現状の取引先」や「ライン変更の手間」、既存プロセスの維持にこだわりすぎると、バイヤーの提案は通りません。

バイヤーは「市場の声を反映してサプライヤーと連携し、より価値のあるものを適切価格で調達したい」と考えています。

ですが、昭和型の発想や社内調整の複雑さにより、せっかくサプライヤーと開発した試作品・改良アイテムが検討から外されることもしばしば起きているのが実情です。

サプライヤー視点 ― “どうせ変わらない”という諦め

サプライヤー側から見ても、何度もテストマーケティングに協力しても、メーカーが従来通りの商品を選んでしまう“お決まりパターン”にうんざりしている場合が見られます。

「お客様から要望を聞かれて改良したのに、一向に発注が来ない」

「テストデータを添えて提案しても、現場や購買の動きが鈍い」

このような状態が続くと、「どうせ変わらない」「形だけのテストマーケティングだ」と諦めムードが強くなります。

サプライヤーが本腰を入れて新製品提案をしなくなるのも当然です。

ここにはメーカーとサプライヤー、またバイヤーの間の本音と建前のギャップが存在します。

テストマーケティングを活かすために何が必要か

では、テストマーケティングの結果を真に活かすために、何が必要なのでしょうか。

ポイントは以下の4つです。

1. 部門横断型の意思決定プロセスの構築

テストマーケティングの結果は、一部門だけで完結できるものではありません。

調達、開発、生産、営業などの垣根を越えたチームが、市場の声を正しく理解し、スピーディーに意思決定する「共創型体制」が不可欠です。

最近のトレンドである「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「クロスファンクショナルチーム」の活用は、この課題解決に大きく寄与します。

2. データドリブンカルチャーへの転換

数値や根拠に基づく意思決定重視のカルチャー醸成が重要です。

古い「勘と経験」だけに頼るのではなく、現場のデータ・顧客の声を定量的に把握し、納得感のある判断材料として社内で共有する。

ピープルアナリティクスやBIツールを活用し、誰もが現状を「数字」で語れるような文化にシフトしていくべきです。

3. スピード重視の意思決定

テストマーケティングの最大の価値は「いち早くマーケットの反応を捉えられる」ことにあります。

にもかかわらず、社内調整の遅さで機会損失しては本末転倒です。

稟議書や承認プロセスの見直し、トライアル展開のスピードアップなど、「まずはやってみる」文化の定着も重要となります。

4. サプライヤーとの本音の対話

メーカーとサプライヤーの信頼関係構築が、テストマーケティングの成果最大化につながります。

日常的な情報交換、テスト結果の正直なフィードバック、失敗やネガティブな反応にも真正面から向き合う姿勢が大切です。

また、「長い付き合いだから」「安定しているから」といった理由だけで従来サプライヤーに固執するのではなく、新しい提案に対しても柔軟にトライしやすい空気づくりがメーカーには求められます。

まとめ ― 昭和型から脱却し、テストマーケティングを事業成長に繋げるには

多くのメーカーがテストマーケティングの成果を活かせない最大の原因は、「昭和型」の価値観や仕組み、部署間をまたぐ組織の壁、情報活用の未成熟さにあります。

バイヤーやサプライヤーが自分たちの立場だけでなく、現場や経営のリアルな課題、協力会社の本音、顧客の変化するニーズまで想像し、全社一丸で変革を図ることが「昭和から令和」への一番の近道です。

「現場主義」に「データ」「スピード」「共創」という新しい視点を取り込むこと。

それこそが今後の製造業、ひいては日本全体のものづくり産業の生き残り戦略だと考えています。

バイヤー志望の方、サプライヤー企業の皆さん、製造業界の現場で働く方々にとって、この記事がひとつの新しい「ものの見方」となれば幸いです。

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