AI-ORDERとERP連携で二重入力を排除する業務自動化newji事例

はじめに：なぜ今、AI-ORDERとERP連携が必要なのか？

製造業は「昭和のアナログ体質」が根強く残る業界です。

紙の伝票、FAXでの受発注、手書きの帳票……。

このような慣習が今も一部の現場では当然のように流れており、デジタル化が叫ばれる中でもなかなか変革が進んでいません。

しかし、近年は新型コロナウイルスの影響によるリモートワーク、グローバルサプライチェーンの混乱、そして深刻な人手不足という“逆風”が、これまで「仕方ない」と見逃されてきた非効率な業務に強くスポットライトを当てています。

その課題を根本から変え得るのが、AI-ORDERとERPシステムの連携による業務自動化です。

本記事では、私が長年大手製造業の調達・購買・生産管理・工場長として蓄積してきた知見と共に、newji（仮名）の実践的な導入事例をベースに、製造業目線で“使える”自動化のポイントを語ります。

バイヤー・生産管理担当者だけでなく、サプライヤー・営業担当の方にも読んでいただきたい内容となっています。

AI-ORDERとERP連携の概要とメリット

AI-ORDERとは何か？

AI-ORDERは、AI（人工知能）を活用した受発注支援システムです。

発注データの入力・集計・見積依頼、さらには納期回答や検収まで一元管理できるプラットフォームとして提供されています。

AIによる自動化やデータ分析が強力な武器となり、「人がしなければならない手作業」を大幅に削減できる点が強みです。

ERP連携の意義

ERP（Enterprise Resource Planning：基幹業務システム）は、在庫・購買・原価・財務・生産進捗といった幅広い業務領域を一元管理するシステムです。

ところが従来は「AI-ORDERで受注→ERPにも同じ内容を手入力」といった形でデータが分断され、現場に二重入力・転記ミスという“ムダ”が発生していました。

AI-ORDERとERPがAPIやRPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）で自動連携することで、「一箇所の入力が全システムにリアルタイム反映」され、業務効率・正確性が飛躍的に向上します。

主なメリット

• ヒューマンエラー（転記ミス、入力漏れ）の根絶
• 事務作業時間が最大50%削減
• 発注残・納期遅延のリアルタイム把握
• サプライチェーン全体の可視化・最適化
• バイヤー・サプライヤー双方のストレス減少

現場の実情：いまだ根強い非効率、解消の壁

アナログ作業の現実

現場レベルでは、まだまだExcelや紙ベースの受発注管理が多いのが実情です。

なぜなら「今のやり方に慣れている」「ITが苦手」という心理的バリアが根強いほか、業務が複雑化し標準化が難しい“カスタム仕事”が多いからです。

“昭和のやり方”が残るもう一つの理由は、過去の「痛い失敗体験」にもあります。

例えば「新しいシステム導入で、逆に現場が混乱」「二重管理が発生」――。

これが、現場自動化への消極姿勢につながっています。

サプライヤー側の困りごと

バイヤーと連携するサプライヤー側も、実は“自社システムとバイヤーのシステムとの間で何度も同じ情報を入力しなおす手間”に悩まされています。

メールの添付ファイルを別々の帳票に落とし込み、違う型式で報告……。

この煩雑さは、取引先が増えるほど顕著です。

この「二重入力問題」はバイヤー・サプライヤー双方にとってストレス源であり、定着率向上や新規取引獲得の障害にもなってきました。

newji導入事例：現場改革のリアル

背景と課題

newjiは老舗の産業機械メーカーです。

複数の海外拠点・サプライヤーを持ちつつ、発注処理は本社購買部3名、バックオフィス5名で対応していました。

従来は

• 各担当者がExcel台帳に発注入力
• 発注書は都度PDF生成＋Fax/メール送信
• ERP（SAPベース）には後追いで入力・二重管理
• 納品確認や検収は紙伝票・電話で手動突合

という、昭和＋デジタル混在の“手間のサンドイッチ”状態。

結果「二重入力ゆえのミス・手間」「問合せ対応で本業に集中できない」など、稼ぎ頭であるバイヤーの価値創出余地を圧迫していました。

AI-ORDER導入による変化

newjiはまずAI-ORDERの受発注一元化モジュールを導入。

さらにERPとのAPI連携を実施しました。

導入時に取った具体策は、

• 共通マスタ（部品・仕入先情報）の同期設定
• Excelでバラバラだった発注フォーマットを統一
• 発注→AI-ORDER入力→自動でERPへ取込（連携トリガ設定）
• ERP側で入荷処理すると、AI-ORDERにも自動反映

という、段階的な“つなぎ目”整理です。

これにより、誤入力や伝票の入力漏れ・転記ミスが激減。

事務メンバーは約半数が他業務と兼務できるようになり、バイヤー部門は見積査定やサプライヤー発掘の“本業”に専念できるようになりました。

サプライヤーの反応と効果

AI-ORDERは多種多様なサプライヤーともWebポータルで連携。

「請求書発行や納期回答、問い合わせ」がワンストップ化。

「とにかく同じことを何度もしなくてよくなった」
「納期問い合わせが減って助かる。電子データで証跡が残るから後追いも安心」

こういった声が多く寄せられ、サプライヤー側の満足度も大きく改善しました。

導入成功のカギ：現場主義×ラテラルシンキング

「ツールありき」では失敗する

AI-ORDER、ERPのような先端的なツールは、単なるIT導入だけでは本当の業務改善につながりません。

大切なのは、「今の業務フローのどこがボトルネックなのか」「それは本当に必要なプロセスなのか」を徹底的に現場ヒアリングし、“あるべき姿”を現場と一緒に定義することです。

ラテラルシンキングで新たな視点を

「これは昔からこうだから」「前にやって失敗したし…」

こんな思い込みを一旦横に置き、まるで異業界の先進事例や、ITベンチャーの合理的なやり方にヒントをもらう――。

一見関係なさそうなアイデアを“横断的に”持ち込み、現場の知恵と組み合わせることがラテラルシンキングの要諦です。

実際、newjiのプロジェクトでは、製薬・物流企業のシンプルな業務フローや「電子承認ワークフロー」を取り入れ、“アナログな製造現場”の空気感に合わせアレンジしました。

一歩先を行く柔軟な発想が、改革の成否を決めます。

今後の展望と製造業キャリアへの示唆

AI-ORDER×ERP連携を軸とした自動化は、今後より「省人化・レジリエンス（柔軟性）」を求められる製造業に不可欠なソリューションです。

デジタル人材が希少な業界だからこそ、今“現場目線”で業務フローの見直しをリードできることが、バイヤーや工場長、現場担当者自身の貴重なキャリア価値となります。

また、サプライヤー側にとっても、大手メーカーの先進的なオペレーションを理解して対応力を高めることが、今後の受注競争力の源泉となるでしょう。

まとめ：AI-ORDERとERP連携で、製造業の「働き方」を変える

製造業に根強く残る二重入力、アナログ作業――。

これを解決するAI-ORDER×ERP連携は、単なる事務効率化ではありません。

失敗や面倒を恐れず、“現場目線での改革”を推進することで、バイヤーもサプライヤーも本来注力すべき付加価値創出業務にシフトできます。

「もう昭和には戻れない」そんな覚悟を持って、デジタルと人の力が融合する“新たな地平線”へ、一歩踏み出しましょう。

製造業の未来は、現場の「気づき」から始まります。