- お役立ち記事
- AIを活用したエネルギー効率改善と製造業のSDGs推進事例
AIを活用したエネルギー効率改善と製造業のSDGs推進事例

目次
はじめに:AIとエネルギー効率改善が製造業とSDGsの架け橋になる理由
現代の製造業における最大の課題の一つが、エネルギー効率の改善です。
世界的なカーボンニュートラルへの動きが加速する一方、日本の多くの工場では昭和時代から続くアナログな手法や感覚によるオペレーションが根強く残っています。
しかし、AIの活用が着実に進むなかで、エネルギー効率改善と持続可能な開発目標(SDGs)の推進が現場から可能となりつつあるのです。
今回は、工場現場でのリアルな実践目線から「なぜAIがエネルギー効率を劇的に変えられるのか」、そして実際の推進事例や失敗・成功のポイントを深掘りします。
エネルギー管理の現状:アナログからの脱却にAIが果たす役割
アナログからの脱却が急務となった背景
多くの日本の製造業の現場では、いまだに設備の日報、エネルギー使用量の記録、故障ログまでもが手書きやExcel、伝統的な現場ヒアリングに依存しているのが実情です。
理由は簡単で「長年の経験」で最適化されてきた現場の知恵が、データ化やデジタルへの置き換えに強い抵抗感を持つからです。
ですが、このやり方では全体最適やリアルタイムでのエネルギー効率改善は非常に困難です。
AI導入による現場のパラダイムシフト
AIがもたらす最大のメリットは、大量のデータを高速かつ正確に分析し、現場で見えにくい「ムダ」や「異常」を瞬時に検知できることです。
私が工場長時代に直面した「予想外の電気・ガスのムダ使い」も、人的チェックでは見逃されやすく、トラブル発生後にやっとその存在に気づいたということが少なくありませんでした。
AIによるエネルギー管理ならば、設備ごとの稼働効率、待機電力、異常消費パターンを数分単位で可視化し、現場作業者にも分かる形でリアルタイム通知できます。
AIによるエネルギー効率改善の具体的メカニズム
実際にどこにAIが効くのか?主要活用領域を整理
AIによるエネルギー効率改善には、次のようなポイントが挙げられます。
1. エネルギー使用の“傾向分析”と“異常予知”
2. 生産スケジューリングと連動した“需要予測”型自動制御
3. 機器の保守保全と“状態監視”
4. 設備間やライン間の“最適バランス配分”
例えばエアコンプレッサーや大型炉といった大消費電力設備の稼働ログにAIで学習させると、「月曜朝一は立ち上げ消費が突出」「特定の時間帯にピーク電力が発生」など、パターン化できる“ムダ”や“異常”を可視化してくれます。
現場作業員・管理職の“納得感”を作るAI活用のコツ
AI活用で最もハードルになるのが、現場の納得と自発的な運用です。
「いきなり自動でON/OFFされて現場が混乱…」「AIの判断基準が分からず結局手動に戻る…」といった“昭和的アナログ思考”との衝突も多く見られます。
私の経験では、「問題が起きてからAIの活躍が分かる」よりも、「日々のちょっとした節電ポイントを可視化・通知し、小さな成果実感を積み上げる」導入体験こそが、現場に荘厳な説得力を発揮します。
たとえば「AIが検知した空調・照明の異常OFFパターンに気づき、年間10万円の節電に」といった分かりやすい成果事例の積み上げが地道に重要です。
製造業におけるSDGs実現への現場目線のアプローチ
SDGsと製造業、その本質的なつながり
製造業は“モノづくり”という日本の強みでありながら、環境負荷や過剰生産、廃棄物問題という負の側面も常に抱えています。
そのため「SDGs推進」と言うと、どうしてもCSR(企業の社会的責任)レベルの話、トップダウンの経営視点だけで語られがちです。
ですが、実際は現場の「あ、今、これ止めたらムダ減るよね」という日々の“改善”が、SDGsを支える現場目線の最前線になっています。
AIによる“見える化”が現場のモチベーションにつながる
従来、「エネルギー効率改善はコスト削減」という内部的なインセンティブが大半でした。
しかし、AI導入でエネルギー使用やSDGs関連データを「見える化」し、現場の成果が全社や地域に発信されることで、作業者個人のモチベーションや誇りの醸成にもつながっています。
私自身、某大手工場で「みんなで省エネチャレンジ」というプロジェクトを立ち上げ、AIのレポーティング結果を毎週共有したところ、「ウチのラインが“最も改善できた”」と班が盛り上がり、自発的に新しい改善案がどんどん出てきました。
AIの数値的裏付けは、昭和的な現場育成文化にも新風を吹き込みます。
具体的なAI×エネルギー効率の成功事例
事例1:食品工場におけるAI自動最適化制御
ある大手食品メーカーの工場では、毎日異なる生産量や商品の切り替えによってエネルギー使用が大きく変動していました。
ここでは「生産スケジュール×天候×過去の消費パターン」をAIが統合解析。
AIが当日の最適な稼働プランを自動で計画し、「空調・圧縮空気供給・冷凍設備」を逐次自動調整した結果、年間で15%の電力削減とCO2排出の大幅削減を実現しました。
事例2:自動車部品工場での予知保全によるエネルギーロス低減
別の自動車部品メーカー工場では、成形機や工業用ロボットの摩耗・故障による“ムダなエネルギーロス”をAI解析で予測。
設備の状態監視データと消費電力ログを掛け合わせて解析することで、「ベアリング異常による余分なモーター稼働」や「オイル劣化起因のムダ加熱」パターンを検出。
早期メンテナンスにつなげ、年数百万円単位の省エネと機械寿命の大幅向上を実現しています。
導入の壁と、その乗り越え方――現場目線からのアドバイス
人材と教育、データ活用の文化醸成が鍵
AI活用のためには現場データの蓄積や、スタッフの「データリテラシー」向上が必須です。
「AIなんて難しそう」「使いこなせないのでは…」という心理的抵抗も根強いですが、簡単なユーザーインターフェースや“現場ラウンド”でAI活用方法のワークショップを実施することで、実際に“効果を体感”できる仕組みづくりが大切です。
コストとROI(投資対効果)の見せ方を工夫する
AI導入には一定の投資コストがかかります。
そのため財務部門や工場長クラスとの連携が重要となります。
導入段階では「全ての工程・工場で一気に」ではなく、「省エネ効果が見込める一部ラインでトライアル」から始め、定量的な改善効果と定性的(現場の働き方改善、定着促進など)なメリットを分かりやすく“見せる”ことが説得力につながります。
AI×エネルギー効率の今後の展望――製造業の新しい価値創造へ
AIの活用はもはや最新鋭の一部大企業だけでなく、中小メーカーやサプライヤーにも波及し始めています。
「バイヤーが何を求めているか」「サプライチェーン全体でどう最適化するか」という視点も、今後さらに重要になっていきます。
今後の製造業に求められるのは、単なる省エネやコストカットではなく、「データに基づいた現場改善力」「SDGsに貢献できる社会的価値」、そして「変化への柔軟な適応力」です。
昭和回帰ではなく、“日本の現場力”を次世代へとつなげていくAI活用は、現場の全員が主役になれるストーリーを生み出します。
私も引き続き、現場の知見をアップデートしながら、製造業に携わるみなさんが自信と誇りを持てるSDGs推進の一助となれれば幸いです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)