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外装のテクスチャ統一で金型加工と塗装手間を減らす美観設計

目次
はじめに:美観設計の重要性とテクスチャ統一への着目
製造業界では「美観設計」という言葉が近年注目されています。
美観設計とは、単なる機能性やコストパフォーマンスだけでなく、製品の外観や触感も重視した設計手法です。
競合他社との差別化や、最終消費者に選ばれる製品づくりには、美しさやイメージ戦略が欠かせません。
しかし、日本の多くの製造現場、特に昭和から平成初期の仕組みが根強く残る現場では、まだまだ「見た目」よりも「作りやすさ」「コスト」優先の風潮が残っています。
その中でも、金型加工や塗装といった現場に直結する工程で、テクスチャ(表面の細かな模様や質感)の統一を図ることが、美観・コスト・品質・作業効率のすべてにプラスに働くことは、多くの現場で見落とされがちです。
本記事では、実際の現場管理やバイヤー経験から見たテクスチャ統一のメリット、実践的な工夫や注意点、今後の課題について掘り下げていきます。
なぜ今、外装のテクスチャ統一が必要なのか
差別化の時代:「何が違うの?」と問われる現場から
現在の市場では、機能面やスペックでの差別化が難しくなっています。
そのため、製品選定の決め手となるのは「デザイン」「使い心地」「美しさ」といった、美観要素が占める比重が年々高まっています。
欧米系メーカーや新興国製造業との競争に晒される中、今こそ日本の強みである「細やかな表現力」「仕上げ技術」を最大限活かす必要があります。
また、製品外装の品質が揃っていない、部品ごとに微妙に仕上げが異なるといった不統一は、エンドユーザー、ひいてはBtoBのバイヤーからも評価を下げる要因となります。
テクスチャ統一の本質的役割
テクスチャの統一とは、単なる表面仕上げが同じように見えるだけではありません。
・金型制作技術の安定と再現性の確保
・塗装・メッキ工程の負担軽減
・ロット間差異や異常流出の抑止
・部品間の整合性・品質保証
特に、「バイヤー視点」では、外装の仕上がりが毎回違うと、その都度検査コストやクレーム対応の負荷が発生します。
サプライヤー側では「ここぐらい仕上げ違っていても…」と見逃しがちですが、バイヤーは最終顧客の厳しい目線を代弁しているのです。
金型加工・塗装現場における課題とテクスチャ統一のベネフィット
伝統とアナログな現場の壁
日本の金型や塗装現場は、熟練の職人技に支えられてきました。
一方で、型職人ごと・工程ごとに「癖」や「暗黙知」が存在し、設計図通りの一貫した表面仕上げを再現するのが難しい現実もあります。
例えば、Aラインの型技術者は艶消しの荒さが「#300」、一方Bラインは「#400」を基準とし、それぞれ微妙な手触りや反射具合がズレてしまう。
これは量産時に「同じ品番なのになぜ統一されていないのか?」というクレームや見切り増加につながりやすいのです。
塗装工程におけるムダの可視化
テクスチャ統一を怠ると、塗装工程での手間が跳ね上がります。
・下地調整(荒すぎる場合は研磨、細かすぎて塗装の乗りが不安定になることも)
・マスキングや境界線の「合わせ処理」にかかる工数
・色差・艶差による再塗装や補修発生
つまり、設計・型製作段階での「本来不要なムラ」によって、後続コストが膨らむのです。
大手バイヤーの評価基準:「美観=安定品質」の実例
私が大手家電メーカーのバイヤーを担当していた際、取引サプライヤーの選定基準には「外観品質の管理項目」が必ず盛り込まれていました。
・ロット間で表面状態に極端な差が無いか
・サンプル提出時と量産時で仕上げ差が発生していないか
・仕上げパターンや微細な凹凸・光沢が全て指定範囲内か
実際に、小ロット生産では問題なくても、量産に入った途端「仕上げ違い」が浮き彫りになり、その都度塗装部門・検査部門・設計部門と協議し直し…といった非効率が頻発していました。
