投稿日:2025年10月1日

外部人材を頼りすぎて内製化できなかった中小企業の事例

はじめに:なぜ「内製化」は製造業の命綱なのか

製造業において「内製化」とは、自社の技術力やノウハウ、現場力を最大限に活用し、製品やサービスを自社のリソースでつくり上げることを指します。

昨今はグローバル化や人手不足、デジタル化の波が押し寄せる中、内製化の重要性が改めて見直されています。

しかし、実際には外部人材や外注先に頼りすぎて、内製化に失敗する中小企業も少なくありません。

本記事では、昭和から続くアナログ気質や業界慣習と格闘する現場目線で、外部依存が招いた失敗事例をひも解きながら、内製化の本質と実現への道筋を明らかにしていきます。

バイヤー志望の方やサプライヤーの立場でバイヤー心理を知りたい方、ものづくり現場で課題を抱える方々にとって、実践的なヒントとなる内容です。

外部人材依存が高まった理由

人材不足と時代遅れの採用体制

中小企業の現場に、ここ十数年で大きな変化がありました。

それは「採用難」です。

特に地方の製造業では、若手人材の確保が極めて困難になってきました。

昭和から続く地元採用・現場叩き上げ文化が色濃く残る一方、次世代が集まってこないミスマッチが広がりました。

外部人材派遣会社や業務請負への依存が高まった背景には、こうした人材市場の激変と、社内の採用力・育成力の脆弱さがあります。

そして、結果として「知恵や技術も外部任せ」に拍車がかかります。

「外注すればコストダウン」という誤解

コスト競争が激化する中で、経営サイドとしては「外注化すれば変動費化できて柔軟に対応できる」「専門業者はプロ。自社はコア業務に集中」と考えがちです。

実際に一時的なリソース不足や試作段階では外部の専門力を借りるのは合理的です。

ですが、安易な外注化が常態化し、自社の技術力やナレッジの蓄積が滞る結果となってしまう企業も少なくありません。

「目の前のコストだけを見て、長期的な競争力や現場の力そのものを失ってしまう」ケースが後を絶たないのです。

実際の失敗事例:外部依存の負の連鎖

失われたノウハウ、止まる現場

具体的な事例を紹介します。

ある地方の部品メーカーA社では高度な溶接工程を長年外部のベテラン職人に委託していました。

社内では「溶接は○○さんに頼めば大丈夫」という空気が常態化。

技能継承や若手育成は進まず、工程の技術検証や設計改善もブラックボックス化しました。

数年後、その外部職人が高齢化で急に引退。

社内には誰ひとり、その職人の溶接技を再現できる者がいません。

「丸投げ依存」のツケは、業務停止と莫大な損失、顧客離れというかたちで跳ね返ってきました。

生産性・品質に潜むブラックボックス

また、樹脂成形メーカーB社の事例では、繁忙期の人手不足解消のため現場に短期派遣社員を大量に投入しました。

熟練オペレーターの指導・マニュアル化が間に合わず、ノウハウ伝達がほとんどなされないまま日々の業務が進んでいきました。

派遣社員の定着率は悪化、現場では“なぜこの段取りでやるのか”“どこに気をつけたら品質が上がるのか”といった問いに誰も答えられません。

気がつくと、「毎年同じミスで損失が出る」「手順改善や5Sが全然進まず、ムダが蓄積する」という状況に陥りました。

根本から現場力が失われ、経営は抜本的な改革を迫られることになったのです。

なぜ内製化が進まないのか―昭和アナログ業界の構造的課題

「職人技至上主義」の落とし穴

製造業、とりわけ中小企業では「ウチの技は口伝え」「職人なくして工場なし」という価値観が色濃いままです。

ベテラン社員や外注職人が“自分だけのやり方”で現場を回す。

一見「匠の技」に支えられた現場は強そうに見えますが、マニュアル化・見える化・IT化が進まず、誰がどこでミスをしているのか、どうすれば改善できるのかがブラックボックス化しやすいのが実情です。

