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部長として最後に守りたいものは何かを考える夜

目次
はじめに
製造業現場の最前線で20年以上、調達購買や生産管理、品質管理、そして工場の自動化まで、さまざまな分野で歩んできました。
目まぐるしく変化する業界の潮流を体験しながら、時代の荒波を乗り越えてきた今、「部長として最後に守りたいものは何か?」という問いが、ふと静かな夜に心を占めることがあります。
本記事では、現場目線から現代製造業の実態と、本質的に守るべきものについて深堀りし、皆さんと共に新たな地平を開拓したいと思います。
昭和から続くアナログ体質と対峙する
なぜ製造業はアナログから抜け出せないのか
製造業、とくに日本の大手メーカーには、「昔ながら」の仕事観や価値観が今なお根強く残っています。
部品の手配書が紙ベースだったり、属人的なノウハウの暗黙知化、Excelマクロが「システム」代わりになっている現場も少なくありません。
理由は大きく2つあります。
ひとつは、「今までこれで回っていた」という成功体験。
もうひとつは、「ミスをしたくない」「大きな変化は負担が大きい」という心理です。
しかし、グローバル化・デジタル化の波は容赦ありません。
世界を見渡せば、自動化・データ活用・AI導入は競争力の源泉です。
このままアナログ体質に固執していると、取り残されるリスクが大きくなってきました。
アナログ現場の良さ、デジタル化の落とし穴
一方、アナログの良さが全否定されるものでもありません。
たとえば、ベテラン作業者による「勘と経験」は、異常の兆候をいち早く察知する場合もあります。
また、現場で直接顔を合わせて話すコミュニケーションは、信頼関係や現場力の醸成に不可欠です。
逆に、デジタル化や自動化を焦って導入すると、システムが現場に合わず混乱を招く場合もあります。
「現場の声なき叫び」を聞き漏らす危険性もあるのです。
部長として守りたいこと——三つの軸で考える
1. 安全という絶対的価値
製造業に携わる中で、最優先すべきは「人の安全」です。
事故や災害は、品質・納期・コストよりも何より優先して考えなければなりません。
どれほど効率化・自動化が進もうと、「安全なくして生産なし」という現場原理は普遍です。
生産ラインに最新のロボットを導入する際も、「ヒヤリハット」を愚直に洗い出し、未然防止策を徹底する。
そして、現場への「安全教育」「リスク感度の共有」こそ、部長として最後まで守りたい基盤であると感じます。
2. 技と心の継承
デジタルとアナログのバランスが問われる中、ノウハウや現場力の「見える化」「形式知化」は急務です。
その一方で、人から人への語り、暗黙知の伝承、現場での気付きや工夫が生まれる「心の交流」は、どんなにAIが進化しても置き換えられません。
近年、若手世代の定着課題、ベテラン定年による技術継承難が深刻です。
部長として、「技も心も伝わる現場」を粘り強く守り続けることが、製造業の持続的未来への責任だと考えます。
3. 顧客/社会の信頼
品質・納期・コストで世界トップを目指すだけでなく、「誠実に作る」「約束を守る」「困難があった時に逃げない」。
そんな地に足の着いた信頼こそ、日系メーカーの本当の強さです。
不正問題や品質偽装が連鎖的に報じられる昨今、「信頼を失うのは一瞬、取り戻すのは十年」。
部長として、「すべての判断はお客様/社会の信頼を基準に行う」という軸を、チームに根付かせ続けたいと考えています。
バイヤー・サプライヤー関係に見る「守るべきもの」
過度なコストダウン圧力への疑問
現場では調達購買も担当してきました。
近年、グローバル調達やコロナ禍の影響で、コストダウン要求がかつてなく激しくなっています。
しかし、無理な価格交渉でサプライヤーを痛めつけてしまえば、品質・納期リスクの増大や、有事の「助け合い」体制が崩壊します。
本当に守るべきものは、「最適な価格でWin-Winな関係」ではないでしょうか。
部長として、日々の発注やサプライヤー評価の中に「中長期的な信頼関係」の視点を加え、目先の数千円に惑わされない冷静さを心に刻んでいます。
調達リスク時代に求められる柔軟性とレジリエンス
ウクライナ危機や災害など、サプライチェーンの「想定外リスク」が日常となりました。
一社専属では危険、かといって調達先分散で品質管理や納期が不安定になる、というジレンマもあります。
こうした時代には、「自社工場-調達-サプライヤー」の三位一体で、リスク共有・情報公開・柔軟な協力体制を守り抜くことが肝要です。
部長として、「有事をしなやかに乗り越えられる関係性づくり」に全力を注ぎたいと思います。
これから求められる製造業の新しい「守り方」
デジタルにも「現場主義」の哲学を
DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる中、大切なのは「現場主義」と「挑戦」です。
上からの押し付けでなく、「現場で役立つ」「生産者が主役になれる」デジタル活用こそ、本質的な守り方と言えます。
データを「記録」ではなく「気付き」に変える。
ロボットやIoTを「人減らし」ではなく、「現場の創造力の発火装置」にする。
こういった姿勢を全社に示し、成功も失敗もオープンに共有することで、昭和的アナログ企業でも「変革の文化」を守り育てたいです。
サプライチェーンは「共創」の時代へ
かつてのバイヤーは「叩く」「値切る」が評価軸になりがちでした。
しかし今は、「信頼できるサプライヤーと共に新しい価値を作る」「困った時に助け合えるネットワークを築く」ことが、真に守るべき資産です。
例えば、生産現場の課題をサプライヤーと協業で解決する勉強会や、新素材の共同開発、小ロット短納期対応など、攻めの共創がいっそう重要になります。
部長として、「会社の壁」を越えて、「お互いへのリスペクト」を守る文化を、次世代に遺したいと感じます。
最後に——「守るとは、挑み続けること」
部長という立場で、さまざまな局面を乗り越え、多くの判断を重ねてきました。
安全、技と心の継承、顧客や社会からの信頼、サプライヤーとの共創関係、デジタル変革の本質。
どれも絶対に守りたい芯の部分です。
それと同時に、「守る」とは「変えること、挑み続けること」でもあると信じています。
安易な現状維持に留まることなく、現場目線で一歩踏み出す勇気が、新時代の製造業の未来をつくると考えます。
部長として、守りたいものは「人」「信頼」「挑戦する現場」——
その覚悟を、これからも静かな夜に噛み締めながら、次の世代に手渡していきたいと思います。
みなさんと一緒に、製造業の新しい歴史を切り開いていけることを強く願っています。
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