投稿日:2025年6月27日

営業拠点業務継続を実現する低価格蓄電池導入と非常用電力対策

はじめに ~製造業の電力リスクと営業拠点の重要性~

近年、地震、台風、落雷などによる「電力リスク」が全国各地で問題となっています。
特に製造業における営業拠点やサプライチェーンの中核を担う施設での電力供給途絶は、単なる作業停止にとどまらず、生産、物流、受発注など広範な業務へ甚大な影響を及ぼします。

一方で多くの製造業では、昭和時代から続くアナログの運用・管理体制が残っており、非常時対応やBCP(事業継続計画)についても「何となく頼みの発電機があれば良い」といった属人的かつ部分最適な施策で留まってしまっている現状があります。

しかしながら、デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれ、購買・調達、販売・供給の情報伝達スピードが重視される現代において、営業・管理拠点の業務継続性を確保するための「低価格かつ実効性の高い非常用電力対策」の導入が急務となっています。

本記事では、工場現場・営業拠点で働く方、バイヤー、サプライヤーを目指す方に向けて、現場目線で蓄電池導入のポイントや現代製造業ならではの非常用電力対策について詳しく解説します。

営業拠点の「止まらない」価値~なぜ電力対策が必要なのか~

1.営業拠点の機能が止まると何が起きるか

営業所・サテライトオフィスなどの拠点が停電すれば、電話・Fax・メール・基幹システムがストップし、社外との情報伝達、受発注データの処理、納期回答などあらゆる業務が停止します。
本社・本工場と異なり、バックアップ人員も物資も限られているため、地元顧客や関係会社との信頼関係にも大きなダメージを与えかねません。

2.購買バイヤー・サプライヤーも他人事ではない

近年のSCM(サプライチェーンマネジメント)では、「下流から上流」へのリスク評価や予防的なアクションが重視されています。
もし営業拠点側の機能停止が元で情報伝達が遅延し、工場の生産予定にズレが生じれば、購入部門バイヤーもサプライヤーも巻き込まれて、納期遅延やコスト増大に直結します。
BCP対策は全員で考え、実践するものと言えるでしょう。

昭和の非常用電源から、現代の蓄電池へ

1.「非常用発電機」の限界と課題

従来の営業拠点や工場での非常用電源と言えば、ディーゼルやガソリンのエンジン式発電機が主流でした。
発電機には以下の課題があります。

・始動が手動で専門的知識が必要
・燃料の劣化や備蓄の問題
・屋内設置不可・屋外設置工事が必須
・騒音や排ガス等の環境負荷
・受電容量制限 

特にオフィスビルや都市部の小型拠点では、「設備として発電機を入れたくても物理的に難しい」「テナントビル規定で設置不可」といった問題が現実的な課題として残っています。

2.低価格蓄電池という選択肢

技術の進化とともに、ポータブル型や据え置き型の「低価格蓄電池(ポータブル電源)」が急速に普及しています。
特にリチウムイオン系電池は下記のメリットがあります。

・メンテナンスフリー・始動が簡単
・無騒音、無排気で室内設置可能
・コンセント充電が主流
・初期投資が比較的安価

さらに数千~1万Whを超える大容量タイプ登場により「PC・サーバ・Wi-Fi・照明」などのITインフラを数時間~1日サポートできる製品も珍しくありません。
今や「停電した時あわてて発電機を回す」のではなく、「日常的に蓄電し、いつでも安心できる」蓄電池が拠点の生命線となりつつあります。

営業拠点BCP策定で絶対外せない5つのポイント

では、実際に営業拠点や小規模事業所で低価格蓄電池を活用した非常用電力対策を立てる際、絶対に押さえておきたいポイントを紹介します。

1.どの機能を止めてはいけないのか「現場棚卸し」

まずは、現場の業務で「電気が止まることで致命的なダメージとなるもの」を洗い出します。

・パソコンやサーバー、共有HDD
・電話や携帯充電
・受発注インターフェース(EDI端末、FAX)
・Wi-Fiやルーター、主要照明

この「守るべき機能」に対して必要な電力量(W数、時間)を算定します。

2.電力計算の基本と”足し算のワナ”

必要な容量の算出時、「最大消費電力」を各機器の取扱説明書や型番から拾います。
しかし現場では「全て同時に最大出力で使う」ということはほとんどありません。
機器ごとの使用パターンをヒアリングし、安全を見た上で容量を決定するのがコツです。

3.蓄電池の「連結」や「冗長化」も検討

一台の大容量機ではなく、中容量の蓄電池を複数台保有し「分散」「連結」「バイパス」など冗長化することで、不測のトラブルにも柔軟に対応できます。

4.運用シナリオを関係者で確認

実際の停電時に「誰が・何を・どの順で・どれくらいの間」使うか、現場担当者を交えてシナリオ訓練をします。
属人化排除のため、マニュアルも簡単に整えましょう。

5.メンテナンス体制も怠らない

蓄電池は日常的な動作点検・定期充電が肝心です。
「いざ停電した時、バッテリー残量ゼロでした」では意味がありません。
通常業務のルーティンへ点検や充電タイミングを組み込みます。

サプライヤー・バイヤー視点:営業継続力が信頼を生む時代

1.サプライヤーから見た対策拠点の「格付け」

どんなに価格競争力や技術があっても、「情報伝達が止まる相手」との商取引はリスクとなります。
BCP策定と電源の冗長化をPRできれば、サプライヤー側から見たバイヤーの「信頼度」や「受注率」も格段にアップするでしょう。

2.バイヤーとしてのリスクヘッジ戦略

自社生産や営業拠点だけでなく、パートナー・サプライヤーへも最低限の非常時対策/電源確保を求めることが、全体最適なサプライチェーン構築の第一歩です。
必要に応じて協力先企業への導入支援や情報提供も検討しましょう。

最新動向:蓄電池活用とエネルギーマネジメントの進化

脱炭素社会の流れを受け、再生可能エネルギーと蓄電池の連携に注目が集まっています。
太陽光発電や小型風力との組み合わせによって、BCP時以外もピークカットや節電が図れる例が増えています。
これからの工場・拠点設計では「日常も非常時も強い」ハイブリッドなエネルギーマネジメントが、製造業の標準となるでしょう。

まとめ:現場目線で一歩踏み出す非常用電力対策

製造業の営業拠点業務継続に必要なのは、「低価格・即導入・現場主義」の蓄電池活用です。
アナログな現場環境にこそ、シンプルで強い仕組みから一歩ずつBCPと非常用電源の確保を始めましょう。
これが、取引先、地域社会、そして自社の未来を守る地道な一手となります。

今こそ、現場から未来の製造業DX・BCPの新たな地平を一緒に切り拓きましょう。

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