投稿日:2026年1月4日

抽出装置用シャフトシール部材の構造別メリットと限界

抽出装置用シャフトシール部材とは何か

抽出装置は製造業の現場に欠かせない設備です。
これらの装置を適切に稼働させるためには、動力を伝達するシャフト部分からの漏れを防ぐシール部材の存在が不可欠です。
シャフトシールはわずかな漏れが大きなロスや品質トラブルにつながるため、現場において常に気に留めておくべき重要なパーツといえます。
とりわけ化学・食品・医薬・エネルギー業界では、抽出工程での液体やガスのリークは安全・衛生・環境の観点からも絶対に無視できません。

本記事では、長年現場で検証と失敗を重ねてきた視点から、シャフトシール部材の各構造とそれぞれのメリット、限界について詳しく解説します。
また、昭和から続くアナログ的な現場で今なお根強く採用されている理由や、今後求められる新しい思考回路についても深掘りします。

シャフトシールの代表的な構造と選定の現場課題

シャフトシール部材の構造は、装置の用途や処理する流体の性質、要求されるシール性能によって多岐にわたります。
ここで、製造現場でよく見かける構造を整理しつつ、それぞれの特長と現実的な課題を挙げていきます。

1. パッキンシール(グランドパッキン)

パッキンシールは最も歴史が長く、あらゆる抽出装置で汎用的に用いられています。
編組状やシート状の柔軟な材料(PTFE、黒鉛、アラミド繊維、天然ゴムなど)をシャフトと装置の隙間に詰め込む構造です。
調整やメンテナンスが比較的簡単でコストも低いため、昭和時代からの装置更新が進まない現場ほど根強い人気があります。

メリットとしては、「汎用性」「メンテナンス性」「コストの安さ」が挙げられます。
一方で、「摩耗による漏れ」「頻繁な調整・交換が必要」「軸へのダメージ」などの課題も明白です。
特に漏れが厳禁な医薬やクリーン分野では採用できません。
現場目線では、“止まると困るが小さな漏れなら許容”的なラインや、ロングライフ装置より短サイクルの小型ミキサー・遠心分離機などで重宝されています。

2. メカニカルシール

メカニカルシールは、静止側と回転側に分かれた精密に加工されたシール面同士を密着させてシール性を確保する方式です。
摺動部にはカーボンやセラミックスで構成された材質が使われ、液体やガスの高圧・高温・高回転条件下でも安定したシールを発揮します。
パッキンに比べて格段に漏れ対策の信頼性が上がるため、品質保証の厳しいラインや、自動化率の高い現場で増加しています。

主なメリットは「高いシール性能」「長期間の安定稼働」「省メンテナンス性」です。
ただし「初期コストの高さ」「専門知識の必要」「誤った使い方による早期トラブル」などが導入時のハードルになっています。
装置のメンテ人員不足が進む一方、現場目線では“保全はやりやすくなったが、壊したら元の状態に戻せない”といったジレンマも根強いです。
ラインの自動化が進む中、今後もさらに需要が拡大する構造ですが、運用を誤れば高価な投資が無駄になります。

3. オイルシール

比較的シンプルな構造で、弾性体(合成ゴム)製のリップが軸に密着し、主に潤滑油や水のリーク防止に使われます。
ポンプや小型減速機、搬送機器などで広範に採用されています。
構造が単純なこともあり、パッキンと同様、昭和の時代から多用されてきました。

メリットは「取付交換が容易」「コストパフォーマンスが高い」「多様なサイズが入手しやすい」などです。
一方、耐久性・シール性は限定的で、軸の偏心や回転数の変化に弱く、摩耗が進むとあっという間に漏れが増加します。
機械全体の寿命を決める弱点にもなりやすく、定期的なチェックと交換をサボると、予想外のラインダウンや液漏れトラブルにつながります。

構造ごとの具体的な限界と現場のリアル

ここからは、現場の声や失敗事例に基づき、各シール構造の“限界点”とその背景にある産業の現状、なぜアナログ方式がいまだに主流の現場も多いのか、その理由を掘り下げます。

パッキンシールの実際の限界

グランドパッキンは「シンプルな構造ゆえ、誰でも取り付けやすい」「とりあえず何とかなってしまう」という現場流儀が根付きやすいのが特徴です。
しかし、ワークの温度や圧力条件、装置の運転サイクルによっては、摩耗によるリークが1日で発生するケースもあります。
また、詰め過ぎや締め過ぎによるシャフト側の摩耗や、逆に緩すぎれば即リークといった調整の難しさは、現場技術者の“勘と経験”に依存します。
“このラインはあのおばちゃんしか調子良く回せない”といった属人化もパッキン構造の限界として語られることがあります。

