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異種材料の接着技術と接着設計耐久性向上

目次
異種材料の接着技術がもたらす製造業の未来
製造業の現場では、革新的な製品開発やコスト削減、軽量化、高性能化の要請が年々高まっています。
その中で「異種材料の接着技術」が、従来の溶接やボルト締結などの機械的結合を凌駕する新たな組立技術として脚光を浴びています。
しかし、実際に現場で導入を検討する際には、「本当に耐久性は大丈夫なのか」「現場に根付く昭和的アナログ思考の壁をどう超えるか」など、実践的な課題が山積みです。
この記事では、製造現場目線で、異種材料の接着技術と接着設計の耐久性向上について深く掘り下げ、製造業の変革にどのように寄与するのかを解説します。
異種材料接着の基本理解 ─ アナログ現場とのギャップ
なぜ異種材料を接着したいのか
自動車や電機、航空宇宙、半導体など、さまざまな製造業分野において、「軽量化」と「高機能化」のトレンドが続いています。
異なる物性(樹脂と金属、ゴムとガラス、CFRPとアルミなど)を持つ材料を組み合わせて新たな機能を発現させるためには、従来の締結方法では技術的限界があります。
そのため、異種材料を「接着剤」でつなぐことで、形状やデザインの自由度を高めたり、スポット溶接やビス止めによるストレス集中を低減したりする狙いがあります。
現場で根付く“昭和的常識”の障壁
伝統的な日本の製造現場では、“ねじ締めこそ信頼” “溶接が一番強い”といった信念が根強く残っています。
これは、長年の経験や失敗事例にもとづくノウハウの蓄積がある一方で、接着剤という目には見えにくいもので強度や耐久性を担保することに心理的ハードルがあります。
このマインドセットをどう克服し、接着技術を生産現場に根付かせていくかが改革のカギです。
異種材料の特性をつなぐ接着技術の進化
機械的接合 vs. 接着技術 ─ メリット・デメリットの整理
接着技術の強みは、異なる熱膨張係数、ヤング率、化学的安定性を持つ材料同士でも、無理のない応力分散ができる点にあります。
ビスやリベットによる点接合と異なり、面での力の伝達が可能なため、衝撃や振動への耐性も向上します。
一方で、接着剤の選定・塗布条件・硬化条件など管理項目が増え、設計変更時の工程柔軟性や、接着面の前処理技術など細かなノウハウが必要となります。
現場で活躍する代表的な接着剤の種類
– エポキシ系:高強度で接着性もよく、金属-樹脂のような厳しい組み合わせでも多用されています。
– アクリル系(メタクリル系):耐水性、耐薬品性にすぐれ、ガラスや樹脂などにも適合します。
– ポリウレタン系:柔軟性が高く、振動吸収が求められる部位や複雑形状にも対応可能です。
– シリコーン系:高温・低温環境や電気絶縁性が求められる分野で用いられます。
材料ごとに親和性の高い接着剤選定が極めて重要で、場合によっては下地処理(プライマー塗布や粗面加工)が必須となるケースもあります。
接着設計で耐久性を高めるための実践的ポイント
なぜ接着部は壊れるのか ─ 主な劣化メカニズム
1. 剥離:接着界面そのものが剥がれてしまう現象です。
2. クラック発生:繰り返し荷重や振動で、接着剤自体に微細なひび(クラック)が生じやすくなります。
3. 水分・化学物質侵入:隙間から水分や薬品が侵入して、接着層を劣化させる場合があります。
4. 応力集中:異種材料の物性差から生じる熱膨張差などで、特定部位に大きな力が集中します。
これらを防ぐために求められる工夫は、単なる材料選定や塗布法だけでなく、「どのように応力を分散させるか」「どれだけ環境ストレスを遮断できるか」という設計思想の転換です。
耐久性向上のための設計・工程ノウハウ
– 接着面積の最大化:力の伝達面積を増やすことで、単位面積当たりの応力を低減できます。
– “ラップジョイント”や“ステップラップ”設計:ズレや剥離抵抗を高める工夫で、単なる平面貼りより数段耐久性が向上します。
– 下地処理の徹底:化学的クリーニング、表面粗化、プライマー塗布で親和性を高めます。
– 環境シミュレーション:-30℃~+80℃、高湿度、薬品暴露など、実際の使用環境に合わせた耐久試験を必ず設計段階・生産ラインで実施します。
– 硬化条件の最適化:加熱温度やUV照射量、硬化時間などを最適化し、ムラなく強固な結合を実現します。
これらの設計・工程ノウハウを工程標準化し「誰がやっても同じ品質が出る」仕組みにすることが持続的な品質改善には不可欠です。
現場導入のカギは“プロセス可視化”と“サプライヤー・バイヤー連携”
検査・トレーサビリティへの現場目線の提言
接着工程は見た目で結果が分かりづらいため、不良の取りこぼしが大きなリスクとなります。
その対策としては以下が効果的です。
– プロセス条件(温度・湿度・塗布量など)の自動記録・監視
– 超音波探傷やX線透過検査など非破壊検査方式の導入
– バッチ単位でのトレーサビリティと追跡管理
これらを徹底することで、“アナログな現場”でも安心して接着技術を取り入れられる土壌づくりにつながります。
サプライヤーとバイヤーの共創で価値を生む
サプライヤー側は「新しい接着技術・材料の提案力」や「小ロット・試作案件にも柔軟に対応する開発体制」がキーとなります。
バイヤー側は「現場課題の言語化」「異種材料接着の生産効率や品質データの開示」など積極的な情報共有が望まれます。
現代は単なる価格交渉だけでなく、“課題解決型パートナーシップ”が業界発展の要です。
両者が情報とノウハウをオープンにし、現場目線の課題をリアルタイムで共有しながら共創するスキームが、異種材料接着の持続的な価値創出につながるでしょう。
昭和から令和へ ─ 接着技術にイノベーションを
属人的から“仕組み”への転換
これまでアナログな現場では、“手先が器用なベテラン作業者”に頼る属人的な品質維持が主流でした。
しかし、異種材料の組み立てはその複雑性ゆえに、作業者の勘や経験に頼っていては不良撲滅や品質安定化は実現できません。
IoTセンサー、プロセス自動記録、AIによるばらつき予測など、新たなテクノロジーを取り入れた“仕組み化”によるイノベーションが、現場改革の主役となるべき時代です。
まとめ ─ “見えない強さ”を設計し、製造業の価値を進化させる
異種材料の接着技術は、従来の組立思想にパラダイムシフトをもたらす存在です。
「見た目に見えないけれど、本当に価値ある強さを生み出す」。
この“見えない強さ”を正しく設計し、科学的に検証し、現場プロセスに組み込むことこそ、これからの製造業に求められる競争力です。
昭和から受け継いだアナログな現場力を土台に、デジタル、プロセス工学、サプライヤー・バイヤー一体の共創で、現場の知恵を未来へ。
異種材料接着技術の進化は、製造業に関わるすべての人が“新たな地平線”を切り拓く原動力となるでしょう。
今こそ「接着設計は面倒くさい」「不安だから避けておこう」という殻をやぶり、持続可能な強さをともに創りましょう。
ものづくりの現場から、新しい製造業の希望が生まれることを願い、皆さまと知見を共有してまいります。
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