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再生材・リグラインドの活用を品質と価格のバランスで合意

目次
はじめに:再生材・リグラインド活用が求められる時代背景
現代の製造業界では、サスティナビリティの観点やコスト競争力強化のために、再生材やリグラインドの利用が年々重要性を増しています。
私たちが歩んできた昭和から平成、そして令和のものづくりの現場でも、その動きは避けて通れません。
特にプラスチック部品製造や樹脂成形の現場では、バイヤーからのリクエストや社会的な要請として、再生材やリグラインドの活用が強く促進されています。
一方で、品質管理やトレーサビリティの観点からは慎重な判断が求められることもしばしばです。
この記事では、再生材・リグラインドの活用を「品質」と「価格」のバランスという視点で、実際の現場でどのように合意形成していくのか、業界内外の最新動向や具体事例も交えて深掘りしていきます。
再生材とリグラインド、それぞれの特徴と用途
再生材の定義と特性
再生材とは、製品使用後に回収したプラスチック等の素材を洗浄・再加工して得られる原材料のことを指します。
その過程で一度完全にリサイクルされるため、異物や異材混入のリスクが低減されやすいのが特徴です。
また、近年はリサイクルの選別・処理技術が飛躍的に進歩し、純度や品質面でバージン材に近いレベルの再生材も登場しています。
リグラインドの定義と特性
リグラインドとは、成形工程のゲートランナーや不良品等を物理的に粉砕して素材として再利用するものを指します。
同じ種類・グレードの材料から即座に再利用できるため、コスト面やサステナビリティの観点で注目されています。
ただし、繰り返しリグラインドを使う場合、物性劣化や品質安定性の維持が難しくなるため、使い方には技術的なノウハウや注意が必要です。
主な用途と採用事例
これらの素材は主に、自動車部品・家電・OA機器・包装資材・建築資材などに広く使われています。
例えば多くの大手自動車メーカーでは、バンパーなど目に触れづらい内装部品に再生材やリグラインドを積極採用しています。
また、家電業界でも外装やパッキン類、内部構造部品での採用が広がるなど、用途範囲が拡大し続けています。
品質と価格のバランス:なぜ合意形成が難しいのか
コストメリットを追求するバイヤーの視点
バイヤー目線では、再生材やリグラインドを使うことで、原材料費の抑制や環境負荷低減によるイメージアップ、SDGs調達比率の増加といったメリットが明確です。
とくに昨今は原油価格やバージン樹脂価格の高騰が激しく、コストセーブの観点からも導入圧力が高まっています。
調達購買部門では、サプライヤー各社の提供する再生材・リグラインド品の「単価」「供給安定性」「技術対応力」の定量評価を行い、積極的な適用拡大を求める動きが強まっています。
品質を守りたい現場・サプライヤーの視点
しかし、サプライヤーおよび現場(製造・品質部門)では、一貫した品質保証とトラブル回避を最優先としています。
再生材およびリグラインドはロットごとのバラつきや、異物・異種混入リスクの増加、物性劣化といった問題が伴います。
数量が膨大な生産ラインで一度でも品質トラブルが発生すれば、納期遅延・生産停止・客先苦情などの重大なリスクにつながります。
とりわけ「昭和からの流れ」に根ざすアナログ的な現場感覚では、「多少素材費が高くとも安定した品質維持を優先すべき」という意識が強く根付いています。
両者のバランスをどうとるかがカギ
したがって、バイヤーは価格重視、現場は品質重視という相反する立場になりがちです。
最終的には「どこまでリスクを許容し、どこまで価格を追求するか」を両者が現実的な着地点で合意できるかどうかが、導入成功の分かれ目になります。
実践現場での合意形成プロセスと注意点
工程ごとのリスク把握と透明な情報共有
合意形成の第一歩は、再生材・リグラインドを使うことによるリスク(品質・価格・生産性)の洗い出しです。
実際に私の現場でも、新素材導入にあたり品質管理部門が「受入検査」「物性測定」「異物チェック」などを徹底し、合格基準を設定します。
