投稿日:2025年3月13日

破面観察(フラクトグラフィ)の基礎と破損原因推定へのポイント・事例

破面観察(フラクトグラフィ)の基礎

破面観察、またはフラクトグラフィは、材料の破損面を詳細に観察・解析する技術です。
この手法は、破損した材料の微細構造や破断パターンを調べ、破損原因を特定するために広く利用されています。
破面観察は、主に金属材料や合金に適用されますが、プラスチックやセラミックスなどの非金属材料にも応用できます。

破面観察を行う目的は、製品や部品が破損した際に、その原因を特定し、再発防止策を講じることにあります。
多くの場合、破面の微細な構造や特徴が破損原因の手がかりとなります。
そのため、破面観察は製造業の品質管理や故障解析において欠かせないプロセスとなっています。

破面観察に必要な機器と技術

破面観察には、まず適切な機器が必要です。
具体的には、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などが挙げられます。

光学顕微鏡は、比較的低倍の拡大観察に適しており、材料表面の粗い特徴を調べるのに向いています。
SEMは、高倍の拡大が可能で、破面の微細構造や表面形状を詳細に観察できます。
TEMは、材料の内部構造や結晶欠陥の観察に強く、高度な破面解析に役立ちます。

また、破面観察には、属する技術者の熟練度も重要です。
観察結果を正確に解析し、論理的な結論を導き出すためには、材料特性や破損メカニズムに関する深い知識が求められます。

破損原因推定へのポイント

破面観察から得られる情報は、多岐にわたります。
ここでは、破損原因を推定する際に重要となるポイントを紹介します。

破面の特徴とその解釈

破面の観察によって、まず取り上げるべきは破面に現れる特徴です。
具体的な例としては、脆性破壊や延性破壊の特徴、疲労破壊の繰り返し模様、応力腐食割れの特異パターンなどがあります。

脆性破壊の場合、破面はきれいに割れた状態を示し、きらきらとした光沢面が現れることが多く、顕微鏡で見ると階段状のステップが観察されます。
一方、延性破壊は、破面上に微小な凹凸が多数見られ、いわゆる「ダクトイル坑」が観察されることが特徴です。

疲労破壊では、ストリエーションと呼ばれる繰り返し疲労の結果生じたスジ状の模様が破面に現れます。
また、応力腐食割れにおいては、亀裂の周囲に化学反応による変色や腐食生成物が見られることがあります。

破壊メカニズムの識別

破面観察により、破壊メカニズムを明確に識別することが可能です。
破損がどのような過程で進行したのかを理解することは、原因の特定や対策の立案において重要です。

例えば、疲労破壊は、低応力下であっても繰り返し応力がかかることにより、アルミ合金やステンレス鋼などでよく見られる現象です。
こうした破壊は、ストリエーションやフラットな破断面が残ることが多く、観察によって疲労破壊と認識されます。

また、応力腐食割れは、腐食性環境と応力の相乗効果により発生します。
この場合は、割れ周辺の腐食生成物や表面変色の程度から推測が可能です。

破面観察の事例

ここでは、実際に破面観察によって破損原因を推定した事例をいくつか紹介します。

事例1: 誤用による金属パーツの疲労破壊

ある機械部品が稼働中に破損しました。
光学顕微鏡とSEMによる破面観察の結果、微細なストリエーションが多数観察されました。
このことから、部品が設計仕様を超えた振動を受け続けた結果、疲労破壊したと推測されました。
この事例から、設計負荷の見直しが必要であると判断されました。

事例2: 化学プラントにおける応力腐食割れ

化学プラントの配管で亀裂が発生し、透過型電子顕微鏡を用いた破面観察が行われました。
破面周囲には、硫酸系の腐食生成物が確認されました。
これにより、配管材料が使用環境における腐食に対して適切でないことが判明し、より耐食性能の高い材料への変更が提案されました。

事例3: プラスチック部品の延性破壊

プラスチック製品が使用中に突然破損したとの報告がありました。
破面観察を行うと、「ダクトイル坑」と呼ばれる微細な凹凸が見られました。
これは典型的な延性破壊の特徴であり、製造工程での温度管理不良による材質強度の低下が問題の根源であることが示唆されました。

まとめ

破面観察(フラクトグラフィ)は、材料の破損原因を探るための重要な手法です。
適切な機器を用い、熟練した技術者が解析を行うことで、破面に残された特徴から破壊メカニズムや原因を特定できます。
事例を通しても示したように、破面観察による情報は、製品設計の改善や製造工程の見直しに多大なインサイトを提供します。
製造業において、品質保証や故障解析に携わる方々には、ぜひこの技術の習得と活用をお勧めします。

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