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発注単位と梱包単位を合わせて端数コストを消す発注設計

目次
はじめに:製造業における発注単位と梱包単位の重要性
製造業の現場では、日々の調達や生産において「発注単位」と「梱包単位」の違いが現場運営に与える影響は決して小さくありません。
発注単位とは、一度に何個・何ロットを発注するかを決める最小単位のことです。
一方、梱包単位は、サプライヤーが納入する際にまとめて梱包する単位を指します。
この2つがずれていることによって、端数が発生し、現場や管理部門には“端数コスト”とも呼ばれる様々なムダやトラブルが生まれます。
本記事では、現場で長年培った知見を踏まえ、発注単位と梱包単位を揃えて端数コストを消すための実践的な発注設計の考え方を詳しく解説します。
令和になった今も、未だにアナログな調達文化が残る製造業界ですが、現場目線で「誰もが今すぐ取り組める」ノウハウをお届けします。
端数コストとは何か?現場目線で見るムダの正体
端数が生む「小さな無駄」が積もる現実
たとえば、1箱100個入りで納品されるネジを1回の生産で135個使うとします。
しかも、発注単位は50個ごと。
実際に使うのは135個、発注は150個、納品は2箱=200個。
このとき、65個が次回以降の在庫として“残る”ことになります。
一見「たった65個」と思うかもしれませんが、こうした小さな端数が部品ごと・アイテムごと・日ごと・現場ごとに積み重なると、管理コスト、置き場所、棚卸し負担、場合によっては廃棄ロスも膨れ上がります。
アナログ現場で発生する端数コストのパターン
昭和世代から続くアナログ業界だと「とりあえず余分に多めに発注しておこう」「バラした箱を別の引き出しに入れて在庫管理しよう」など、“長年の慣習”で対応しているケースが多くあります。
これによって生じる隠れたコストは、以下のようなものがあります。
- 端数在庫を保管するためのスペースコスト
- 誤品(別品種やロットの混入)リスク増加
- 棚卸や管理業務の工数増加
- 管理忘れによる長期滞留・廃棄ロス
- 生産現場で部品供給ミスによる手戻りや停止
端数発注によるこうした地味ながら根深い課題は、「日々の当たり前」が見直されない限り、簡単には消えません。
なぜ発注単位と梱包単位がずれるのか?典型的な原因
バイヤーとサプライヤーの立場の違い
サプライヤー側は、自社での梱包作業効率や物流コスト削減、品質保持などを理由にモノの取り扱い単位を決めています。
たとえば、1ケース12本、1箱24個など、“パレット単位で積みやすい”、”梱包材が安い“といった事情が背景にあります。
一方で、バイヤーや生産管理担当は「今必要な生産量に合わせて、ムダなく調達したい」と考えますが、サプライヤーのロジックとズレが生まれやすいのはこのためです。
生産計画や需要予測と連動していない固定発注
また「毎月同じ数量で定期発注している」「過去の実績ベースで安易に発注単位を決めている」など、現場実態や需要動向を反映しないまま発注を続けているケースが多く見受けられます。
この結果、「発注単位=梱包単位」という一致が偶発的にしか実現せず、端数コストが慢性的に発生します。
仕入先とのコミュニケーション不足
「発注ロットや梱包仕様はサプライヤー任せ」「昔からの取引仕様だから変更できない」といった思い込みが、改善提案や最適化チャレンジを阻んでいることも少なくありません。
端数コストを消す発注設計の基本ステップ
1.現状把握と“端数見える化”
まずは自社の購買実績データから、「どのアイテムで、どれだけの端数が毎月・毎年発生しているか」を棚卸ししましょう。
おすすめは、Excelなどで「部品ごとに発注実績、納品数、現状在庫の推移」を一覧化し、端数在庫量やロス金額を可視化する方法です。
自社工場だけでなく、外注先や関連部署にも協力を仰ぐと、全体最適の観点で課題抽出ができます。
2.サプライヤーと梱包単位をすり合わせる