これが、社員のスキルアップや標準化推進の障壁となり「外部の人にお願いするのが早い・楽」となりやすいのです。

経営陣の現場理解不足・変化恐怖症

現場のアナログ体質は、往々にして経営層の意思決定と連動しています。

「今のやり方でなんとかなってきた」「失敗したら責任をとれないから新しい方式は怖い」という消極的姿勢が根強い文化を醸成します。

設備投資や人材育成投資には消極的。しかし、人手や時間が足りないと嘆いて外部に頼る。

これでは内製化の推進力が出るはずがありません。

自社に軸のないまま、時代だけが変わり環境が激変すると、取り残されてしまいます。

外部と内製のベストバランスを探る視点

「何でも内製化」は危険、一歩立ち止まる

現場力の喪失を嘆くあまり「とにかく全部を社内でやるべきだ」という論調も誤りです。

本当にコアな技術・ノウハウ・営業価値だけを見極めて、それ以外は外部とのパートナーシップを活かす。

たとえば設計や試作は社内、量産や加工ラインの一部は専門サプライヤーという切り分けも有効です。

大切なのは「なぜ自社内でやる必要があるのか」「どこに自社競争力の源泉があるのか」を現場と経営で深く議論することです。

人材育成・技術承継の見える化がカギ

今求められているのは、「人に頼る内製化」から「仕組みによる内製化」への転換です。

OJTや職人の職場叩き上げだけでなく、作業やノウハウ、品質基準を体系的にマニュアル化・動画化・ITに落とし込むことで“誰もができる”体制を整える必要があります。

この“仕組み化”こそ、内製化の最大の近道。

ベテランの経験も「見える化」して、若手や外部人材にも着実に伝えられるようにしていかなければなりません。

内製化の実践に向けて、現場から始める3つのアクション

1. 「Why内製化?」を現場・経営で徹底討論

まずは自社の強み・弱み、マーケットで求められているコア技術・ノウハウは何なのか、外部に出せない理由と出せる案件をリストアップします。

専門部署の声だけでなく、現場作業者・管理職・経営層が一体となって議論することで、新たな地平が見えてきます。

この過程こそが、内製化プロジェクトの“芯”になります。

2. 技術・ノウハウの見える化推進

現場のベテランだけが知るノウハウ、大手サプライヤーしか持たない特殊技術、現場でしか分からない段取りや勘所を抽出し、文書・動画・ITシステムにまとめることを始めましょう。

とくに属人化しがちな「段取り替え」「トラブル判断基準」「保全・予防措置」などは重点的に見える化します。

そうすることで、だれでも同じレベルの作業や判断ができる足場が整います。

3. 小さな内製化成功事例を積み重ねる

最初から全てを内製化しようとせず、まずは「この部品だけ」「この工程だけ」と範囲を絞ってトライしてください。

小さな成功と失敗の振り返りを繰り返すことで、現場に自信が生まれ、本質的なノウハウ積み上げ文化ができていきます。

同時にこの成功事例を、社外バイヤーや取引先にも情報発信することで「この会社は現場力があり信頼できる」と評価が上がり、取引・受注獲得にもつながります。

まとめ:現場力=企業競争力、「自分たちで考える力」を取り戻せ

製造業の現場は今、大きな過渡期を迎えています。

外部人材に頼ることは決して悪ではありませんが、依存しすぎると、内製化に必要な技術やノウハウ、人材育成が後回しになり、結果的に「企業として考える力」が失われてしまいます。

変化の激しい時代こそ、現場の知恵や現場改善の積み重ねによる「現場力」が企業競争力の核となります。

バイヤーを目指す方も、サプライヤーも、そして現場で働く全ての技術者・管理者も、「自社の強みは何か? なぜ内製化が必要なのか?」を一度しっかり問い直してみてください。

そこから、新しい“ものづくり”の未来が生まれます。

そして、「人に頼りすぎる時代」から「自分たちで創り出す時代」へ、一歩踏み出してみませんか。

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