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開発者の“暗黙知”が溜まり続け組織的に共有されない問題

目次
はじめに:開発現場に溜まる“暗黙知”の危うさ
製造業の現場で長年仕事をしていると、「この品質不良は、あの作業者なら未然に防ぐだろう」といった、文書化されていない“勘”や“経験知”に何度も助けられる場面に遭遇します。
一方で、その知識こそが組織で共有されず、個人に閉じたままとなり、一部の“ベテラン頼み”が常態化してしまう問題も根深く存在します。
このような“暗黙知”の蓄積と共有不全は、昭和から続くアナログな体質の製造業では特に根深く、働き方改革やDX化の大きな足枷となっています。
本記事では、現場目線で暗黙知に迫り、その本質と弊害、共有ノウハウ、そして今後の展望について、深堀りしていきます。
暗黙知とは何か?:個人の中に眠る価値ある知恵
形式知と暗黙知の違い
知識は大きく「形式知」と「暗黙知」に分けられます。
形式知は、作業手順書やマニュアル、図面やデータなど、誰が読んでも理解できる形で明文化・文書化されたものです。
一方、暗黙知は、言語化・可視化できていないノウハウや直感的な知恵です。
例えば、「このネジはトルクレンチの音が1回“カチッ”とするまで締める」「あの装置は音の変化に注意するとトラブルを予知できる」といった判断やスキルです。
なぜ暗黙知が製造現場で溜まりやすいのか
現場では日々多くの“例外”が発生します。
それぞれをすべてマニュアル化しようとすれば、膨大な量になり、本来柔軟であるべき現場対応力が損なわれてしまいます。
また、ベテランが「言葉にしにくい」「自分の経験は当たり前」という意識を持っているため、新人にわざわざ説明・伝達する機会が少なくなりがちです。
さらに、表現力、フィードバック、ツール環境などの不足も重なり、“他人に分かるように整理・共有する”プロセスが後回しにされてしまいます。
この背景には、昭和の高度成長期を支えた“現場主義・職人気質”が色濃く残っていることも無関係ではありません。
暗黙知を放置することのリスク
暗黙知がブラックボックス化すると、以下のデメリットが生じます。
– ベテランの退職でノウハウが失われ、品質/生産性が維持できない
– ヒューマンエラーやトラブルの再発率が高止まりする
– 本人しか分からない業務が乱立し、多能工化やジョブローテーションに支障が出る
– サプライヤー・バイヤー間の擦り合わせが属人的になり、商談力が低下する
– DX推進・自動化に必要なインプットが揃わず、業務改革が進みにくい
このように、“成長の足枷”としての暗黙知は、放置できない大きな経営課題となっています。
暗黙知を組織で共有できない構造的な要因
「伝える文化」の壁
製造業では「現場の空気を読め」「背中を見て覚えろ」といった“以心伝心”の文化が根付きがちです。
本来、現場作業は「誰がやっても同じ品質に仕上がる」必要がありますが、古い体質では個人の判断や経験則に頼りがちで、暗黙知を意図的に共有・育成する文化が醸成されにくい傾向があります。
教育・人材育成の属人化
OJT(オンザジョブトレーニング)主導の現場では、「教えられる人=ベテラン」に負荷が集中します。
教える内容や伝え方が個人の裁量やムードに依存することで、教育効果がぶれやすく、属人的な知識のまま組織に浸透しないのが実情です。
また、繁忙期や人手不足で教育の優先度が下がり、「時間があれば教える」という受け身型のスタイルが浸透する危険性もあります。
ITツール・システム活用の遅れ
工場の自動化やIoT導入が進む一方、現場のナレッジや改善プロセスのデジタル化は依然として遅れています。
例えば、
– 現場の改善提案や気付きが紙・口頭で流れてしまう
– 製造データは蓄積されるが、“現場での工夫”は記録されていない
– 品質の逸脱対策やトラブルの再発防止ノートが個人PCや引き出しで眠っている
という状況が頻繁に見受けられます。
これは、“現場の声を誰も拾い上げない構造的な欠陥”ともいえます。
心理的安全性の欠如
「こんな小さな気づきを出しても無駄だ」「失敗談をシェアすると自分の評価が下がる」といった心理的障壁も根強く、正直なナレッジ共有がされにくい雰囲気もマイナス要因です。