現場調達の多くは「言われた通りに梱包されてくるから仕方がない」と諦めがちですが、サプライヤーと腹を割って話せば、柔軟な対応が可能なケースも多数あります。
サプライヤーの梱包仕様・最小出荷単位・増減可能幅(たとえば10個刻み単位で可など)などをヒアリングし、生産現場側の需要パターンとどうすれば合致できるかを一緒に検討するのが大切です。
3.発注ロットサイズを見直す
月単位で発注していたものを週単位にしたり、月初・中旬・月末で合計が梱包単位にピタリ揃うようにオーダーを分割したり、「TOTO式ジャストインタイム」的発想を導入するだけで端数コストが激減することもあります。
生産部門と購買部門、そしてサプライヤー三者で、定期的なコミュニケーションをとることが理想です。
4.端数最小化につながる新たな発注ルール策定
発注単位と梱包単位の最小公倍数が容易に合致しない場合、“端数調整係”を設けたり、“半端在庫引取”をサプライヤー側に依頼する制度を採用するといったアイデアもあります。
小ロット多品種時代であれば、「自動発注システム」で梱包単位に自動調整するロジックをあらかじめ組み込むのも有効です。
成功事例:端数コストゼロ運用を実現した現場の取り組み
実践例1:年間ロス400万円を削減した電子部品メーカーのケース
自社工場と外注先双方で、185種類の購入部品の梱包単位・発注実績を洗い出したところ、「全体で年間延べ8,000ロット超の端数在庫が社内各所に点在」していることが判明しました。
発注設計を見直し、サプライヤーと話し合いを重ね、主要部品の梱包単位に合わせて発注システムの自動調整機能を追加。
結果、およそ年間400万円分の在庫ロスをカットできました。
実践例2:梱包単位統一で棚卸ミスゼロ達成の自動車部品工場
現場保管棚スペースが慢性的に不足していたことから、全納入部品を梱包単位基準でしか納入できない運用に変更。
「半端な箱には黄色ラベル」という管理ルールもセットで徹底。
現場オペレーターの部品取り違えが激減し、無駄な部品補充工数も三分の一に削減できたケースもありました。
発注単位と梱包単位を合わせることの本質的な価値
現場と調達バイヤーにとっての共通メリット
発注単位と梱包単位を一致させることの最大のメリットは、多角的です。
- 現場の在庫管理が一括・簡便化し、ヒューマンエラーを削減
- 棚卸・受払い処理の効率化による工数削減
- サプライヤー側も効率的な梱包や出荷が可能となり、納入品質も安定
- 廃棄ロス・不要な在庫投資を減らし、キャッシュフロー改善
- “端数のムダ”に煩わされない、本来業務への集中促進
特に日本の中小・中堅メーカーでは、こうした地道な発注設計の改善が現場力向上の原点となります。
サプライヤーから見た発注単位設計の意味
バイヤーが自社の現場事情や生産パターンをきちんと伝え、サプライヤーにも納入や梱包業務の負担軽減があることを説明すれば、「お互いが納得できる最適単位」が必ず見つかります。
単なる“値下げ交渉”ではなく、「お互いのムダを減らし双方がウィンウィンになる発注モデル」として強力なパートナーシップ構築にもつながるのです。
最後に:これからの製造業に必要なラテラルな発注設計思考とは
これまでの日本製造業は、現場や生産計画、購買管理など各部門最適が先行し、知らず知らずに端数コストやムダが組織内に固定化されてきました。
しかし、今後AIやIoTといったデジタル技術の進化によって、発注単位と梱包単位設計も「見える化」「自動調整」する時代が訪れつつあります。
大切なのは、部門や立場を超えたラテラル=水平型思考で「なぜ端数が出るのか」「本当に今の発注単位・梱包単位が最適なのか」をゼロベースで見直す姿勢です。
社内外の壁を越えたコミュニケーションと、現場目線の課題把握が、必ず生産性向上と新しい競争力創出につながります。
「昭和の慣習」から一歩踏み出し、端数コストゼロ運用を目指して、発注設計を見直してみてはいかがでしょうか。
製造業の“足元”からイノベーションは始まります。
ご参考になれば幸いです。
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