バイヤーとの打合せでは、これらのデータを開示しつつ、「ここまでが弊社で実現可能な品質レベル」と「この範囲でのコストメリット」のバランスを文章・数値で明示します。
ここで主観や感情論に陥るのではなく、あくまで客観的な事実ベースでリスク・メリットを提示するのがポイントです。
サプライヤー任せにしない、現場主導のトライアル活動
バイヤーの「安くできませんか?」という要望や、サプライヤーの「これぐらいは大丈夫でしょう」の姿勢だけに頼るのは結果的に大きなトラブルのもとになります。
現場スタッフが主体となり、材料試作やサンプル成形を複数回繰り返し、ラインテストによる量産シミュレーションを十分に実施しましょう。
その結果得られたデータをもとに、「この配合率までは品質・生産性とも維持可能」などの現実的な落としどころをバイヤー側と繰り返しディスカッションすることが不可欠です。
調達コストだけでなくトータルコスト(TCO)の議論を
再生材・リグラインド導入において見落とされがちなのが「トータルコスト(TCO)」の観点です。
例えば、
・材料単価は下がったものの、歩留まり低下や追加の品質検査でコスト増となっては意味がありません。
・後工程や流通過程で品質問題が発生し、クレームやリコールコストが膨らむ例もあります。
バイヤーは「材料原価」だけで判断せず、総合的なコストを共通の指標として議論することが、納得感の高い合意形成につながるのです。
業界動向と今後の展望
環境規制・脱炭素化のトレンドが後押し
昨今のサステナビリティ投資やESG経営の加速、REACH規制、プラスチック資源循環促進法など、再生材利用を後押しする外部要因も強まっています。
欧州や中国大手企業ではすでに法令で一定比率以上の再生材を義務付ける動きも広がっており、日本でも製品ライフサイクル全体でのCO2排出量報告が求められ始めています。
サプライヤーの立場でも、こうした国際トレンドを踏まえ、単なる「安価な原料」から「環境貢献型の高付加価値素材」と位置付けなおすことが、今後の競争力強化に欠かせません。
デジタル活用による品質保証と異物混入防止
昭和的な目視検査・現場の勘からの脱却も課題です。
近年はAI画像解析やIoTセンサを活用した原料ロットごとのトレース、複数指標による品質監視が実現しつつあります。
サプライヤー側もこうしたデジタル取り組みを進め、「再生材でも安心・安全の品質」を可視化・数値化する取り組みが導入を推進しています。
工場の自動化とも連動し、省人化と品質保証の両立が今後ますます重要になるでしょう。
バイヤー-サプライヤー間の「共創」が新たな競争力に
今後のサプライチェーンでは、
・バイヤー「安価で高品質な材料を求める」だけでなく、
・サプライヤー「技術革新で安全・確実な供給体制を構築する」
その両輪で初めて「持続可能な再生材活用社会」が描けます。
双方が「現場目線」で課題を洗い出し、「共創型の価値創出」を志向することで、昭和から続くアナログ的な対立構造を乗り越えることが、これからの新たな地平線となるでしょう。
まとめ:実践的合意ポイントと現場視点の未来像
再生材やリグラインド活用は、日本の製造業にとって避けて通れないテーマとなりました。
大切なのは、単なるコストダウンや規制対応にとどまらず、「バイヤー―現場―サプライヤー」三者が現場目線で「合意の着地点」を丁寧に創り出すことです。
そのためには、
・透明なデータ共有と合意形成
・現場主導のトライアルと技術検証
・TCOを意識した総合的コスト議論
・業界動向を踏まえた先進的な品質管理とデジタル化
これらの地道な取り組みを積み重ねることが、持続可能な発展につながります。
昭和のやり方も、最先端技術も、現場力も、これからのバイヤー・現場・サプライヤーの共創が生む「新しいものづくりの力」へと昇華していくでしょう。
これから製造業に携わる皆さん、バイヤーを目指す方、そしてサプライヤーの皆さんも、ぜひ現場に根差した知見と新たな思考で、「より良い製造業の未来」を共につくっていきましょう。
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