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歯磨き粉の粘度を一定にする撹拌翼形状と混合時間管理

目次
はじめに:歯磨き粉製造における粘度の管理がもたらす重要性
歯磨き粉の製造現場では、製品の品質を安定させるために「粘度の一定化」が極めて重要なテーマとなっています。
実際、粘度のバラつきはユーザーの使用感に大きく影響し、さらにはチューブへの充填工程や製品の保存性にも影響を及ぼします。
そのため、撹拌翼形状の最適化と混合時間の厳格な管理が求められます。
本記事では、昭和から続くアナログな手法と最新の知見を融合させ、現場で実践できる歯磨き粉製造における撹拌・混合プロセス改善のアプローチを、現場経験豊富な立場から解説します。
製造業に携わる方、バイヤーとして工程理解を深めたい方、サプライヤーの視点で顧客ニーズを把握したい方にとっても実践的なヒントがある内容とします。
歯磨き粉の粘度とは?ユーザー視点と製造現場視点の両面から考える
歯磨き粉の粘度は、一般消費者が「ちょうど良い」と感じるテクスチャーに直結しています。
高すぎる粘度だと押し出しにくく、低すぎると水っぽさや分離が発生しやすくなります。
工場としては「配合の均一性」「チューブ詰め工程の滑らかさ」「輸送・保管中の安定性」など、様々な視点から粘度を一定に保つことが品質保証の要になります。
バイヤーやサプライヤーの立場から見た粘度管理の重要性
バイヤーは最終的に顧客へ安定した品質の商品を届ける義務があります。
一方、サプライヤーとしてはその求めに応じ、粘度がロットブレすることなく再現できるかという信頼が非常に重視されます。
それぞれの立場でどのようなリスクがあり、どう抑え込むべきか、現場での実践的な取り組みが求められるようになってきています。
撹拌翼(インペラ)形状がもたらす混合特性の変化
歯磨き粉はジェルベース・ペーストベース等がありますが、どのタイプも多相系(固体粒子+液体基材+発泡剤・香料等)となります。
そのため、「成分が均一に分散している状態」「気泡混入が最小限であること」など、撹拌翼の選定は単なる回転体としてではなく、混合目標に合わせた最適化が不可欠です。
代表的な撹拌翼形状とその特徴
1. パドル型翼
・微細な粒子混合や粘性が高めのバッチ撹拌でよく使われます。
・せん断よりもバルクの折り返し流れで大きな撹拌効果を持ちます。
2. アンカー型翼
・粘度が非常に高くなる歯磨き粉の後半混合で使われやすい翼です。
・壁面のペーストをしっかりと引き剥がすため、死角・デッドスペースが生じにくい利点があります。
3. タービン型翼(ラジアルフロー)
・低~中粘度領域で固体粒子の分散を得意とします。
・微細な成分間の均一化には有利ですが、過剰な泡立ちを誘発する可能性もあります。
粘度制御と死角撲滅:昭和的アナログ勘からの脱却
従来は「長年の感覚と量産データ」で翼形状を決めがちでしたが、人手不足や多品種少量化が加速する昨今、再現性の高い工程設計の模索が必要になっています。
デジタル流体シミュレーションや透明模型実験なども有効ですが、現場では「実際にどこにデッドスペース(混ざりムラ)が残るのか」「原材料追加順序によりどれほどバラツキが出るか」といった予見・管理も欠かせません。
撹拌翼を変えるだけで、既存タンク・設備を生かしながらバラツキ低減できる点で、コストパフォーマンス向上にも資します。
混合時間の管理:なぜ工程ごとに最適時間が異なるのか?
工程設計の失敗でよくあるのが「とりあえずしっかり撹拌しておけば問題なし」という誤解です。
実務上は、混合時間とせん断履歴(混合による力の加わり方)が製品粘度に直接影響し、「混ぜすぎ」も「混ぜ足りない」も大きなリスクとなります。
分散と脱泡とせん断のバランス
歯磨き粉の場合、一般的な工程は以下のようなステップで管理されています。
1. 溶解(液体ベース作り)
2. 粉体分散(研磨材、増粘剤等の添加と均一分散)
3. 脱泡・仕上げ混合
1や2の工程では、十分な混合時間と流体せん断が必要ですが、3では「過度な攪拌」で逆に気泡抱き込みや粘度降下を招いてしまいます。
この“攻め時・引き際”の判断を、感覚のみに頼るのではなく、マニュアル・データ・IoT活用等を通じて定量管理することが肝要です。
粘度確認タイミング・デジタル測定の活用
工程内で10分ごとに取り出して粘度計でバックサンプル測定する、IoT撹拌モーターと粘度計をリンクさせてリアルタイム監視するなど、デジタルとアナログのハイブリッド管理が近年注目されています。
これにより「誰が混ぜても同じ結果」「人による属人化の排除」が進みます。
ベンチマークすべきは他業界の混合管理手法
日本の製造業、特に既存の歯磨き粉ラインは「昭和的アナログ文化」が根強く残っています。
しかし、化粧品や医薬品分野、グローバル競合では「粘度と混合管理の自動化・見える化」が急速に進んでいます。
よくある失敗例と他業界の成功アプローチ
例えば、粉体投入方法を毎回変えてしまいバラツキ発生、規定混合時間オーバーにより研磨剤粒度に偏りが出たり、といったアナログ現場の“あるある”は多いです。
一方で医薬系混合機では、原料投入順・混合速度・温度履歴・pHなどマルチパラメータで「工程記録・トレーサビリティ」を担保しています。
バイヤーや出荷先監査を考えると、第三者への説明責任や海外認証も必須になりつつあるため、他業界の“粘度見える化”実践例に学ぶことは大きなヒントとなるでしょう。
まとめ:歯磨き粉製造を一歩進める撹拌・混合管理の新視点
歯磨き粉の粘度一定化は、製造現場の感覚だけでなく、「撹拌翼形状の最適化」「混合時間・方法の定量管理」「デジタル&アナログの融合現場管理」がカギとなります。
現場担当者としては
– 工程ごとの混合目的の明確化
– 撹拌翼設計の見直し
– データに基づいた工程設計とマニュアル化
– IoT、AIツールによるモニタリング強化
こうしたアプローチこそが、品質の均一化と効率化、働き方改革に直結するといえます。
バイヤーやサプライヤーの方も、技術的要求や工程理解を深めることで、より良いパートナーシップ構築とリスク低減に寄与できます。
製造業全体の“アナログ脱却”と新たな地平線の開拓には、こうした日々の現場改善の積み重ねが不可欠です。
今後も変化する業界環境の中で、現場目線と最先端技術をバランスよく取り入れていくことが、歯磨き粉製造のさらなる発展につながると確信します。
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