サプライヤー側で「なぜ細かい部分まで指定するのか?」と感じがちな項目も、エンドユーザーの「イメージ違い」「店舗返品」トラブルを未然に防ぐためには死活的に重要なのです。
実践例:テクスチャ統一による生産性・コストダウン施策
現場で実際に行った統一事例
ある樹脂製品の外装部品では、長年3つのサプライヤーで別々の金型を運用していたため、仕上げの手触り・模様の深さに微妙な差異が生じていました。
フィールドテストでこれが集客効果にまで悪影響していたため、以下の順序でテクスチャ統一活動を推進しました。
1.設計段階から「番手」「模様パターン」「光沢度」を明確指定
2.既存金型の仕上げを全て統一基準へ改修
3.サプライヤー間で抜き取りサンプルを相互比較し品質会議
4.工程テストで、塗装性や組立時の「当たり(擦れ)」発生率も確認
5.量産初期段階で現物立ち会い検査を全品実施
この結果、下記のような効果が得られました。
・塗装工程の再処理・研磨作業が8割減少
・外観検査時のクレームが3割減
・設計変更や小ロット追加生産時の手戻り抑止
・サプライヤーの負担軽減と生産リードタイム短縮
全てを型職人や検査員の「熟練」に任せるのではなく、仕様と現物の「共通物差し」を設けることで、アナログ現場でも大きな成果が出たといえます。
コストシミュレーション:テクスチャ統一で将来コストを抑える
短期的には「金型改修費」「現場教育コスト」が発生しますが、中長期的に考えると、
・仕上げ修正の再発(人件費)
・再塗装・補修材・新品部品手配の手間
・取引先からのクレームコスト
などの「見えないムダ削減」効果が非常に大きくなります。
特に、バイヤー/サプライヤー両立場で「なぜこの投資が必要なのか」を数字で見せることで、全社的な理解と協力を得やすくなります。
業界動向:デジタル化・自動化との掛け合わせ
昭和から抜け出す!現場DXとテクスチャ品質管理の融合
金型表面の状態や塗装仕上げを人の目や経験のみで管理してきた時代は限界を迎えつつあります。
最近では、表面検査のAI画像処理やデジタルデータベースによる「仕上がり比較」「履歴管理」が少しずつ普及しています。
例えば、
・各金型仕上げ面の3Dスキャナーによる数値化
・塗装の厚み・均質性を画像で自動測定
・ロット単位のサンプルをデータ化して、不具合兆候を早期把握
こうしたデジタル技術の活用は、従来の「勘と経験」に頼る管理を劇的に効率化し、グローバル調達時代の品質保証に大きな武器となります。
バイヤー・設計・現場の「三位一体」連携がカギ
テクスチャ統一は、設計者・調達担当(バイヤー)・生産現場(サプライヤー)それぞれの立ち位置によって見ている課題や解決策が微妙に異なります。
設計者は「見た目の美しさ、意図通りの外観再現」
バイヤーは「品質の安定、調達交渉力強化」
サプライヤーは「作業のやりやすさ、手戻り回避」
この三者の意図がしっかり言語化され、共通理解され、数字や現物で可視化されて初めて、本当の意味でのテクスチャ統一が実現できます。
まとめ:外装テクスチャ統一が拓く未来のものづくり
製造業の「美観設計」は、もはや一部高級品や嗜好品メーカーだけの専売特許ではありません。
デジタル化とグローバル競争の時代、ほんの些細な外装の仕上げ一つが、ブランド評価や世界中の取引の決定打になる時代です。
本記事で紹介したテクスチャ統一の事例・プロセスは、どんな製造品目でも再現可能な普遍的なアプローチです。
昭和からの伝統や現場の知恵を活かしつつ、設計・調達・現場が一体となって「共通物差し」を持つこと。
これが、働き方改革や現場DX、海外調達競争の中でも、持続的な三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)を実現するカギとなるでしょう。
今、外装のテクスチャ統一を「コスト削減策」や「新たな美観戦略」の一丁目一番地として位置付け、自社のものづくり文化を一歩先へ進めましょう。
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