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ペットボトルラベルの剥がれを防ぐ粘着剤粘度と貼付圧制御

目次
はじめに:ペットボトルラベルの剥がれはなぜ起きるのか
多くの消費者が手に取る清涼飲料水や食品用のペットボトル。
現場で製造ラインを監督する立場になると、ペットボトル本体にラベルがきれいに貼られていることが、いかに品質イメージやクレームリスクの低減に直結するか、肌で実感するものです。
その一方で、ラベルの剥がれや浮きは、いまだに多くの現場で発生している課題の一つです。
なぜなら、印刷技術や包装資材がどれだけ進歩しても、「粘着剤の性質(粘度やタック)」と「ラベリング時の貼付圧」の制御が、業界では昔から曖昧かつ経験に依存しているからです。
本記事では、製造業の現場感と最新の知見を織り交ぜながら、ペットボトルラベルの剥がれを防ぐための実践的なアプローチについて詳しく解説します。
ラベル剥がれ問題がもたらすインパクト
ラベル剥がれは単なる見た目の問題ではありません。
クレームや返品リスク、納入先企業の信頼低下、リコール対応コスト増大など、経営インパクトの大きい課題となります。
バイヤーの立場で考えるなら、サプライヤーを選定する際に「ラベル剥がれの発生率」や「ラベリング品質管理体制」を重視し始めているのが現実です。
サプライヤー側としては、現場改善の手を抜くことが出来ない、極めて重要な管理ポイントといえるでしょう。
粘着剤の粘度(Viscosity)が及ぼすラベル密着の本質
粘着剤粘度の基礎知識
ラベル用の粘着剤で主流となるのはアクリル系、ゴム系、ホットメルト系粘着剤です。
一般的に「粘度が高い=接着力が強い」と誤解されがちですが、現場で求められるのは「初期タック(初期粘着力)」と「持続的な粘着力」のバランスです。
粘度が高すぎると、ラベリング装置による均一な塗布や気泡の巻き込みリスクが上がります。
反対に、粘度が低すぎると、ラベルがすぐに浮いたり、剥がれたりしやすくなります。
温度や湿度による粘度変化
昭和時代の製造現場では、粘着剤を仕様通りに準備していれば問題にならなかった粘度ですが、現代の高速ラインや省人化の現場では、周囲環境(温度・湿度)の影響が顕著に現れます。
夏場は粘度が下がり、ラベリング時に糸引きや接着不良が起きやすいです。
逆に冬場は粘度が上がりすぎて、塗布面がムラになることも少なくありません。
ここで重要なのは「粘着剤の保管・供給ラインの温度均一化」「リアルタイムな粘度モニタリング」といった現場での工夫です。
貼付圧制御が決めるラベル持久力
貼付圧が足りないと…
ラベラー(ラベリングマシン)の貼付ローラーがペットボトル本体にラベルを圧着する際、「圧が足りない」「貼付ムラがある」と、初期タックが十分に立ち上がらず、ラベル剥がれや浮きが発生します。
ベテラン作業者の勘や経験でカバーしてきた世界ですが、自動化や人員減によって“標準化”が強く求められる時代です。
最適な貼付圧はどのように決まるか
ラベル基材(ユポ・PET・紙など)、粘着剤の性質、ボトル本体の形状・素材、ラベリングマシンのローラー硬度や口径など、“多変数の最適化”が必要です。
現場の実例では、「ローラー圧30N/m2」や「通過速度20m/min」でベストという設定値がある程度存在しますが、ラベリングマシンの摩耗や消耗具合、ラベルロットのばらつきを加味して、定期的な見直し・サンプリングテストが欠かせません。
昨今は「貼付圧を動的に制御するサーボ駆動ラベラー」や「AI画像解析による貼付ムラ検知」など、IT×現場の技術革新も急速に進んでいます。
こうした新設備を「投資」ではなく「品質リスク低減=商機拡大」と捉える視点が、サプライヤー競争力の要となります。
試験方法とデータで現場力を磨く
剥離強度試験とその活用
ラベルの剥がれ易さを定量的に評価したい場合、「180度剥離試験」「90度ピールテスト」「Tagginess(二重貼りテスト)」がよく用いられます。
これを現場のQC工程でロット毎に実施し、剥離強度のデータを積み上げることで、「どの粘度・どの圧が最適か」を科学的に突き詰めることができます。
現場改善活動と連動させる
剥離強度や貼付ムラのデータを、ぜひQCサークル活動やカイゼン活動と結びつけてみてください。
昭和の時代は「とりあえず目検チェック」や「現場のベテラン頼み」で済ませていたものが、数値化とKPI管理によって、再発防止や標準作業に落とし込めます。
また、バイヤーに対して“数字”と“エビデンス”で品質管理体制をアピールでき、サプライヤーとしての信頼向上にも繋がります。
バイヤー視点で見るラベル品質管理の要点
調達選定の際に求められること
バイヤー(調達購買)の立場からは、「実際に納入されるラベル付きボトルの剥がれ発生率」「加圧試験・落下試験を行ったかどうか」など、現場での品質に直結する“プロセス管理の質”が重視されます。
書類上のスペックや外観チェックだけでなく、現場の「試験データ」や「異物混入防止体制」が問われるのです。
サプライヤーが意識すべき点
サプライヤー側では、ラベルや粘着剤のメーカーとの連携だけでなく、自社工場のラベラー整備や作業員教育プログラムの充実が求められます。
バイヤー向けの工場見学時には、「数値データのトレーサビリティ」や「作業標準書」を見せられるよう、常に準備しておきましょう。
最新トレンド:剥がれ対策とサステナビリティ
環境対応型粘着剤・容易剥離ラベルへの要求の高まり
近年では「リサイクル対応の容易剥離ラベル」「バイオマス由来の環境配慮型粘着剤」など、従来の接着力一本やりではない要素も調達購買担当者の評価軸に加わってきました。
中には、「リサイクルPETボトル工場で容易に剥離・分別できるラベリング仕様」でなければ採用されないケースも増えています。
現場としては「環境対応ラベルだから剥がれても仕方がない」ではなく、粘度や貼付圧のチューニングを通じて、これまで以上に高度なラベル密着・剥離コントロールが求められます。
まとめ:現場力×科学的管理×コミュニケーションが最強の武器
現場にはびこる昭和的な“ベテランの勘”頼りや、“とりあえずこの粘度・この圧設定ならOK”といった思い込みから一歩抜け出し、粘着剤の科学的な選定、貼付圧の最適制御、試験・データ活用によるPDCAサイクルを回すことが、これからの製造現場には不可欠です。
調達サイドは数字とロジックで品質を見極め、サプライヤーはデータと標準作業で品質を訴求する。
こうした「現場力×科学的管理×コミュニケーション」が、剥がれないペットボトルラベル=ブランド価値向上と現場効率化、環境規制対応のすべてにつながる解決策となるはずです。
今こそ、従来の常識をラテラルに乗り越え、現場知見と新技術を融合させた「ラベル革命」を実現しましょう。
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