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物流KPIの可視化で内陸費と保管費のムダを特定する分析手法

目次
物流KPIの可視化で生まれる本当の現場価値
市場環境が劇的に変化し、サプライチェーン全体が再構築を迫られている今、物流部門における「可視化」の重要性は年々高まっています。
特に、内陸費と保管費は、製造業にとって目に見えにくく、かつ気付きにくい「隠れコスト」です。
物流KPIを可視化し、より精緻に分析することで、この2大コストを徹底的に潰すことが、現場力を底上げし企業競争力につながる時代です。
ここでは、筆者が20年以上の製造業現場で蓄積してきた実践知見から、KPI可視化によって内陸費・保管費のムダを特定し、さらに業界のアナログ文化との融合も視野に入れつつ、分析と改善の道筋を解説します。
なぜ物流KPI可視化が今、強く求められているのか
物流コストは、「物が移動すれば当然かかるもの」として、ほとんどの企業で長らく“必要経費”とみなされてきました。
特に昭和から続く製造現場では、内陸費や保管費といった目立たないコストに、メスが入ることは稀だったのです。
しかし、令和の今―
少子高齢化による人手不足、燃料高騰、世界的な資材争奪、ESGへの意識変化など、取り巻く環境はシビアさを増しています。
物流分野は企業の“ブラックボックス”ともされやすく、不透明なままでは経費の垂れ流しとなりかねません。
だからこそ、「KPIで数値化し、可視化する」――これが全ての起点になるのです。
内陸費・保管費が“ブラックボックス化”しやすい理由
内陸費(原材料や製品を工場から倉庫、顧客拠点まで国内輸送する際にかかるコスト)と、
保管費(商品を倉庫でストックするための費用)は、
いずれも「見える化」が進みにくい領域です。
なぜなら、物流現場は工程も作業者も複雑に絡み合い、また発生コストが細分化されているため、全体像の把握が困難なのです。
さらに、属人的な業務慣行や伝票・FAXなどのアナログ手法がいまだ色濃く残る現場も少なくありません。
この「不透明さ」こそが、組織のムダや非効率、事故・ミスの温床となっているのです。
現場目線での物流KPIの本質的な可視化の進め方
可視化=IT化・システム化と単純に捉えがちですが、現場で本当に生きたKPIを設定するには、机上の空論でなく、現場歩きと現物・現場・現実主義(いわゆる“三現主義”)が不可欠です。
KPI設定の基本ステップ
1. 業務プロセスの棚卸し
2. 現場での“見逃されがち”なコストの洗い出し
3. KPI項目の選定と定義
4. データ収集体制の構築(アナログとデジタルのハイブリッド)
5. KPIの定期モニタリングとアクションサイクル
この一連の流れを押さえることが、「実際に効果の上がる」KPI運用の第一歩となります。
内陸費・保管費を“分解”してKPI化する
たとえば、
– 内陸費 → 輸送距離当たり原材料費、積載率、コース別コスト、積替え回数別コスト
– 保管費 → 1坪(または1棚)当たり在庫保有日数、死蔵在庫率、棚卸差異額
このようにコスト構造を細かく「分解」し、KPIとして見える化することが鍵です。
誰でも分かる・すぐ使える物流KPI具体例
筆者が現場で実践し、実際に効果を上げたKPI例をご紹介します。
内陸費編
– 「輸送1回当たりの積載率」(%)
– 「1異動あたりのコスト変動額」(出発拠点×到着拠点別)
– 「緊急輸送比率」(総輸送回数に占める緊急便割合)
– 「標準ルート/イレギュラールートコスト差異」
保管費編
– 「月末在庫額/売上高比率」
– 「指定品目ごとの在庫回転期間」
– 「長期滞留品の保管コスト」
– 「棚卸差異ロス額」
これらのKPIをエクセルや市販BIツールで定期集計、現場・経営層双方にわかるグラフやランキング形式で共有するだけでも、現場意識が大きく変化します。
KPIデータ×アナログ現場の“対話”を大切に
膨大なデータをいち早く集計管理できる時代になりましたが、現場運用の成功には、形式知だけでなく「属人的な暗黙知や勘所」を融合させることが極めて重要です。
たとえば、
・「なぜこの便だけ積載率が著しく低いのか」
・「この品目だけ滞留が多いのは現場の何が要因か」
数字から“なぜ”を掘り下げて、アナログ現場リーダーや作業員とも継続して対話、フィードバックを重ねることが、本質的な解決策につながります。
「なぜなぜ分析」や「現場ヒアリング」を経て初めて、システム画面では見えない“リアルな実態”が把握できるのです。
KPI可視化で判明する内陸費・保管費の代表的なムダ
現場での可視化によって、以下のようなコストムダがよく発見されます。
内陸費の典型的なムダ
・空車回送(積載率低下)
・本来不要な緊急便・スポット便頻発
・複数拠点間での行き過ぎた小口配送
・ルート設計の非最適化
保管費の典型的なムダ
・過剰発注/生産による倉庫逼迫
・回転の悪い“死蔵在庫”の長期占有
・同一スペースでの混載による作業効率低下
・不用意な在庫ゾーン設定によるスペースロス
これらはいずれも、現場KPIで“見える化”しなければ「なんとなく発生」し「誰も責任を持たない」ままスルーされるリスクの高いムダです。
業界のアナログ文化も味方につけるラテラルな可視化戦略
多くの製造業現場では、IT導入を一足飛びに進めるのは現実的ではありません。
レガシーな書類・伝票・FAX運用が紛れもなく全体業務を支えている現場が今なお多数存在します。
この「昭和」的アナログ現場こそ、あなどってはいけません。
シンプルな伝票受領・現場ヒアリング記録・ホワイトボード書き出しなど、現場の“肌感覚情報”とデータKPIを統合することで、かえって改善サイクルが強固なものになることも少なくありません。
「数字をオフィスで一人眺める」のではなく、現場・管理職・役員まで巻き込んだ「KPIの見える化会議」や「現場ウォーク」など、昭和アナログ文化と新しいデータ分析の“掛け算”が、中堅製造業の大きな成長原動力になります。
バイヤー・サプライヤーそれぞれのKPI視点を持つことの重要性
自社内のムダを潰すだけでなく、周辺サプライヤー・物流パートナーまで巻き込んだ「協働KPI」を設定することで、はじめて“サプライチェーンの本質改善”が可能となります。
バイヤー(調達担当者)は、自社だけでなく「サプライヤーはなぜこのKPIに反応しやすいか」「自社にとって最適な取引条件や納入リードタイムは何か」という視点が必要です。
一方、サプライヤー側も「バイヤーが見ている・重視するKPIは何か」「自社提案がどのように全体最適に貢献するか」を知ることで、単なる価格交渉から“共創パートナー”への飛躍が実現します。
KPIの「見える化」は、対立でなくWin-Win関係構築の共通言語になるのです。
まとめ:物流KPI可視化は現場力×全体最適の両面で進める
まとめると、内陸費・保管費の可視化は、目に見える数字だけで判断してはいけません。
現場の肌感覚、アナログ文化、数字から見つかる事実、そのすべてを横断的・ラテラルに分析し、最適なKPI運用と改善サイクルを回すことで、はじめて本質的なムダ削減=企業競争力の強化につながります。
昭和文化も令和のデジタルも、どちらも遠ざけることなく、「これからの現場」に活かすヒントをKPIからどれだけ生み出せるか。
これこそが、変革期の製造業現場に問われる本質です。
内陸費・保管費のムダ発見と改善に、ぜひ今日からKPI可視化を“自分事”として初めてみてください。
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