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機能ブロック別のコスト目標設定で設計と購買の対話を加速

目次
はじめに:製造業の現場で求められるコスト目標設定の新しいアプローチ
製造業において、品質・納期に次ぐ重要なテーマがコストマネジメントです。
特にグローバル競争が激化し、サプライチェーンの複雑化や材料コストの高騰、働き方改革による人件費増加など、コスト面での要求はますます厳しくなっています。
20年以上製造業の現場で実務・管理職両方の視点を経験してきた私の実感として、従来型の「全体目標だけを示すコストダウン」では限界を感じています。
そこで注目したいのが「機能ブロック単位でのコスト目標設定」。
設計部門と購買部門が深い対話を重ねるうえで、従来のアナログな枠を超える突破口となり得るアプローチです。
本記事では、その意義と実践ノウハウ、現場での課題や成功事例、バイヤー・サプライヤー双方へのヒントを、現場目線を交えて詳細に解説します。
機能ブロック別のコスト目標設定とは何か
従来アプローチの課題
以前のコスト目標設定は「製品全体でいくらコストダウンするか」あるいは「部品ごとに値下げ交渉を強いる」やり方が主流でした。
これでは、設計側は結局「どこをいじればどれだけ下がるかわからない」、購買側も「サプライヤーの協力が得にくい」など、現場でうまく機能しないケースが多発していました。
機能ブロック別とは?
これに対し、近年注目されているのが「機能ブロック」(例:制御系、動力系、筐体、ユーザーインターフェース…など製品を論理的・機能的な塊で分割したもの)ごとに分けてコスト分析・目標設定を行う方法です。
各ブロックは用途や品質要求、コスト構造も異なるため、それぞれに最適化された目標や方策が必要です。
この考え方は、多品種少量化、個別カスタム要件の増大した現在の生産現場においても、設計・購買・サプライヤーの現場知を引き出しやすい大きなメリットがあります。
機能ブロック別コスト目標が現場力を高める理由
透明性アップで「設計の意図」と「調達現実」が繋がる
設計部門は「ある機能を満たしたい」「お客様の使い勝手にこだわりたい」といった意図を持っています。
一方で購買部門は、「この仕様にはどんな材料・工法・サプライヤーを選ぶべきか」「より安く・より安定して調達できる方法は」といった別の視点を持っています。
機能ブロック単位でコスト目標やトレードオフを可視化することで、設計と購買の双方が自部門の強み・弱みを補完し合えるようになります。
たとえば、
– 「このユニットは規格部品を活用すべき」
– 「ここは溶接工程を外注化できれば大きくコストダウンできる」
– 「一部の設計要件を緩めれば、材料ランクを落とせ調達コストが半減する」
といった具体的な会話が生まれやすくなります。
曖昧な値下げから、本質的なコスト改善に転換
全体目標値だけを掲げると、一部サプライヤーや購買現場は「強引な値下げ」や「材質グレードの無断ダウン」など誤ったやり方に走りがちです。
機能ブロック別にきちんと根拠のあるコスト目標を設けることで、曖昧さが排され、「なぜ下げなければいけないのか」「どこに本質的な無駄があるか」という本質議論に集中できます。
このやり方は、昭和的な“叩き合い”調達から脱却し、“共創型調達”の文化に変革する大きなきっかけとなり得ます。
コスト目標設定の実践ステップ
1. 現行コストと構成要素の洗い出し
最初に、自社および外部調達品を含めた「現行コスト」の見える化が不可欠です。
製品を機能ブロックごとに分解し、「なぜこの部品にはこのコストが掛かるのか」を要素分解。
ここでは
– 材料費
– 加工組立費
– 購入部品費
– サプライヤー手数料・物流費
– 品質保証費
など、できるだけ細かいレベルまで洗い出すことがポイントです。
ここで設計者・生産技術者・購買・現場作業者など、現場全員の知見を持ち寄ることが重要です。
2. 市場価格・ベンチマーク調査
次に、社外の市場価格や競合他社情報、グローバルベンチマークも活用しましょう。
同じ機能を別の技術で実現している製品事例を調査すると、「なぜあちらはこのコストでできるのか?」という気づきが得られやすいです。
意外な技術トレードオフや調達方法の多様性が見えてきます。
