投稿日:2025年8月9日

車載シートクーラーOEMが12Vデュアルファン+メッシュで背中蒸れを解消

はじめに:なぜ車載シートクーラーが必要なのか

現代の自動車は高度な快適性が追求されていますが、特に蒸し暑い日本の夏、座席と背中が接する部分の不快な蒸れ問題は根強く残っています。

エアコンを強めても、背中やお尻までは空調の風が届かず、どれだけ窓を閉めていても汗ばんでしまうことはよくあります。

この「背中蒸れ」は、ドライバーのみならず、長時間移動を強いられるタクシー運転手や営業職、物流ドライバーにとっても大きな健康・快適性リスクとなってきました。

そして近年、自動車の加飾や空調技術が進化する一方で、“アナログな課題”である「背中蒸れ」を根本解決する自動車用シートクーラーのOEM製品が注目されています。

その中でも「12Vデュアルファン+メッシュ」を採用したクーラーは、OEM(相手先ブランド供給)という立場で完成車メーカーやアフター市場に急速に浸透しています。

この記事では、製造業現場目線とバイヤー・サプライヤー双方の思考も取り入れながら、この分野の開発動向や選定ポイントを深堀りします。

車載シートクーラーの概要と進化

シートクーラーの基本原理

車載シートクーラーは、座席シート表面と背もたれ部に薄型の送風ユニットを内蔵し、外部から吸気した空気をファンで循環させることで、人体とシートの間に「風の通り道(通気層)」をつくります。

従来はシートヒーターに比べると補助的な位置づけでしたが、近年はエコカー化でアイドリングストップが普及し、停車中でも体感温度を下げられるメリットが拡大。

海外OEM向けはもちろん、日本国内の完成車・トラックメーカーやタクシー会社、大口レンタカー事業者まで、幅広い引き合いがあります。

12Vデュアルファン方式の新潮流

従来のシートクーラーは小型のシロッコファンやブロワファンが1個搭載され、背中または座面の片方のエリアへ送風していました。

しかし、ファン1個では風量・風圧共に不足しがちで、「中央部しか涼しくない」「四隅に風が届かない」「ノイズが意外に大きい」という現場の声も多く寄せられていました。

そこで今注目されているのが「12Vデュアルファン」の採用です。

12V電源は自動車本体の電力環境と親和性が高く、ファンを2つに増やすことで
・風量アップ
・風の均一分布
・静音化
・冗長性
という複数のメリットを生み、OEMバイヤーの間でも評価が高まっています。

メッシュ構造で“ムラ”ゼロへ

もうひとつの大きな進化が、「メッシュ素材」の導入です。

一般的なウレタンクッションや布のみのシートでは、いくらファンで送風しても生地が詰まっている部分では空気の通り道が障害物となります。

そこで、通気性と耐久性を両立した3Dメッシュ(立体網状)素材を表面および内部層に活用し、シート全面から均等に風を通す構造としました。

結果、「どこに座ってもどの体型でも、背中全体が蒸れずにサラサラ」というユーザー体感性能につながりました。

OEMバイヤーにとっての「強い商品」とは何か

なぜOEM開発が増加しているのか

近年、完成車メーカーやバスキャブ・複数の車体メーカーがシートクーラー製品を“自社ブランド品”としてラインナップに加える事例が増えています。

外部サプライヤーからのOEM供給を選ぶ主な理由は、
・機能・品質・コストを迅速に両立できる
・自社の開発リソースを他の戦略領域へ集中できる
・グローバル共通調達による部品点数低減
・現地生産やローカライズ展開が容易
などです。

また、後付け需要やアクセサリーパーツとしても活用できるため、市販ディーラー、カー用品店ルートでも販促が盛んです。

バイヤー視点での評価ポイント

OEMバイヤーの「評価眼」は年々厳しくなっています。

・素材、構造、ファンの性能、寿命、安全性
・欧州/北米規格(RoHS、CE、EMC、UL)への適合
・温度センサーやオートシャットオフなど電子回路の品質
・長期間の使用に堪える耐久試験クリア
・取り付け性(既存車両への適合性)
・グローバル対応(多言語ラベル・説明書)
などが厳しくチェックされます。

品質・性能・納期・コストを同時に追求する必要があり、現場エンジニアの経験やアナログ現場のノウハウを「見える化」できるサプライヤーが選ばれやすくなっています。

サプライヤーの勝ち筋:昭和から令和への変革

設計現場での“ラテラルシンキング”

これまでの製造業は「抜き型」「モーター」「生地」「電装品」と部品分野ごとに縦割りでした。

OEMの現場で本当に求められるのは、「シート1枚」に収まる“全体最適”設計です。

例えば、メッシュ層・送風経路・ファン配置・スイッチ配置・騒音防止材・車両への装着簡易性といった要素を、部門間の壁を越えてラテラルシンキングで俯瞰し、最適解を導き出す必要があります。

部品メーカー同士が知見や現場ノウハウを共有し、試作品段階からOEMバイヤーと透明な打ち合わせを繰り返すことが、現代の開発スタイルになっています。

アナログ業界に求められるデジタル変革

従来は設計図と熟練作業者の経験による勘とコツが重視されてきた自動車用シート分野も、IoTやデジタル設計環境の導入が進みつつあります。

・流体シミュレーションを使った風量・拡散解析
・3D CADによる取り付け簡易性のバーチャル検証
・生産工程のデジタル化とトレーサビリティ
こうした一歩先の取り組みと、従来のアナログ現場力を融合できるサプライヤーが、OEMバイヤーからの信頼を集めています。

「使い勝手」で現場に選ばれるポイント

最終的に市場で支持される製品は、「現場での使い勝手」が圧倒的に優れているものです。

ユーザーであるドライバーや乗客の立場に立つこと。
例えば
・スイッチの配置が直感的・ワンタッチで操作できる
・水拭き可能、丸洗い対応で衛生的
・低ノイズで長時間稼働しても耳障りでない
・取り付け・取り外しが工具レスで、レンタカーや営業車でも使い回せる
・故障時の保守部品供給体制がしっかりしている
といった、現場目線のこだわりが最終的な“差”となります。

OEMシートクーラー市場の今後と将来性

現在の日本では、高齢化の進行や女性ドライバーの増加、法人車両における快適性・安全志向の高まりがOEMシートクーラー需要の下支えとなっています。

また、グローバル市場では地球温暖化やエネルギー節約の観点から「個人レベルで冷却スポットを作る=車内の冷やし過ぎを抑える」という需要が拡大しています。

さらに、電気自動車(EV)や自動運転車の普及と共に、車内空間の快適性を“統合制御”するスマートシート・ウェアラブル冷却技術への布石ともなっています。

まとめ:バイヤー・サプライヤー双方が目指すべき未来

車載シートクーラーOEM市場は、ひと昔前の「とりあえず冷やせばよい」時代を脱し、「使って初めて、その価値がわかる」ステージに進化し始めています。

バイヤーはユーザー体験・品質・長期信頼性を総合的に見極め、サプライヤーは現場力+デジタル活用+顧客目線での終始一貫したサポート力が必要です。

製造業界が“昭和から抜け出せない”と言われる今こそ、アナログ現場の知恵と新技術を融合させ、益々多様化する車載快適装備市場を開拓していきましょう。

この分野で働く皆さんが、技術・現場・購買・サプライヤーそれぞれの視点で、より深い知見を得て次なる成長につなげられることを願っています。

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