投稿日:2025年9月3日

アルミ部品とステンレス部品の加工および接合

はじめに:アルミ部品とステンレス部品の現場での重要性

製造業において、アルミ部品とステンレス部品は欠かすことのできない存在です。

それぞれの材料特性を活かし、多様な用途で用いられています。

特に、近年では軽量化や耐食性向上、省エネルギーなどの社会的要請が高まり、両素材のコンビネーション活用が盛んです。

しかし、現場でこの二つをうまく加工・接合するには古き良き昭和の技術と、デジタル時代の新たな技術・管理手法の両方を理解し適切に運用する必要があります。

本記事では、現場目線のノウハウと最新動向を交えながら、アルミとステンレスの加工および接合のポイントを解説します。

バイヤーを目指す方や、サプライヤー視点で「ものづくりの現場」を深く知りたい方のヒントとなれば幸いです。

アルミ部品・ステンレス部品の基礎知識と用途

アルミ部品の特性と主な用途

アルミニウムは、その軽量性と加工性、耐食性の高さが特長です。

自動車部品、家電、精密機械、航空機など、軽さが重要な分野で多用されます。

たとえば自動車の場合、EV化の流れで「走行距離延伸」を狙った軽量化が命題となっており、パネルやシャーシ、エンジン周辺部品にアルミ鋳造品や押し出し品が使われています。