さらに、異物混入や流体の固形物堆積によってパッキンシール自体が目詰まりしたり、部分的に押し潰されて一部のみ著しい摩耗が発生するといった“メカ的トラブル”は、現場改善の永遠のテーマです。
現代のQCD(品質・コスト・納期)最適化とは相容れない部分が多々あります。

メカニカルシールの現実と課題

メカニカルシールは、理論的には最も高いシール性能を誇ります。
しかし実際の現場では、「投入したものの、すぐに液漏れして困った」「特殊流体やスラリーでは期待通りの長寿命が保てない」などの声も聞かれます。
最大の要因は設計・運用の知識不足です。
軸のブレ(振れ)、外部からの熱変形や流体変化、スラリー分離の失敗、或いは正しいラビリンス構造やフラッシュラインの設計になっていないことなど、1つの見落としが寿命短縮の大きな要因となります。

また、高性能品ほど部品点数が多く、分解清掃や部品交換時の知識が必要です。
高度なスペックを持つ部材が入手困難だったり、海外調達の納期遅延で生産スケジュールを直撃することもあります。
現場では「初期投資の回収が見込めず、結局パッキンに戻した」という事例も少なくありません。

オイルシールの限界とレガシーな現場の悩み

オイルシールはとにかく安価で、簡単に交換できるのが強みです。
一方で摩耗粉やゴミ、異物が流体中に多い現場では、すぐにリップの破損や摩耗による漏れが発生します。
また、小型装置の場合は許容量の限界が低く、温度変化や流体の性状変化にも弱い特徴があります。

圧倒的な低コスト化だけを優先する現場や、まだ“人が見て調整すること”が日常となっている中小工場では、「コスト第一」という理由で今後も使い続ける傾向が続くでしょう。
しかし人手不足や自動運転への移行、ラインの24時間稼働の流れの中では、ますます課題が表面化していくと考えられます。

昭和的現場に根強い“アナログ型”の理由とその終焉

なぜ最新のシール構造への全面転換が進まないのでしょうか。
その背景には、日本の製造業を支えてきた昭和の現場文化が色濃く影響しています。

例えば「とりあえず今動いているものを止めたくない」、「設備投資が回収できない」、「マニュアル化・自動化が難しい」、「現場の腕自慢とノウハウの継承」といった要素が複雑に絡んでいます。
また、バイヤーや資材調達責任者の視点でも、「安く調達して現場で何とかしてもらう」「日本製の実績が一番安心」といった根強い評価軸が壁となっています。

しかし今、世代交代とともに現場力の空洞化が進み、技術のブラックボックス化や“属人トラブル”で生産停止リスクが急増しています。
これからの時代は、ラテラルシンキング――異分野からの解決法やテクノロジーの応用――が求められます。
IoTセンサーによる漏れの自動監視、3Dプリンタによるスペア部品の迅速製作、マテリアルインフォマティクスを活用した新素材開発など、既成観念にとらわれない現場改革が不可欠です。

新たな地平線――バイヤー・サプライヤーがシール設計に関わるべき視点

製造業のサプライチェーンにおいて、シャフトシールの最適選定はバイヤーだけの仕事ではありません。
バイヤーが現場の苦労・トラブル事例や生産技術の進化、環境・安全・BCP(事業継続計画)の観点まで広く知っておくことで、より正しい資材調達が可能となります。

サプライヤーの立場としては、「現場でなぜ選定ミスが起こるのか」「なぜ交換頻度が増えるのか」に目を向け、真に現場に寄り添った提案をすることが信頼につながります。
また、単なる材料スペックの説明ではなく、実際の運用現場でのデータ共有や情報交換の場をもっと増やすことも有効です。

これからの調達購買では、短期的な“目先のコスト”だけでなく、減災・事業継続・省人化といった経営視点での価値を可視化し、それを現場と共有することが競争力につながっていきます。

まとめ――昭和の成功体験を超えて、真の最適化を目指す

抽出装置用シャフトシールの選定は、依然として“現場の勘と経験”が主流な面があります。
しかし、これからはラテラルシンキングとデジタル技術の導入、現場とバイヤー・サプライヤーの密接な協働による真の最適解が求められる時代です。

構造ごとのメリットと限界を正しく理解し、“今の現場”に合うベストな選択をすることが、未来の日本の製造業を力強く支えるカギとなるでしょう。
変化を恐れず、真のバリューを現場に還元する取り組みに共にチャレンジしていきましょう。

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