とくに歴史ある大工場や長寿なブランド工場ほど、“余計なことは言わない・やらない”がムードとして定着している場合も珍しくありません。
現場実践から見える、暗黙知共有の成功アプローチ
1.形式知化のステップを細分化する
「暗黙知を一気に全部マニュアル化」と構えるのではなく、トラブル事例や“気付きメモ”など小さな単位でデータベース化を進めることが現実的です。
たとえば、不具合発生時に「その時何を感じ、どう判断したか」を3行程度で現場担当者に入力・記録してもらい、それを週報や月報でまとめ、全体会議やグループチャットにシェアします。
こうした“ミニナレッジ”の積み上げが、やがて形式知(チェックリスト、マニュアル、標準動画など)に発展していきます。
2.異職種連携会議・現場ヒアリングの仕組み化
調達・購買、生産・品質管理など異なる立場や視点を持つメンバーの情報交換会(たとえば現場ウォークや朝会)を定例化し、個人の「ちょっとした工夫」や「過去の失敗例」を気軽に披露する場を設けます。
現場と管理職、サプライヤーとバイヤーが双方向で意見交流することで、属人化した知識も“組織の暗黙知”として輪郭が明らかになります。
3.デジタルツールの部分導入による効率化
現場向けのナレッジ管理システムやチャットツール、トラブル情報DB(デジタル災害手帳や業務日報)を、紙と併用で運用し始めるのも一つの手法です。
設備や生産ラインごとに、現場のベテランや若手が気軽に記録・共有できる仕組みを整えることで、“属人知”が自動的に形式知化されやすい環境を作れます。
ただし、デジタル導入そのものを目的化せず、「なぜ共有が必要か」「現場で役立つ知見とは何か」を常に意識することが重要です。
4.学び合う組織文化の育成
ナレッジ共有の習慣が根付きにくい背景には、「新人がベテランを頼り切る」「失敗は隠すもの」といったムードがあります。
これを打破するために、例えば“失敗大賞”や“ヒヤリハット表彰”など、挑戦や学びを推奨する社内表彰・評価制度を設けたり、上司自ら「自分も失敗した」と語ることで、心理的安全性の高い風土をつくることが有効です。
サプライヤーとバイヤーの関係にも暗黙知は潜む
サプライヤー(供給側)とバイヤー(購買側)の間にも、見えざる暗黙知が多く潜んでいます。
たとえば
– 「このメーカーはロット不良を出しやすいので、事前に強めに納期交渉をする」
– 「仕様書通りだが、“あの営業マン”が担当なら杓子定規にやらず臨機応変に返答する」
といった阿吽の呼吸は、担当者特有の経験知(=暗黙知)に基づいています。
こうした“担当者の個人差”が、組織としてのパートナーシップやサプライチェーンの安定性にダイレクトに影響しているのです。
バイヤーを目指す方やサプライヤーの立ち位置でバイヤーの思考を知りたい方は、この“暗黙知の可視化”が、交渉力や信頼構築のカギになることを忘れてはいけません。
今後の展望:“昭和の勘”から“データ×対話”へ
令和の製造業では、単なる“現場の勘”頼みや、トップダウンの指示一辺倒が限界を迎えています。
個人の暗黙知を、データや事例として見える化し、リアルな“対話”と“デジタル”を組み合わせてナレッジを高速循環できる組織こそが、これからの時代をリードするでしょう。
– インタビュー動画で作業ノウハウを定期記録
– トラブル時の“生の判断”を現場で即時入力しデータベース化
– 失敗や成果の事例シェアを週次/日次で自動配信
– バイヤー/サプライヤー間で現場トラブルや工夫を互いに棚卸しする定例会
こうしたラテラル思考的なアプローチ(既存の枠組みの外に出て知をつなぎ直す視点)が、昭和的なアナログの壁を打ち破る最良の一手となります。
おわりに:個人の知恵を組織の資産へ
暗黙知は、現場の歴史と人の知恵が染み込んだ“会社の宝”です。
しかし、共有しなければ、いつか消えゆき“ゼロからのやり直し”を招きかねません。
「説明できる知識」「質問できる雰囲気」「共有しやすいツール・制度」
この3つを段階的に整備し、“人から人への伝承”の限界を乗り越えた組織づくりを、今こそ進めていきましょう。
それが、日本製造業が再び“現場力”で世界に勝つための大きな一歩になると、私は信じています。
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