さらに、アルミは放熱性にも優れているため、電子部品のヒートシンクなどでも広く活躍します。

ステンレス部品の特性と主な用途

一方、ステンレスは鉄にクロムやニッケルを加えた合金で、高い耐食性・耐熱性が魅力です。

食品加工、化学プラント、医療機器、厨房設備など、衛生性や耐薬品性、耐久性が求められる場面で主力となっています。

ステンレスはJIS規格で分類されており、SUS304など18-8系は溶接や加工もしやすく、最も汎用的です。

強度や磁性、研磨・バフ仕上げの美観など、用途により多彩な種類が使い分けられているのが特徴です。

両者を組み合わせる理由

技術革新が進む一方、製品設計では単一材料で要件を満たすのが難しいケースも増えています。

そのため「必要な性能を必要な個所にだけ」持たせる設計がトレンドとなり、アルミとステンレスのハイブリッド化が進んでいます。

代表例は建材のサッシ、車両パーツ、産業機械のフレームやカバー類などです。

この背景には、省資源や価格変動対応、部品管理の効率化といったバイヤー目線の合理化努力もあります。

アルミ部品・ステンレス部品の加工の現場ノウハウ

アルミ加工の現場課題とポイント

アルミは加工しやすいといわれますが、切削ではバリや細かいカエリが出やすかったり、摩擦熱で工具に溶着しやすいなど注意点も多いです。

特に薄板や極小部品の切断・穴あけでは歪みや変形に気を配る必要があります。

現場でよく用いられるのは、高速切削やプレス、押し出し成形、鍛造、鋳造、表面処理など多岐にわたります。

アルミ特有の「表面酸化膜」も強固なため、溶接や接着前処理では脱脂・酸化膜除去(エッチング)が重要です。

昭和時代からのベテランは職人技でバリ取りや面取り、表面研磨を行ってきましたが、近年は自動化やCNCマシニングによる安定品質確保が主流になっています。

ステンレス加工の現場課題とポイント

ステンレスは高温下の強度低下や熱膨張、加工硬化による工具摩耗など、アルミとは異なる課題があります。

切削加工ではその硬さゆえにドリル・タップの選定や、切削条件(低速・低送り)、潤滑油の活用が欠かせません。

また、溶接工程でも「焼け」(酸化着色)や「割れ」を防ぐため、溶接電流や治具固定、後処理の工夫が重要です。

ステンレス材料はコストも高いため、材料ロスを極力抑えた工程設計が求められます。

部品のバッチ化生産や、現場でのチリ紙一枚分の誤差にまでこだわる「精密加工文化」が根付いているのも、素材コスト意識が強いからこその企業努力だといえます。

加工時の共通事項と自動化の動向

アルミ・ステンレスいずれも、図面精度と現場実作業のすり合わせ(現場改善)は不変のテーマです。

測定機器やデジタルノギスなどの自動計測を活用し、ヒューマンエラー削減と作業者負担軽減が強く推進されています。

例えば多工程の自動化では、先行してアルミ部品製作をロボットやマシニングセンタで効率化し、後工程で人手によるバリ取りを残す「ハイブリッド生産」も普及しています。

将来的には、AI画像検査やIoTによるリアルタイム品質管理が現場の新たな地平を開拓することが期待されています。

アルミ部品とステンレス部品の接合技術

従来の接合手法とその課題

アルミ同士、またはステンレス同士の接合であれば「アーク溶接」「スポット溶接」「ロウ付け」「ねじ留め」など数多くの手法があります。

しかし、アルミとステンレスの異種金属接合となると熱膨張率や電子構造の違いから、従来のアーク溶接では脆弱な接合部が生じやすいです。

さらに、接合部位で腐食や界面反応を引き起こしやすいのが大きな問題点です。

昭和から続く現場ノウハウでは、異種部材の「絶縁スペーサー」利用や、アルミ側・ステンレス側それぞれに物理的な固定法(リベット締結・ボルト締結)を取る例が多く見られます。

このような接合設計の妙は、今も現場で色褪せない「使える知恵」です。

異種材料接合の最新テクノロジー

近年では異種金属の接合技術も著しく進歩しています。

「摩擦攪拌接合(FSW)」「爆着」「爆発クラッド」「拡散接合」などがその代表で、専用設備を導入する大手メーカーも増えています。

摩擦攪拌接合(FSW)は、回転子(ツール)を高圧で押し当て摩擦熱で溶融させることで、機械的に強固な接合を実現するものです。

熱影響が小さいため、材料劣化や歪みが少なく、高強度・高信頼性を求められる部品で実装が進んでいます。

また、接着剤も進化し続けており、エポキシ系・アクリル系の高機能インダストリアル接着剤は、振動や耐環境性に配慮した設計が可能となりました。

もちろん、絶対的な強度や熱サイクル・耐久性を要件とする場合は、依然としてリベットやボルト締結との併用がベストです。

「新旧技術の最適ミックス」が現場に求められる今、バイヤーや設計者には素材と工法の選択眼が問われています。

バイヤー/サプライヤーが知るべき調達・コストダウン戦略

バイヤー視点の重要ポイント

アルミやステンレスはグローバルの価格変動が大きい素材です。

調達戦略としては、材料市況の動向を常に把握し、長期契約や複数ソース化などで安定確保を重視します。

また、加工性・納期・品質・原価のバランスを見極めるために、実際の工場現場でノウハウを持ったサプライヤーの力量を重視しています。

特に異種接合のような「一歩踏み込んだ」技術提案ができるサプライヤーは高く評価され、価格勝負一辺倒の取引から脱却しやすくなります。

つまり、調達担当者(バイヤー)は値段交渉だけでなく、サプライヤー現場力や可変なリスクを見抜く「現場感覚」が不可欠です。

サプライヤーが意識すべき現場目線

サプライヤー側は、バイヤーの要求仕様を「次工程はお客様」という品質観で深く理解し、加工や接合の制約・コスト要素も見える化して正直に伝える必要があります。

書面やオンラインだけのやりとりでは見えない、現場特有の「段取り」や「省人化可能性」「5Sによる余剰コスト低減」など、現地現物へのこだわりが信頼獲得への近道です。

また、最新の接合や素材調達のトレンドを学び続け、自社PRだけでなく顧客課題を共に考える「パートナー型」の意識が求められます。

昭和の人情営業も大切ですが、データドリブンな提案やリスクシミュレーション(例えば「材料高騰時のセカンドソース提案」)が、今後の大手取引では標準になっていきます。

まとめ:アナログ現場力と新技術の融合が未来を拓く

アルミ部品とステンレス部品は、製造現場に根強く求められる基礎技術の結晶です。

昭和から受け継がれたアナログの現場力、最新の自動化・接合技術、DXやAI活用が交錯するなか、ものづくりの進化は終わることがありません。

多様な視点と知識を持ち、現場に寄り添い続けることで、新しい価値を生み出せるはずです。

バイヤー、サプライヤー、現場エンジニアの皆様が、より良い製造業の未来に向けて共に歩む、そのための一助となることを願っています。

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