3. 機能要件×コストの最適化シナリオを検討
次に、それぞれの機能ブロックごとに「どの部分はコストダウン余地あり」「ここは絶対譲れない品質要求」「従来発想にとらわれず技術転換できないか?」を洗い出します。
この段階では「生産現場やサプライヤーの声」が極めて重要です。
実際、「設計図面通りだと組付け効率が倍違う」「一部工程を自動化すれば3割安くできる」など、現場ならではのヒントが山ほど隠れています。
現場、生産技術、サプライヤーも巻き込んだ「3者対話」が技術進化の大きな突破口になります。
4. コスト目標値の決定とモニタリング体制
複数パターンの目標シナリオを作成し、「どの水準なら品質・納期・信頼性・コストのバランスが保てるか」を現場協議で決定します。
決定した機能ブロックごとの目標値は、QCD会議や調達審議会、現場カンファレンスなどで定期的にモニタリング。
この定例化と透明性が、粘り強い現場改善や運用ルーチンの基礎となります。
昭和型アナログ現場の課題と機能ブロック別アプローチの親和性
なぜアナログ現場にこそ機能ブロック思考が効くのか
日本の多くの製造現場は、今なお「昭和流」の帳票、電話、FAX、ベテラン職人の勘・経験に大きく依存しています。
製品分解やコスト把握、カイゼン提案も「一部のこだわり技術者」頼みになりがちです。
機能ブロック別の分解・コスト洗い出しは、技術伝承や現場ナレッジの形式知化にも役立ちます。
例えば
– 「この組立工程は、実は1つ前の設計変更で不要になった箇所がある」
– 「昔から使っていた部品だけど、今は調達コストが10倍に上がっている」
そんな“埋もれた無駄”の発見が劇的に進みます。
また、「○○さんだけが持つ知識」を機能ブロック単位で棚卸しすることで、属人化の壁も打破できます。
現場の抵抗を乗り越えるには
一方、「分解ばかりで手間が増える」「目標だけ高くなって意味がない」という現場の反発も想定されます。
これを乗り越えるためには、
– 従業員の声を拾い、目標設定前から参加意識を高める
– 成果を公正に評価、改善提案を奨励する
– デジタルツール(表計算ソフトや3D分解ツール、帳票自動化)を現場ニーズに合わせて段階導入する
こうした工夫が不可欠です。
バイヤー目線・サプライヤー目線から考える機能ブロック別目標の活かし方
バイヤーを目指す人・現役バイヤーへのヒント
バイヤーは、目標達成の“伝達者”や“値下げ交渉人”ではありません。
機能ブロック別コスト設定の時代には、次の力が問われます。
– 設計・現場・サプライヤー間の橋渡し(通訳・翻訳)能力
– 技術やコストの勘どころを対話で引き出すファシリテーション力
– 論理と感情の両面で現場の納得感を生むストーリー構築力
安易な「安くして」の押し付けよりも、「この機能でこのコストになる理由」「実現困難な理由」を多方面から深掘りすることで、本当の現場力が鍛えられます。
サプライヤーから見た機能ブロック別目標の利点
サプライヤーも「とにかく値下げして」とだけ言われると納得できません。
機能ブロック単位で具体的な狙い・設計思想を理解すれば、
– もっと効率的な材料・工程の提案
– 他社ノウハウも交えた技術転換提案
– 共同購買によるスケールメリット創出
– 量産化技術の先行導入
といったWin-Winの提案型調達に発展しやすくなります。
また、開発初期からサプライヤーも巻き込んだ「フロントローディング調達」が可能となり、全体の競争力向上にも直結します。
現場力で未来を切り拓く
機能ブロック別コスト目標設定は、設計・購買・現場・サプライヤーの知恵を本質議論で結びつけ、製造業現場に強いチームワークと競争力を生み出します。
デジタル化が遅れている現場、属人化やアナログなやり方が根強く残る組織ほど、こうした新たなアプローチが大きな変革と現場力向上につながります。
「分けて考え、再び全体最適へ」。
これが極めて現場的でありながら、ラテラルシンキング(横断的発想)で新時代の製造業を切り拓くカギです。
あなたの現場でも、今日からぜひ「機能ブロック別」の視点でコストと戦略を見直してみてください。
競争激化の時代、現場の英知で未来を勝ち取る新しい第一歩となるはずです。
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